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ポジティブな私 ポジ人

襟裳岬まで11 旅の終わり フンベの滝

最終目的地だった襟裳岬を出発し、広尾方面へ向かう。これからは帰り道だが、途中に「フンベの滝」があると息子が教えてくれた。どんな滝なのかワクワクした。

襟裳岬まで下って来たV字型の地形を、今度は道東方面へ登る。
国道336号線のえりも町庶野(ショヤ)地区から広尾町までを結ぶ約33.529キロメートルの道路を「黄金道路」という。名前の由来は、海岸の難工事のため、黄金を敷き詰められる程の莫大な建設費用がかかったからだと息子が説明してくれた。

黄金道路にはトンネルや覆道が多い。
その中でも北海道で一番長いトンネル、「えりも黄金トンネル」に入った。長さは5キロに迫る、4,941メートル。長い長ーいトンネルだった。
このトンネルの中で万一事故ったら…と内心ハラハラした。歳を取ると、過去にあった別のトンネル事故の記憶が浮かび、ついつい余計な心配をする。

その後も多くのトンネルや覆道を抜け、やがて「フンベの滝」に到着した。国道沿いにあり、滝の前に車の駐車帯があるので、車を停めてゆっくり眺めることができる。
私にとってこの滝は、旅の最後の“萌スポット”になった。


フンベの名から、アイヌ女性のトリオで音楽活動をしているフンペシスターズを思い出した。調べてみるとフンペもフンベも共に「クジラ」という意味があるらしい。
確かに滝の流れる所の全体像を見ると、クジラっぽい形だと思ったけれど、名前の由来は違うところにあった。
昔このあたりににクジラが打ちつけられたことから「鯨の獲れる浜」として名付けられたそうだ。この滝がある住所がそもそも「広尾町フンベ地区」である。

この滝が特徴的なのは、普通の滝と違い川から流れ落ちているわけではなく、地下水がしみ出して流れているという点だ。


滝は幾筋にも流れ落ち、水量の多い部分には水草だろうか、青々と茂っている。緑の少ないこの時期に、陽光を受けた葉の水滴がきらめいていて美しかった。

海側にはカモメが飛翔し、黒っぽい海鳥が波間にのんびりと漂っていた。ドライブ日和の良い眺めだ。

走り出して海岸線から外れ、広尾町の内陸部を走り始めて間もなくのことだった。

走行中、道路の右側から若いエゾシカが出てきた。
鹿との遭遇を多く体験している息子が真っ先に気付き停車した。鹿は私達の目の前を悠々と横断して行った。息子はすぐには出発しなかった。
「こういう時は1頭だけじゃないからね」
息子の言葉を聞いて、若い鹿が行った方向を見ると、道路下の灌木の中に6頭程の群れがいた。「ホントだ!」私は思わず声を上げた。
私達の目の前を通ったのは、どうやら最後の1頭だったらしい。
何れにしても、衝突しなくて良かった。

日高山脈はまだ雪に覆われている。


帰路の道のりはまだまだ遠い。


大樹町の道の駅コスモール大樹や忠類村の道の駅にトイレタイムを兼ねて立ち寄りながら、中継地点の苫小牧へ向かった。

翌日は息子も私も出勤日だ。息子は私に旅の疲れを癒やす時間が多く取れるよう気遣って、先を急いで運転してくれた。
フンベの滝からは長ーいドライブをしているような感覚になっていた。

苫小牧へ到着し、息子の部屋で一服したい気分だったのだが、せっかちな夫が直ぐに札幌へ向け出発するというので、息子に慌ただしく別れを告げた。

苫小牧から札幌方面へ向かう。

千歳に入る頃、まだ明るいのに月が出ていた。フロントガラスに顔を近づけるように上空の月を眺めてから、シートに背中をつけて座った時、バックミラーに背後の夕日が写っているのに気付いた。
道路が丁度真東の方向だったのだろう。東方面を向きながら月と太陽を同時に見る面白さ。夫にもこの滅多にない偶然の光景の面白さを伝えたが、運転中のせいか、さしたる反応は無く、私一人で興奮していた。

高速道路に入り、オレンジ色の夕日が今度は左手に見え隠れし始めた。その色のあまりの美しさに車の中から何度かシャッターを切った。夕日など最近ほとんど見たことがなかったから、車窓からずーっと眺めた。
大きな夕日だったのになあ。写真だとちっちゃい。


高速でも鹿が出てこないかヒヤヒヤしていたが、杞憂に終わった。

息子の「おもてなし旅行」をふり返って、最大のおもてなしは、様々な事に何でも息子が付き合ってくれたことだった。ビーチコーミング、星空観察等など、お陰でとても思い出深い楽しい旅となった。

翌日、息子からラインが入った。
「充実した週末すぎて、今朝は久々に仕事に行きたくなかったわ」
ああ、私も全く同感だった。

しかし、こうしてブログを書き始めた時点から、旅の記憶をなぞることとなり、“一粒で2度美味しい”じゃないけれど、再び今回の旅の楽しさを最初から更にディープに味わうことになった。それはまた楽しい作業であり、記憶の中で旅の楽しさはさらに倍増したのだった。旅の思い出は時間の経過と共に更に輝きを増していく。

長く拙い文章の「旅の思い出」に、これまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

終わり


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