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みをつくし料理帖

2022-04-17 00:16:40 | 映画

 

一昨年の11月に観た映画。

松本穂香主演の時代劇、みをつくし料理帖。

原作は高田郁氏の同タイトルの小説。

監督は角川春樹氏で、彼の映画監督としての遺作となった。

キャッチコピーは、“どんなときも、道はひとつきり”。

 

この映画を知ったのは、とあるバラエティ番組。

番組内での再現ドラマで、お笑い芸人たちに混ざって迫真の演技をする女優さんが居た。

永野芽衣?・・・と思ったら、それが奈緒という女優さんで、このとき初めて知った。

そして番組内でこの映画のPR。

いわゆる番宣というやつだ。

 

ちょうど注目していた女優さん、松本穂香ちゃんが主演とのことで、

しかも料理が題材の時代劇ときた。

料理が題材の映画やドラマは好き。

この奈緒ちゃんという女優さんも気に入り、観に行くことに決めた。

 

 

江戸時代後期、享和二年、大阪。

幼馴染で仲良しの少女ふたり、澪(みお)と野江。

実の姉妹のように、いつも一緒だった二人だが、大洪水によって離れ離れになってしまう。

澪は両親を失い孤児となり、野江とも離れ離れに。 

天涯孤独となった澪だが、

大阪一の大きな料理店の女将・芳(若村麻由美)に拾われ、店で奉公することに。

芳にその類まれな味覚を認められ、いつしか澪は料理人を目指すことに。

 

 

時は流れて江戸。

芳の料理店は火事によって喪失していた。

芳と澪(松本穂香)はツテで江戸にやってきて、小さなそば屋、つる家に居た。

つる家店主の種市(石坂浩二)に拾われ、住み込みで奉公していた。

高齢でそばが打てなくなった種市は、店を澪に任せることに。

 

大阪の料理店で得た知識で、つる家で料理を出す澪だったが、

関西の調理法や味付けは江戸庶民には馴染みがなく、口に会わない。

常連客たちも、澪の料理をけなして去ってゆく。

それでも種市は澪を励まし、店を任せる。

 

 

唯一、澪の料理を「おもしろい!」と評価してくれる常連の男が居た。

浪人の小松原(窪塚洋介)だ。

小松原は実は将軍・家斉に仕える御前奉行で、

江戸じゅうの料理を食べ歩く人物だった。

正体を隠して澪の料理を評価し、そっけなくアドバイスもおくる。

そんな小松原に、いつしか澪は恋心を抱いてしまう。

 

 

澪は人々と触れ合いながら、江戸の文化や風習に触れ、

出汁づくりや食材探しに真剣に取り組み、

時にアドバイスをもらいながら、新しい料理づくりのヒントに活かしだす。

次第につる家の澪の出す料理は江戸いちの評判となり、

戯作者の清右衛門(藤井隆)など、著名な常連客も付く。

 

 

常連客のひとりに、遊郭・吉原いちの花魁、あさひ太夫(奈緒)も居た。

あさひ太夫は、決してひと目に触れることのない幻の存在の花魁。

つる家に来店することもなく、澪の料理も、使いの又次(中村獅童)を通して渡される。

あさひ太夫は大阪出身、澪の作る上方料理を懐かしみ、好んで所望するのだという。

又次から聞かされる、あさひ太夫の特徴や思い出話から、

澪は、あさひ太夫が幼い頃に離ればなれになってしまった、野江ではないかと気付く。

 

 

そんな評判のつる家に対して、おもしろくないのが前に江戸一と謳われていた料理店。

店主の采女(うねめ:鹿賀丈史)は、澪の料理のレシピを盗み、

それを模倣したうえで、さらにバージョンアップした料理を出したりと見境いない。

采女による営業妨害は、しまいには放火にまで至り、つる家は全焼してしまう。

 

 

失意に陥る澪だったが、

種市や芳の必死の援助と、あさひ太夫からの多額の援助もあり、

澪は新たな店をオープンさせる。

新規オープンしたつる家は、もとからの常連客や、

評判を聞きつけて押し寄せる客で以前にも増して大繁盛した。

 

 

澪はお金を貯めての目的があった。

吉原いちの花魁、あさひ太夫・・・野江。

その見請け金を用意して、吉原から野江を解放すること。

野江との再会を果たす日を夢見て、澪は料理づくりに励む。

 

 

 

