部屋の片隅、雑多に積み重ねられた書類や雑誌、細々とした紙切れ類。
そのなかから、思い出したように一通の封書を取り出す。
6月中頃には届いていたっけ。
自治体から送付されていた、新型コロナウイルスの予防接種 予約の案内だ。
開封して内容は確認していた。
すぐに予約しておけば、7月中旬には第一回目の接種を済ませ、
今月上旬には、2回目の接種も終わっていたとこだろう。
極度の面倒くさがりな性格が幸いして、
こういう命に関わる重要なことすら放置してしまっていた。
オリンピックのさなか、感染者数が激増。
自分の住んでいる福岡も、過去三度の緊急事態宣言の時より はるかに多い感染者数。
コロナウイルスの亜種なのか?
はたまたまったく新たなウイルスなのか?
デルタ株とかいう、わけのわからないものまで登場。
ここ数ヶ月部屋のテレビが映らない。
新聞はアル中親父が独占。
ネットニュースの見出しのみが社会を知る手立て。
「コロナ禍で勢力を伸ばすデルタ株」なんて見出しをみても、
世界規模のパンデミックのさなか、株価を上昇しているどこかの企業の株式かな?
つい最近まで“デルタ株”は、投資関連のワードだと思っていた。
すっかり情報弱者になってしまっていた。
コロナとか強硬五輪とか災害とか、そんなネガティブな話題ばかりで嫌気がさし、
いつしかネットニュースもろくに見ないでいた。
こんなんじゃやばい。
仕事で毎日のように福岡市内もまわる。
これだけ感染者が増えていても、人出はコロナ前の賑わいに戻りつつある。
コロナ前と異なるのは、皆とりあえずマスクしていて、
飲食店が早めに店じまいし、中国人や韓国人旅行客の姿が見えないだけ。
自分もいつ感染してもおかしくない。
すでに両親は2度目のワクチン接種も終えているものの、
それで万全とは言い切れない。
自分は感染したとて重症化などせず、むしろ無症状で済むものだと思い込んでいた。
だが、最近の死亡例などをみていると、そんな過信は危ないと気付かされた。
遅ればせながら、ワクチン接種の予約をした。
予約方法は3通り。
まず紹介されていたのが、LINE。
スマフォ持ってないから無理。
てゆうか韓国の怪しいSNSソフトを国の公的機関が用いるのかね?
スマフォ持ってたとしても、絶対利用せんわ。
残る予約方法は、電話とウェブ。
電話は面倒だし、両親曰く、つながりにくかったとのことなので、
ウェブ予約一択となった。
“ハチドリ+W”っていう、よく解らないサイトへ誘導される。
なぜハチドリ?
ハチドリの吸蜜動作と注射器をかけている?
送られてきた接種券番号を入力。
すぐに個人が特定されるようだ。
希望日時や希望するワクチンの種類(メーカー)を指定して進む。
ほんの数分で予約完了。
なんだかんたんじゃないか。
ワクチン選択できる項目あるが、うちの自治体はファイザー一択だった。
そして接種日当日。
どしゃぶりのなか、接種会場となっている町の施設へ―。
入口には合羽を着込んだ交通誘導員の姿。
駐車場は車でほぼいっぱい。
ワクチンを受けに来たひとのみならず、スタッフ達の車も多そうだ。
けっこう枠空いていた。
こういうとき過疎地はありがたい。
中に入ると、マスクの確認とサーモグラフィーでの検温。
それをパスすると、会場へと誘導される。
等間隔にパイプ椅子が並べられ、人がゆっくりと進む。
問診表の確認から、体温計による再度の検温。
20人程度が並んでいたが、そんなに待たされることなく自分の番に。
椅子が並んでいた先、パーテーションで仕切られたブースへ進む。
上着を脱いで、肩を露出する。
「どちらでもいいですよ。」
注射を打つスタッフがそう言ってくれたが、
「数日間 腕がひどい筋肉痛のように痛む」
なんて先に打った人の症状を耳にしていたので、
仕事に差支えては嫌だと思い、
利き腕じゃないほう、左腕に打ってもらうことにした。
「少し痛みますよ~。」
チクっと針の刺さる痛み。
だが、思ったより痛くない。
「はい、終わりました。」
「痛くなっても、打った場所を揉んだりしないでくださいね。」
「入浴しても構いませんが、今日はここだけ洗わないでくださいね。」
そんなことを言われ、ブースを後にする。
ブースの外でまた別のスタッフが待ち構えている。
「入浴できますが、どうされますか?」
「え?風呂ですか?」
「はい。入られますか?」
「い・・・いや結構です。」
なんで風呂?
