久々に何か映画でも観ようかと、Amazonプライムで作品を選んでいると、「漁港の肉子ちゃん」が目に止まった。
原作は直木賞作家西加奈子さんのベストセラー小説。テレビ番組アメトーークの読書芸人回でピースの又吉さんが紹介したことで大きな反響を呼んだという。この物語に惚れ込み企画プロデュースしたのが明石家さんまさん。
このアニメ作品は主人公肉子ちゃんの声をさんまさんの前妻、大竹しのぶさん、娘役のキクコをキムタクの娘Cocomiさんが演じると、ワイドショーで大きく取り上げられ、公開前から随分と大きな話題となっていた。
ここまで大きく取り上げられたのに、興行的にはあまり成功しなかった作品らしい。
私はアニメ作品全般好きな方だが、この作品に関しては、観に行こうとは思わなかった。
その理由は、あらすじを見た時に、主人公の肉子ちゃんが惚れっぽく、男に騙されては町から町へと娘キクコを連れて引っ越す人物だと知ったからだった。
子供がいるのに男にだらし無い人物として、嫌なイメージが湧いた。それで観る気が失せたのだった。
私と似たような感情を持った人も、一定数いたのじゃないだろうかと思う。
そんな負のイメージを観る前から持ってしまった私だが、このままじゃ食わず嫌いじゃないか。実際にはどんな作品なのか、あえて観てみることにしたのだった。
ストーリーは、肉子ちゃん親子がやって来た港町で、人々と関わりながら過ごす日々の出来事が描かれている。
超個性的で、その名の通りふくよかな肉子ちゃんが漫画チックに描かれる一方で、娘のキクコの方はリアルな小学生の日々が描かれている。
小学校の高学年の女の子によくある女子同士の揉め事や、友達関係の問題、新たな出会い等など…観ながら自分の同じ年頃にも似たような出来事があったなあと、懐かしく思い出した。
クライマックスは、肉子とキクリン(キクコ)の隠された秘密が明らかになり、泣き笑いの感動でエンディングとなる。
吉本の映画らしくコテコテした笑いもあり、素直に楽しく良い作品だった。
私が抱いた負のイメージは完全に払拭され、むしろ子供たちに見てもらいたい作品だとも思えた。
この作品で私が特に注目したのは、人気声優花江夏樹さんが演じた二宮君だ。
キクリンと同じ小学校の同学年と思われる男子なのだが、物静かで、垂れ下がった前髪でほとんど顔が見えない暗い印象の子だ。
この少年が時折見せる「変顔」がキクリンの興味を誘い、後々親しくなるのだが、この「変顔」は恐らくチック症のようだ。
私の知る限り、チック症を作品に取り入れたアニメ作品は他に無いのではないだろうか。
チック症といって思い浮かぶのは、子供が必要以上に繰り返す瞬きや、体の動きと認識していたのだが、最近になって、メディアで「チック症」に対する理解を呼びかける番組を見かけるようになった。
チック症は自分の意志とは関係なく突発的な言動が出るようで、症状が重いと突然机を叩いたり、叫んだり暴言や汚い言葉を言ってしまう事もあるそうだ。
その突発的行為を除けば、何ら普通の人と変わらないのだが、日常の中で、その突発的言動が周囲の人を驚かせたり、不安にさせてしまい、理解されずに苦しんでいるという。
チック症の症状を知っているのと知らないのとでは、対象の方への気持ちや対応に大きな差が出ると思う。チック症への理解は、まずその症状を知ることから始まるのではないだろうか。
漁港の肉子ちゃんの中ではこの「チック症」が二宮君の個性としてさり気なく描かれており、キクリンも普通に受け入れ友情が育まれていくといったストーリー展開だった。
映画の中では「チック症」という言葉は一言も出て来ないけれど、このアニメーションを通して多くの人が知り、理解を深めることになれば良いなあと思った。
結果的に良い映画だったので、観る前から悪い印象を持ってしまい反省した。
原作を読んでいないので、ちょっと興味を持って原作の本を検索したら、出てきた表紙が
これだった。
う~ん、これは…。アニメは子供にも勧めたくなる作品だけに、複雑な気持ちになった。
う~ん、これは…。アニメは子供にも勧めたくなる作品だけに、複雑な気持ちになった。