
直方谷尾美術館
先月の中下旬の週末、二週連続で直方谷尾美術館へ行った。
子ども向けの企画展、ぼくたちのかいじゅうワールドが開催されている。
新聞記事でそれを見つけ、面白そうだと思い、甥っ子たちを連れて行ってみることに。
甥っ子は恐竜や怪獣が大好きなので、きっと喜ぶにちがいないと思った。
福岡県直方市(のおがたし)にある、直方谷尾美術館。
これまでも、ちょくちょくと行ったことのある、小規模な美術館。
昭和初期に建てられたという、レトロな建物が目を引く。
駐車場に車を止めて、甥っ子たちを連れて入館する。
窓口でチケットを購入していると、若い女性スタッフが訊いてくる。
「それ、いちばん新しいガンダムですよね?」
?
自分がこの日に着ていたTシャツを見ている。
うわぁぁぁ!
この日、ガンダムユニコーンに登場するヒロイン、オードリー・バーンがプリントされたTシャツを着ていた。
ロビーに展示されていたでっかい作品。
造形作家、角孝政氏の“ディプロカウルス”。
昨今の美少女アニメのキャラがプリントされたような、
いかにもなものは、さすがに着れないけれど、
ガンダムのヒロイン程度ならば、誰も判りゃしないだろうし、
タッチも美少女アニメのそれとは異なるし、そう恥ずかしくもないや。
とくに気もすることなく、これを着ていた。
ところが、こんな若くてきれいなおねえちゃんが、ガンダムユニコーンを知っているだなんて・・・。
狼狽してしまい、おねえちゃんの問いに、とっさに答えることができない。
「これ一番新しいやつだっけ?」思わず、小学三年生の甥っ子にふってしまう。
去年、あれだけ「ユニコーンガンダム!」言っていた甥っ子も、すっかり忘れてしまって首をかしげる。
子どものムーブメントは移ろいが激しい。
「あーそれは、スター・ウォーズのキャラクターだよね?」
甥っ子の方を見たおねえさん、今度はそのTシャツを見て言う。
「ダース・ヴェイダーだね、かっこいいねえ。」
照れて静かにうなずく甥っ子。
「ユニコーン・ガンダムですよね?」
すぐに自分に切り返してくるおねえさん。
「あ、そうです、ミネバ・ザビだったかな・・・。」
当たり前に知っていることを、自信なさげに小声で答える。
違うんだ、いちばん新しいのはユニコーンじゃないはず。
鉄血のなんたらだったか、レコンギスタだったか、
ビルドファイターズだったか、どれだかよう判らんが、ユニコーンではないはず。
だから、即答できなかったのだよ、おねいさん。
到底、ガンダムなど知らなさそうなひとが、それを知っていて戸惑ってしまう。
きちんと答えて話はずめば、念願の女性ガノタフレンドができたやもしれぬのに・・・!
なんてことを思いつつ、展示場へと進む。
入り口脇には、子ども向けの注意書きが書かれた看板があった。
三人の甥姪に、それを読ませる。
「びじゅつかんでは、はしってはいけません。」
「おおきなこえで、おしゃべりしてはいけません。」
「さくひんを、さわってはいけません。」
子ども向けの展覧会では、いくぶんか緩和されたりするけれど、
美術館における最低限のマナーは知っていて欲しい。
しっかりと言い聞かせて、いざ入場。
まずは写真パネルが並ぶ。
直方市を流れる川、遠賀川(おんががわ)水域で見ることができる、いきものの写真だ。
館内、作品も含め写真撮影OKだった。
“自然 川から海へ”
直方市出身の自然写真家、武田晋一氏の作品。
ヒキガエルやイモリ,トンボにカワセミ、川で見ることができるいきものをはじめ、
カニやイソギンチャク、ウミウシなど、河口から海で見られるいきものまで、
たくさんのいきもの達が原色のまま、写真にとらえられていた。
とくに目を引いたのが、カブトエビ!
小学校の頃、田んぼでよく見かけたのだが、これが今もまだ健在だと知ってホッとする。
あの頃は、捕まえて遊んでいたけれど、よくよく見たらグロテスクな生き物だなあ。
写真と合わせて、武田氏の書いた、いきもの、命、そしてヒトとの関わりなど、
簡単なようで難しい文章が添えられていた。
自論を唱えているようでもあり、哲学的でもあり、
自然のなかにヒトの理屈を当てはめることはできない。
ヒトといきものの関わりのなかにある矛盾を挙げて、それをうったえているような文章だった。
子ども向けに書かれたようでもあるが、理解するには中学生くらいじゃないと無理かな?
