治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

療育マネー

2012-01-24 09:41:00 | 日記
こんな記事見つけました。

話題になりつつあるDSM5の自閉症診断ね。
ぐーっと狭まるので
サービスを受けられない人が増えるだろうと。

そりゃ予測できた揺り戻しでしょ。

だからこそさあ

そういう時代の波に翻弄される幅を少なくするため「修行」が大事なわけで。

ともかくこの記事のサム君。
生後26ヶ月でPDD―NOSの診断がついた。

そこですぐに早期介入サービスを受け(これは公的な療育ね)

保険会社が作業療法をカバーしてくれて感覚調整障害及び微細粗大運動障害を解決。
あと、コミュニケーションに関する療育と薬も保険でカバーできた。

これはみんなが一律に保険に入っているこの国ではわかりにくいかもしれないけど
格差社会のいい面ね。
いい保険に入っていれば、色々なサービスをカバーしてくれるということ。

そして学校では加配がつく。
その費用年間3万ドルに達することも。
アメリカの面白いところって、保護者にこういう金額ちゃんと明らかにするのよね。
「こんだけかかってんだぞ」と。
まあ恩着せがましいけど、不満は減りそう。
成人に対しても「あなたがたのためにこれから何千ドルかかります」みたいなことをちゃんと通知するみたい。
直接本人に渡る年金だけが福祉予算じゃないからね。
年金の少なさを嘆いているだけより、自殺する人は減りそうね。

まあ日本でそういうことやったらまた顰蹙の嵐なんだろうけどさ
羨ましがる前に、そういうことも知っておいたほうがいいと思うの。

でも親御さんも自腹切ってます。
ニューロフィードバック、乗馬セラピー、リスニングセラピー、そのほか諸々。

お母さんはこれを「cost-sharing arrangement」って呼んでる。
公的、民間の保険、親の自腹。
方々が療育マネーを出し合って
こうやってサム君の修行を支えてきたのね。

現在13歳のサム君は目線が合わなかったり手をパタパタしたり
ひと目で自閉症とわかる男の子だけど
学業は普通にできている。最近はフランス語を習いはじめて98点と100点だった。

でもね
新しいDSMで自閉症の基準を満たさない人が増えれば
公的サービス及び民間保険の両方で零れ落ちる人が増える。
そうしたら結局は納税者が増えず、高くつくんじゃないかというのがお母さんの主張。

それはもっともだと思うと同時に、わが国のあり方を振り返って見ると

「支援」の名の下ニート製造になっちゃってたり、そうじゃないところを目指そうとしている人がいたりすると足引っ張ったり、まあそれ以前の問題だわね。
余分の予算をかけて、将来福祉で抱える人材を増産中。親もそれを望んでいる。
こういう人ばっかりじゃないけど
こういう人も多いのが現状。

あ、それと

リンク先の「Is it time to abandon the DSM?」っていう記事も面白いよ。

要するにアメリカの医療システムの中で、薬屋さん、保険屋さんが便利なように作られた基準なのだから
別に日本で個々に修行している人が萌えることないんだよね、DSM。

いや、プロはもちろん勉強必要なんだろうけどさ。

今回の改変だって
増えすぎた福祉教育予算削減が目的なんでしょ? 違うの?

だから過度に当てにすることないんじゃないの?

修行の目安になる特性をつかむにはむしろこっちが役に立つよ。