そんな旅の一日も、もはや日が暮れる。
今日の宿泊先は私がネットで何気なく検索して決めたホテルアポイ山荘。フィーリングで決めた宿だったのだが、平成(当時)の天皇皇后両陛下も宿泊したという由緒あるお宿だった。
平成18年9月8日の日付が確認できる。
写真の左端後方に、当時の北海道知事の高橋はるみ知事が小さく写り込んでいる。
写真の左端後方に、当時の北海道知事の高橋はるみ知事が小さく写り込んでいる。
フロントで手続きをして、夕食券と朝食券と部屋の鍵を受け取り階段を上り2階へ。
アポイ山荘はその名からアポイ岳や周辺の山を登山する人の利用が多いのだろう。健脚の登山者が多く訪れるからなのか、エレベーターなどの類は無い。
2階突き当りに非常口があり、そのすぐ右手の部屋218号室が今夜の宿泊部屋。
部屋へ入り大きな窓を眺めると、見える景色は山側だった。
夫の号令でみんなの貴重品を金庫に収め、さてお茶でも飲もうかとポットの隣を見ると、用意されていたのはお茶ではなくコーヒーだった。インスタントコーヒーではあったけれど、これはちょっと嬉しかった。
宿泊先の部屋にコーヒーがあったのは初めての事だ。最近の傾向なのか、あるいは登山者はお茶よりコーヒーを好むのだろうか。
山荘という名が冠してあるように、私がこれまで泊まってきた宿泊施設とは少し異なる点が新鮮だった。
館内は2019年5月1日から全面禁煙となっている。加熱式タバコも駄目。我が家にタバコを吸う人は居ないので問題は無かった。
部屋にはあらかじめ敷かれた状態の布団が二つ折りに畳んであり、パタンと開けばいつでも寝ることができる状態になっていた。山登りに疲労した登山者がいつでも横たわれる様に配慮されたものだろう。
部屋着も浴衣では無く、伸縮性の良いパジャマタイプのものに、上着として紺色の羽織が用意されていた。洋と和の組み合わせがちょっと面白い。
コーヒーを飲んでくつろいでいると、大きな部屋の窓から見えるアポイ岳の山裾に、夕日がさしてオレンジ色に染まった。息子が「きれいだ」と言いながら、写真に収めていた。
夕食は6時半にレストラン「星の彩」で。
お品書き
柳葉魚…シシャモの味醂干し。右のツブ貝の煮付けはお品書きにはないサービスメニュー。
山海すき焼き。
今朝採取してきたというギョウジャニンニクの天ぷら。ギョウジャニンニクは別名アイヌネギと言われ、その名の通りにんにく並みに匂いのきつい結構癖のある山菜なのだが、新鮮だからだろうか実に上品な味わいで美味しかった。これもサービスメニュー。
出てきた蟹はお品書きには「津合蟹」とある。「ツゴウガニ?知らないカニだなあ」などと思っていたら、これでズワイガニと読むのだと初めて知った。カニの見た目で気付けよ!と心の中で自分にツッコミを入れる。
カニの関節を折り、そーっと引き出すと、テレビでよく見る食べやすい形で殻の形通りの身が出て来る。息子が成功し、「おーっ!」とわく。私もと思いやってみるが、なかなか上手くいかなかった。
時雨昆布でご飯が進む。
デザートはチョコタルトとシャーベット。
食事はさり気なくサービスメニューが供されたりと、美味しいやら嬉しいやらありがたいやら、盛りだくさんで楽しかった。
食事の後浴場へ。
浴槽は、低温でバブルバスの浴槽と高温で一部がジェットバスになっている浴槽の2種類があった。柔らかい泡と強い水流でコリをほぐし疲労を取り除いてくれそうだ。
天然温泉ではないが、長万部(おしゃまんべ)二股ラジウム温泉の湯の華が入っているということで、疲労回復にも効果がありそうだ。
今日一日で階段はトータル268段ほど上り、下りも入れると倍の536段。足腰の疲れに良かれと2つの浴槽を行き来し、バブルとジェット水流を足と腰に当てまくった。そのかいあってか、翌日は筋肉痛は一切無く、疲れもよく取れた。
サウナもあり、セルフロウリュが出来るようになっている。
ただ唯一残念だったのが、露天風呂が冬期間の点検の為使えなかった事だ。
それと、「大浴場から太平洋が見える」というふれこみだったが、女湯からは海は見えなかった。
男湯と女湯の入れ替えは無いようだから、海が見えるのは男湯からだけみたい。それでも私は気にならなかった。
日頃お目にかかれない泡風呂が気持ちよかったし、海の景色はここに来るまでずっと見てきたので、そもそも浴場からの景色にこだわっていなかった。それに一階のロビーのソファーに腰掛ければ、いつだって太平洋は見えるのだし。
シーズンオフは景色も含め残念なことが多い。特にアポイ岳は多彩な高山植物で有名なようだから、それも見られない時期で残念ではあった。
でも、登山客も観光客もそんなに居ない状況は、静かでのんびりと過ごせて、それはそれで良かった。
翌朝もお風呂に入ったが、完全に私一人の貸し切り状態になった。これもシーズンオフの良さといえば良さだ。
残念なこともあれば、そうでないこともあり、「人間万事塞翁が馬」といったところだろうか。
続く