だいぶ前に、確か王様のブランチのLiLiCoさんが紹介していた作品で、ずっと気になっていた映画だ。
今日、映画を観たいと思い立って、定額制の映像サービスで、作品を何気なく探していたところ、出てきたのだった。
あー、これ、観たかったやつ!
早速観た。1時間30分程の短い作品。
「面白かった」と単純に言い放ってしまえば、不謹慎にも感じる内容だった。
私と同年代の人で、こういうジャンルの作品の感想を分かち合える人はまず居ない。残念なことに。
そもそも、私の周囲にホラー映画好きの年配者がいない。
随分前置きが長くなった。
ジャンルは、「ホラー/コメディー」。別の紹介では、スプラッターコメディーとなっていた。
確かに、こちらの紹介のほうが、“観る心構え”を促すことが出来るというものだ。
題名を明かしましょう。
2012年日本公開の
「タッカーとデイル」
副題に、“史上最悪にツイてないヤツら”とある。
ストーリーは、
タッカーとデイルは友人で、親友と言える間柄。
彼らは、ブルーカラーの肉体労働者。見かけは、どちらかと言うと冴えない。身なりもあまり良く無いし、乗っている自動車も、古そうな作業用トラックである。裕福で無いのは明らかだ。
二人は、タッカーが手に入れた、念願の別荘へ休暇を過ごしにやって来た。
森と湖に囲まれてはいるが、別荘とは名ばかりの、ほぼ廃屋である。
同じ頃、たまたまやって来た大学生の男女グループと遭遇する。
その夜、湖で溺れかけた女子大生を助けた事から、誤解が誤解を呼び、タッカーとデイルは殺人鬼と誤解されてしまう。
そこから、悲惨な出来事が次々に起こってしまうのだ。もっとも、事の発端は、慎重さに欠ける大学生の行動によるものだが。
“史上最悪にツイてないヤツら”とは、タッカーとデイル以上に、本来は死亡した大学生達の事だろう。
確かにコメディータッチで笑えるのだが、不注意から大学生達が、次々に悲惨な死を遂げるので、ここは、笑えない。
死に方があまりにリアルで残酷。
R15の作品である。
観賞中、何度か「ぁあっ!」とか「いやぁぁぁ!」と思わず声を出しながら、両手で口を覆ってしまった。
あまりにも安易に命が亡くなりすぎる。ホラー百戦錬磨(言い過ぎ…)の私だが、こんなタイプのホラーは初めてだ。
ストーリーはコメディーとホラー要素の他に、友情物語でもある。
女性にオクテのデイルに対し、常にタッカーが自信を持つ様励ます。二人の絆も垣間見える。普通に良い人達なのだ。
デイルの容貌は頭もヒゲもボウボウで肥満体、とあまりモテそうにないのだが、助けてあげた女子大生が、デイルの人間性や才能を肯定する、良い感じのシーンもある。
だんだんデイルがキュートに見えてくる。
全体的にスプラッター部分を除けば、大変エンターテイメントとしては、良質だ。
人を見かけで判断してはいけないといった、メッセージも込められており、普遍的テーマを持つ良い映画作品なのである。
ただ、程々に表現しておけば問題のない事故死の場面が、あまりにリアルでグロテスクな事で、万人受けしそうにない作品になってしまった。
しかし、これだけ様々な要素をストーリーに詰め込んでなお、バランス良くまとまっているのは、監督イーライ・クレイグの手腕だろう。
語弊を招きそうだが、私にとっては、楽しい作品であった。
ただ、誰にでもお勧め出来る作品でないのが、残念だ。