次いで、登場するのが鞍手町(くらてまち)出身の彫刻家、白石恵里氏の作品群。
“そして人がいる 日常のままで”
武田氏の写真と同じ場所に並んでいるので、同時に鑑賞できた。
人物像がほとんどで、どれも少年・少女といった、若者たち。
暗い表情や険しい表情をしている者はなく、
どれもどこか清々しく、遠くを見据え、希望に満ちたような表情をしている。
“蓮海”
少女の瑞々しい造形ははもちろん、
タイトルにもなっている蓮の葉や実の造形も見事だった。
ほぼ等身大のスケールにも関わらず、
表情や髪の質感はもちろん、筋肉や服のしわなど細部まで丁寧に作り込まれており、
細かなディテールの仕上がりは、小さなフィギュアにも匹敵するほど。
大きな作品になると、表面がけっこう雑(あえてそうしているのかも)なものが多いけれど、
白石氏の作品は、どれもなめらかに美しく仕上げられていた。
こういうことを言うと、非難されるかもしれないが、
この繊細さは、女性作家らしさが出ているように思える。
次のエリアは絵画。
北九州市出身の画家、阿部健太氏の作品。
“ある日 突然変異”
最初に登場する二枚は、白基調の背景に、美しい金魚が泳ぐ清々しい絵画なのだが、
パーテーション向こうには、黒褐色でキャンバスいっぱいに大きく描かれた、
まるで怪獣のような、いかつい姿をした魚の絵がずらりと並ぶ。
その物々しい姿から、架空の魚かと思われるが、
ブルーギル,ブラックバス,ライギョ,アリゲーター・ガーと、どれも実在する魚たち。
しかも外来種として日本に定着し、在来種を駆逐している悪名高い魚たちだ。
しかし、それもまたヒトが自然界にもたらしたことであり、
よく見ると、これら魚たちには釣り糸がかけられ、
その糸のみが、ピンクやグリーンなど原色で彩られている。
本人たちには罪はない・・そんな外来魚たちの悲しさを表しているようにも見える。
自然界へ対するヒトの矛盾、そのエゴをうったえんとする作品群だった。
ラストは造形作家、角孝政氏の作品群。
“うごめく かいじゅう”
美術でカテゴライズすると、現代美術にあたるのかな?
漫画やイラストもあるけれど、よく解らない造形物がずらりと並ぶ。
ただ、この展示会においての、メインがここだといっても過言ではないかもしれない。
子どもたちにとっては、真面目な写真や彫刻、絵画よりも、
こういった作品の方に興味津々だったのではなかろうか。
右:“ももいろかいじゅう”。
背びれに、鉄道模型などで使用されるミニチュアの木が使われていた。
奇抜なデザインの怪獣?ともとれないよく解らない生物の模型。
市販されているオモチャの怪獣をびっしり体内に宿す怪獣?
カラフルな怪獣のゴム人形が、標本のように並べられたもの、
そうかと思えば、クマムシのような実在する生物のリアルな模型も。
“ねこぢる”なる、漫画作品もあったが、シュール過ぎて自分には理解できなかった。
現代美術(角氏の作品が該当するのか解らないが・・)はどう捉えればいいのか、未だに解らない。
左:“クマムシ”
右:“のびあがり”
ひととおり鑑賞を終えて、なかなか面白い企画展だった。
子ども向けとはいえ、大人でも十分に楽しめる内容。
子ども連れでなくとも、大人だけでも楽しめる展覧会になっている。
鑑賞料金も安く、とくに子どもは無料で観て損はない。
子どもを連れていくと、展示物に関したクイズがある。
入り口で鉛筆とクイズが書かれたシートを渡される。
設問は全部で10問、きちんと見ていれば答えられるものだけど、
中には大人でも間違えるような、難易度の高いものも。
子どもたちはクイズを解くのに必死で、作品をロクに見やしない。
これ、子どもたちに展覧会を楽しんでもらおうと、学芸員が企画したのだろうが、
クイズに夢中になるあまり、該当の作品以外はスルーしてしまい、
個々の作品をじっくりと鑑賞していないようだった。
クイズも楽しみつつ、鑑賞も楽しんでもらえればいいのだが、
連れて行った甥姪たち、皆、クイズばかりに気を取られていた。
全問正解しなくとも、キャンディの小袋がもらえた。
「鎮座しています」なんて、小さい子どもには意味が解りませんて。
あと「紫」はルビふってくれないと読めませんて。
次の週にも、別の甥っ子を連れて観に行った。
その甥っ子たちも、やっぱりクイズに夢中。
どっちも最年長は小学校三年生、どちらが正解率高いかな?
そう思ったが、6問正解と7問正解、どっこいどっこいだった。
なかには文書を読み違えていたり、問いの意味を理解していなかったり・・・。
小学校三年生っていうと、まだこんなレベルか。
このぼくたちのかいじゅうワールド展、8月26日まで開催されている。
ほぼ夏休みじゅう開催されているので、
小学生の居る家庭は、親子での鑑賞をおすすめする。
夏休み後半、自由研究に困ったとき、
この展覧会でインスピレーションを受けて、何か自発的に子どもがやり始めるかもしれない。
帰りに絵具や粘土をねだられたら、迷わず買ってあげたい。
未就学児にはちょっと難しいと思うし、作品によっては怖がるかも。
造形作家、角孝政氏の個人ギャラリー(不思議博物館)のチラシがあった。
毎月最終日曜日だけ、ギャラリーカフェとしてオープンしているのだとか。
今展覧会に出展したもの以外にも、数多くの謎作品が展示されているようだ。
ギャラリーには店員として、不思議子ちゃんがいらしゃるようで、興味津々。
だが、不思議子ちゃんのプロフィールやメニューを見て怖くなる。
面白そうだから、行ってみたいとは思えど、なんか怖い。
ゆかちゃんの方が好み。
芸術家に向かってこういうこと言うのは甚だ失礼だとは思うけれど、
実は やべえ人なんじゃなかろうか?
美術館の庭にある像は、変わらず艶めかしかった。
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