今回泊まったホテルのある萬華駅から北へ10分程進むと有名な”龍山寺”がある。
7分程度歩けば龍山寺駅で台鉄の萬華ならば傘も必要ない距離と言った立地にあるこのホテル、
西門に向かって10分程歩けば、24H営業のカルフールなんかもあるので、
歩くことが好きであれば、食べることも買う事も楽しめる場所だ。
しかしながらこの辺りは治安的にはあまりよろしくない場所だと、台湾に駐在していた友人から言われた。
「くれぐれも、夜間はあまり出歩かない方が良い」と念を押されたが、
付近は老舗もこ洒落たカフェもあり、公園では老人たちが楽しそうに話をしていたりと、いたって平和な場所に見える。
ここがまさか台湾マフィアの本拠地と言うのも、にわかに信じがたいのであるが、
現地で長く暮らした日本人がそう忠告してくれるのだから、素直に従うべきだろう・・・
だが。。滞在初日のこと、夕飯があまりにも早かった為、20時をちょいと回ったところで小腹が空いてきた。
宵の口ならば大丈夫だろうと、小銭を握りしめてチャーハンを買いに龍山寺方向に歩く。
萬華駅の構内を抜けて市場のようなところに入ると、確かに不思議な雰囲気だ。
夜は龍山寺前の公園には1人で近寄るなと言われていたので、遠巻きに大通りを歩いていると。。。。
娼婦と思わしき女性がちらほら立っているのが見えた。
悪い癖だ、仕事柄真実を知りたい病を持っている私は、彼女たちのことを少しでも知りたくなった。
台湾語(中国語)が堪能じゃないから、インタビューするわけにはいかないが、せめて風貌だけでも良いから確認したい。
じりじりとほんの少しずつ、彼女たちが立つ公園の方向へ歩みを進めると・・・・・
ミニスカートに露出の高いトップス、あら結構若い子なんだぁ・・・と思う。
足に目をやると、肌にはまったく張りがなく枯れ枝の様、顔を見ると私の母親の年代にも見えた。
なんだか、とっても切なくなったので、その場を離れて外売の炒飯屋さんへ急ぐ。
狭い厨房には3人ほどの人が忙しく料理を作っていた。
こ汚い店ではあるがレストランではなく外売を主にしている店は注文用紙に記入すれば食べたい物が食べられるから便利だ。
店の人に注文用紙を渡すと、ニッコリして「ここで待ってて」という身振りをしてくれた。
「トーチェー」と咄嗟に出たが、台湾では「ドーシャー」だったことに言ってから気づく。
香港の行き来が多い私は、どうしても咄嗟に出る中国語は広東語になる。
いやもっと正確に言えば、少ない中国語のボギャブラリーから瞬時にカードを出すとなると、そうなるのだ。
10分ほど待って、ホカホカ出来たての炒飯が入った袋をブラブラとさせながら元来た道を歩く。
街には犬の糞が沢山落ちていたので、叱られた子供みたいに下を向いてトボトボ歩いた。
アスファルトから時折、街中に目をやると、行きよりも30分は多く時が経っているからなのか、この街はひどく怖いところの様に思えてきた。
向こうにほんのりした灯りが見えた、萬華の駅の灯りだ。
この駅は改札口の外がドームになっていてベンチが置いてある。
セブンイレブンもあり、昼間には人々が列車を待ちながら食べたり飲んだりしている場所だ。
ドームに入ると年配の男女が一組手をつなぎながら若い男女の様にイチャイチャしていた。
嫌でもその横を通らなくてはホテルには戻れない。
セブンイレブンに目をやると、まだ昼間働いていた若いお兄さんが働いているのが見えた。
なんだかホッとして気が大きくなり、この男女の顔を見たいと思う。
女性は無表情で一点を見つめていたが男性の方は鼻の下が床につくほどニヤケながら何か彼女を説得しているようにも見えた。
部屋に戻ってテレビを観ながら炒飯を食べた。パラパラと言うよりもボソボソとした炒飯をお茶で流し込み早めに眠る。
浅黒い皺皺の肌にショッキングピンクのチューブトップ、少し汚れた白いショート丈のパンツの年配の女性とニヤケた男性の姿はその翌日の夕方も同じ場所で、同じような事を繰り返していた。
萬華駅では、今夜もまた似たような光景が見られるのだろうか。