湖から駐車場までの階段を上る。たった200メートルなのに少々しんどい。
♫行きはよいよい帰りは怖い♬
のメロディーが頭に浮かぶ。
下りてくる時は楽だったのに、上りは辛い。しんどいことを北海道弁では「こわい」というのだ。歌の意味とは違うけど。
階段を上りきって「あ~こわい」とつぶやく。
駐車場から少し離れた所に「野鳥の森」がある。出発する前に、ちょっと寄った。
谷状になった場所へ下りていくのだが、そちらの方は、ほぼ人影もない。
クマでも出てきたら嫌だなと思い、ゆっくりと手を打ち鳴らしながら歩く。
人がいないと思っていたら、途中戻って来た男性と出くわした。拍手しながら歩く私を怪訝そうに一瞥してすれ違い、少々恥ずかしかった。
一番下まで下りると、野鳥の声が一際よく響く。
カラ類の声がして、シジュウカラを1羽見つけた。その直後、「ピュー」なのか「キュー」なのか、言葉で形容し難い声が大きく響いた。
一瞬クマゲラかな?と思って近くの木の上に顔を上げかけた時、200メートル位前方の笹藪がガサガサガサと大きく揺れた。大型の動物が右から左へ移動したようだ。
あの声は、鳥にしては大きすぎる鳴き声だった。もしかしたら、現在繁殖期のエゾシカの声だったのかも知れない。
笹藪を移動した動物は何だったのだろう。シカが移動したのなら、飛び跳ねるので頭ぐらい見えても良さそうなものだが、全く見えなかった。まさかクマだったりして。姿なき野生動物にスリルを感じた体験だった。
支笏湖を離れ、車で「支笏湖公園線」に乗り、目ぼしいお店を探す。こんな時はお店の外観を見てフィーリングでチョイス。
看板に惹かれ、木立の中に佇む隠れ家的なイタリアンレストランを見つけたが、時刻が午後1時半を回っていたためクローズ。残念。
再び車に乗り、ほんの少し先へ進むと電光掲示板が目立つ「カフェアンドギャラリー紡ぎ」というお店を発見。500円ランチという電光の文字に惹かれて決めた。
お店に入ると、奥にダイハツミゼットがあって度肝を抜かれた。こういう驚きは大歓迎。楽しい。
直ぐに写真を取って、旧車好きの息子にラインで送る。
注文をした後、最初に出てきたのはアイスクリームだった。これはサービスみたい。
一口食べてしまってから慌てて撮影。
濃厚でミルクの風味が高い、美味しいアイスクリームだった。
海藻が入ったヘルシーなサラダが付いてくる。
夫は「ボロネーゼ」。
私はお店オリジナルの「紡ぎバーガー」。サラダ付き980円でこのボリューム。ポテトの量もすごい。美味しいハンバーガーだった。
ちなみに、オーダーはしなかったけど、この日の500円ランチは「キムチ鶏丼」だった。
食事にコーヒーは付いていなかったが、食後は200円での提供。コーヒーカップは好きな容器を選ぶシステム。いろんな大きさや形があり、選ぶのに迷った。
結局、たっぷり飲みたかったので、でっかいカップをチョイス。一番大きかったんじゃないだろうか。飲みごたえがあった。
夫も思惑は同じ。大きめで渋めのカップ。
コーヒー豆は初めて耳にする「ジンノコーヒー」。千歳のコーヒーかと思ったら、札幌市北区にあるコーヒーだとか。
深煎りのヨーロピアンタイプで私好みの味だった。
胃袋も心も満たされて店を後にした。
帰路は、こんな木立の中をずーっと走る。北海道に住んでいて本当に良かったなあと感じる。日が少し傾き始めると、紅葉もよりしっとりと色を増す。いい感じ。
途中のポロピナイ展望台から名残りの支笏湖を写す。
頂きの雲が晴れた樽前山。
前日からテレビで、札幌の中心街でも雪虫の発生がすごいと聞いていたが、自然の多いこの辺りでも雪虫の仲間のアブラムシが一部霧状に煙っている。景色がかすむほどだ。見たことがないようなおびただしい数の虫。車の中で良かったと心底ホッとする。
何度か霧状の大群を車で突き抜け、「ひゃ~」と思わず二人で声を上げた。雨の如くビチビチとフロントガラスに当たるかすかな音を聞きながら…。
帰宅後、大量の虫で汚れた車体を早速拭き取りにかかった夫。アブラムシの名の通り、油分が多く拭き取りは大変だった様子。
今年の異常な暑さの産物みたいだけれど、虫の大発生はまだ数日続くみたいだ。
自然を満喫して楽しんだ後、これまた自然のアブラムシに困惑。まあ、しょうが無い。これが自然なのだから。
帰宅後、ちょっと外へ出かけて戻ったら、今度は雪虫がひどくて、上着やズボンに何十匹も付着した。雪虫対策に傘をさす人もいたくらいだ。
玄関の外で上着やズボンの雪虫を振り払って家に入った。
やれやれと手を洗いに洗面台に立ったら、自分のおでこや目の周りに10匹ほどの雪虫が張り付いているのが見えた。思わず「いや~ん」と変な声が出た。