べんきょうなせん(='ω')

べんきょうは論理で考えるトレーニング
熊本県山鹿市中高大学受験の "あすく" です

名無しの猫と三毛子さんが真面目にボケる|音読を楽しもう

2009年09月13日 | 国語
「なんでも天璋院(てんしょういん)様のご祐筆(ゆうひつ)の妹のお嫁に行った先のおっかさんの(おい)の娘(むすめ)なんだって」

「なんですって?」

「あの天璋院様のご祐筆の妹のお嫁に行った……」

「なるほど。少し待って下さい。天璋院様の妹のご祐筆の……」

「あらそうじゃないの、天璋院様のご祐筆の妹の……」

「よろしい、わかりました。天璋院様のでしょう」

「ええ」

「ご祐筆のでしょう」

「そうよ」

「お嫁に行った」

「妹のお嫁に行った、ですよ」

「そうそう間違(まちが)った。妹のお嫁に行った先の」

「おっかさんの甥の娘なんですとさ」

「おっかさんの甥の娘なんですか」

「ええ。わかったでしょう」

「いいえ。なんだか混雑(こんざつ)して要領(ようりょう)を得(え)ないですよ。つまるところ天璋院様のなんになるんですか」

「あなたもよっぽどわからないのね。だから天璋院様のご祐筆の妹のお嫁に行った先のおっかさんの甥の娘なんだって、さっきから言ってるんじゃありませんか」

「それはすっかりわかっているんですがね」

「それがわかりさえすればいいんでしょう」

「ええ」と、しかたがないから降参(こうさん)をした。我々(われわれ)は時とすると理詰(りづ)めのうそをつかねばならぬ事がある。

 
夏目漱石
吾輩(わがはい)は猫である


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