よく解らなかったが、入浴は遠慮した。
注射打った直後に風呂入るひとなんて居んの?
またパイプ椅子の並ぶ場所へと誘導された。
打った直後、具合が悪くなったりしないか様子をみるらしい。
15分ほどここで、じっと待機してなきゃ帰らせてもらえない。
ひとによっては、アナフィラキシーショックなんかの症状が出るのだろう。
座って待機する。
目の前に大きなモニタ。
政府が作ったのだろうか?
なんかEテレっぽさ漂う、“こびナビ”とかいう番組が放映されていた。
コロナウイルスに関連するトークみたいなのが流れていた。
表情がいちいち あざとい若い女優?アイドル?と、
どこかの医者だろうか?やたら人相の悪いスキンヘッドの医療従事者が、
リモートで質疑応答している、つまらない映像。
会場を見渡す。
しきりに床や椅子を拭いて回るスタッフ。
「大丈夫ですか?」
「具合悪くないですか?」
ワクチン接種を終えたひとに、まめに聞いて回るスタッフ。
接種を受けるひとよりも、圧倒的にスタッフの数が多い。
こんな田舎でこうだもん。
これが都会だったらどんだけの人出があるのだろうか。
よく見れば、周りはほとんどが10代、20代。
高校生だろ?って感じの少年少女も。
40過ぎのおっさんは自分だけ。
ちらほら30代くらいのひとも見受けられるが、おそらく2回目。
ああ、もう若者が打つくらいになってるんだ。
どうやら田舎ほど、高齢者から若年層へ、接種スライドするペースが早いようだ。
隣の飯塚市に至っては、未だ50代のひとすら案内が来ていないらしい。
接種部位の痛み・・・50%か。
高確率で起きるんだな。
その晩、痛みが起き始めた。
ズキズキと鈍痛から始まり、深夜にはかなり痛んだ。
打った場所は、腫れたり熱を持ったりとか異常は見られない。
だが、筋肉痛に近い痛みがどんどん強くなる。
一晩寝りゃ、翌朝には引いているだろうと思ったが、
翌朝も痛みは残ったまま。
肩を上げられないくらいに痛みはひどかった。
だが、仕事を休むほどではなかったので出勤はした。
いつものごとく、激務に追われていると痛みも忘れていて、
昼過ぎには痛みはなくなっていた。
よかった、生活に支障のでるような大きな副作用は出なかった。
「40℃近い熱に三日三晩うなされた。」
「悪寒と節々の痛みがひどくてつらい。」
「とにかくだるいしんどい頭がいたい。」
「気持ち悪くなって吐き気がして、食事ができない。」
先に接種したひとから、色々聞いていたが、
自分は短時間の腕の痛みだけで済んでよかった。
来月頭に2度目の接種。
2度目の方が、より副作用がでる可能性が高いとか。
そう聞いてしまうと憂鬱になってしまうが、
打たんと始まらない。
コロナにかかれば、もっと苦しまなきゃならないかもしれない。
色々リスクはあれど、もう国民の、いや人類の義務だと思って、
予防接種は済ませておきたい。
しかし、映画を気軽に観られる日が来るのかね?
他県へドライブできる日が来るのかね?
夜8時過ぎても晩飯に困らない日が来るのかね?(←これが今んとこ いちばん切実)
ワクチン効くといいが・・・。
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