面白かった。

もちろん、料理題材のドラマとして観ても楽しめたが、

江戸が舞台なので、人情劇としても面白かった。

最初は澪に冷たかった常連客らが、次第にその料理に心動かされ、

ほっぺが落ちんばかりに、料理を頬張り舌鼓を打つ。

江戸庶民は当時から、新しもの好きでミーハーだったのかもしれない。

 

 

逆に野江(あさひ太夫)との再会エピソードの方はそこまででもなく・・・。

原作の小説では、澪と野江の再会は、

もっと先で、もっと障壁があって感動的だったようだが、

さすがに映画の尺で、そこまで描くことはできなかったようだ。

また、小松原との恋愛エピソードも、原作ではもっと深く描かれたようで、

身分の差を越え、小松原からの求婚にまで至るようだ。

映画では澪が あっさりと失恋していた・・・。

 

 

料理がうまそう。

最初に登場した、小鍋でグツグツいってる牡蠣料理からたまらない。

映画を観た直後、生ガキを購入して鍋を作ったほど。

そばも茶碗蒸しも、みりんの搾りかすを使ったお菓子や、

卵の黄身を使ったスイーツみたいなのも美味そうだった。

 

 

ところてんのエピソードは思わず笑った。

関西じゃ黒蜜をかけて食べるスイーツ。

江戸じゃ三杯酢をかけて食べるもの。

一本箸ですくって食べる食べ方と三杯酢に咽せ、

食のカルチャーショックに、澪は面食らうシーンがあるが、

自分も初めて黒蜜のところてんを食べたときの衝撃は忘れられない。

福岡も三杯酢で食べるのが一般的で、黒蜜で食べるのは自分も未だに抵抗ある。

 

 

松本穂香の演技も良かった。

小さいおうちの、黒木華っぽい、素朴な頑張り屋さん感がたまらない。

対する奈緒さんの方は、出番が少なめでミステリアスな役どころだったので、

この映画を観るきっかけとなった、あのバラエティ番組の再現ドラマほどではなかったかな。

豪華絢爛な花魁衣装なのに、料理を食べて、少女のように喜ぶ姿なんかはギャップがあって良かった。

  

 

脇役たちも良かった。

小松原役の窪塚洋介,采女役の鹿賀丈史,又次役中村獅童もすごく良かった。

そしてつる家店主の種市役の石坂浩二。

このひとこんな おじいちゃんだったっけ?って思うほど、

喋り方や身のこなし方、年老いて引退する店主役が見事だった。

 

 

あとは清右衛門役の藤井隆。

芸人なので致し方ないけれど、彼の登場シーンだけはコミカル。

始めはミスキャストだろ!って思ったが、次第にハマる。

妻役だった薬師丸ひろ子との、文字どおりの夫婦漫才シーンは最高だった。

 

 

芳役の若村麻由美さんはきれいだったし、

つる家を手伝うご近所さんの、おりょう役だった浅野温子もきれいだった。

最初、浅野温子だと気付かなかった。

知ってる女優さんのはずだけど誰だっけな・・・まさか浅野温子だとは。

ほんのチョイ役で反町隆史や松山ケンイチなんかも登場する。

 

 

時代や国籍を問わず、料理が題材の映画は面白いと思った。

 

・・・。 

そういや劇中に、縁側で生きたカメが吊るされている謎シーンがあったんだけど、

あれは何だったんだろう・・・?

思い出した謎シーン、検索してみたら、放生会(ほうじょうえ)という宗教儀式。

魚や鳥などの殺生を戒める儀式で、

今でいう家畜供養祭や獣魂祭みたいなものかな?

 

江戸時代には亀屋や金魚屋から買ったカメや金魚を、

わざと川や池に放ち、解放して命を助けてあげた!・・・って、ことにしていたとか。

とりわけ魚や鳥の命をいただく飲食店では、必須儀式だったのかもしれない。

今でも神道や仏教徒のなかには、放生会の最中は肉/魚を食べないひとも居るとか。

 

 

福岡だと“ほうじょうや”と呼ばれる儀式で、

福岡市東区にある神社、箱崎宮で毎年秋に開催される同名の祭りもその名残だとか。

境内にある池に金魚を放つ儀式も行われているそうだ。

博多どんたく、博多祇園山笠と並ぶ、博多三大祭りのひとつで盛大に開催されるのだが、

猿回しが披露されたり、出店でふつうに焼鳥やらフランクフルトやら販売しているわ、

金魚すくいもあるわで、もはや本来の宗教儀式の放生会の意味皆無だけど。

 

映画を観た帰りに生牡蠣を購入して、その日の晩に作った寄せ鍋。

 

 



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