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ポジティブな私 ポジ人

K君に背中を押されて

今日、今年初のジョギングをした。

豊平川の河川敷は冬の間雪捨て場となっている。まだ雪が溶け切ってなかったので、ジョギングコースは封鎖されていた。昨年もそうだった。

それでも、ほんの少し短いコースがあったので、端から端まで走っては折返し、いつも通り25分ほど走った。
今年も走り切れた事にホッとする。まだまだ行ける。自分の体調を知る上でも、このジョギングが年々重要に感じられる。

まだ気温は低い。ジャージの袖の中に両手を引っ込め、若い子の言う“萌え袖”で走り始めたが、終わる頃には快い汗がジンワリとにじむ程に体温が上昇した。

風を感じながら、のんびり走る。
ジョギングする理想的な速度は、二人で走りながらずっと会話出来るくらいがちょうど良いと何かに書いてあった。そんな速度だから、走り続けられるのだ。

「ケキョケキョ」とあまり喉の調子のよくなさそうなウグイスの声。本鳴きにむけて練習中の様子。
ヒバリの声も空の上から聞こえる。走りながら見上げたが、姿を認める事は出来なかった。
河岸の木々はまだ裸のまま。寒々しい風景だ。

走り始める時は、軽く5分ほどストレッチをし、どこかのお笑い芸人の様に「そろりそろり」と走り始める。何処か痛いと感じたら、歩く。
体を鍛えると、強くなるよりも壊れてしまう確率のほうが高くなりつつある年齢となってしまった。
今年でジョギングを始めてから3年目に入った。

ジョギングを始める事が出来たのは、高校時代のクラスメートK君のお陰だ。
それまでは、毎年、年が明けるたび「今年こそは走ろう」と思いながら、スタート出来ずに、何十年も経ってしまっていた。

きっかけは2年前、2019年1月開催のクラス会。札幌の豊平館で行われた。

豊平館は現存する木造のホテルでは日本最古の建物だそうだ。
明治、大正、昭和と3代にわたり天皇家が訪れた由緒ある建造物。1964年に国の重要文化財に指定された美しい建物で、私は長い間憧れ続けていた。

その建物でのクラス会とあって、クラスメートと会う前から、ワクワクしていた。
まだ雪深い1月の札幌。木造の建物の独特の寒さ。子供の時に体感した感覚と重なり、妙に懐かしく感じられる。

憧れの豊平館。
赤い絨毯張りの螺旋階段。ゴージャスなシャンデリアに優美で重厚なカーテン。過去の高貴な人々が集った場に、一般庶民の自分が今ここに居るという特別な感覚。

久しぶりに集まった面々が、それぞれの近況報告をした。
大病を患って回復した人、初孫が産まれ笑顔満面の人等など、それぞれに悲喜こもごも、色々な事があった。

K君の番になった時、K君の精悍な姿に先ず驚いた。
K君は昔からクラスの中でも長身で成績もよく、いわゆるモテるタイプの男子だった。
クラスの中には背の高い仲の良い男子5人組がいた。K君はその中の一人で、5人全員が星座がおとめ座だった事から、彼らは冗談で「おとめ座ファイブ」と名乗っていた。

クラスメートは落ちこぼれの私とは違い皆優秀で、ほとんど教師か公務員、大企業に就職していた。年齢的には、リタイアした人もチラホラいた。

K君の近況報告が始まった。
K君は裁判所の職員だったが、今回司法試験に合格し判事になったという事だった。
「これで、70(歳)まで働ける」と爽やかに笑った。
凄い心意気だなと思った。

皆トイレに立ったり、席を代わったり移動する中でK君とすれ違った。
その時に、判事になったことを聞き感動した事を伝え、精悍になった秘密を知ろうと「何かスポーツやってるの?」と尋ねた。簡素に「走ってる」と一言。

司法試験は簡単に突破出来るようなものでは無い。それを努力によって成し遂げた。そして走り続けているK君。
私は尊敬の念を強く抱いた。それ以来、私の座右の銘は「K君」になった。

そして、クラス会が終わった3ヶ月後の4月。何十年も前から走ろうと思い続けながら踏み出せなかった一歩を、遂に踏み出す事が出来た。K君のお陰だ。

週一回土日のどちらかの日を走る日と決めている。退職したら、週2回走ろう。

3年目の今年も4月から11月まで。雪が降るまでの8ヶ月間。北海道はジョギング出来る期間が短い。

これからは緑の息吹を感じながら…。やがて盛夏、せっせと働く蟻を踏まぬよう…。珍しい野鳥の声を聞きながら、そして秋、カラスが落とした胡桃の殻を避けながら…。
今年も折々の季節を感じながら、事故の無いように走りきろうと思う。


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