久しぶりに小説の感想を書こう。
猫たちが亡くなってから読書量が減ったり、そこにコロナの影響で読書交換会がオンライン開催になって本を交換する機会がなくなったりして、小説を読む量が減っている。
みんなに会って、新しい作家さんの話を聞いたり、本を交換したり、また自分の読んだ本を渡したりすることが小説を読むモチベーションになっていたんだなとおもう。物語世界に浸るときはひとりだけれども、そのあとに共有する相手がいるのは楽しいのだ。
辻村深月さんの小説「ツナグ」(新潮文庫)を読んだ。
辻村深月の小説を読むのは、「凍りのくじら」「太陽の座る場所」「僕のメジャースプーン」「本日は大安なり」に次いで5冊目。
今までの4冊どれも面白く、今一番好きな作家さんのひとり。そして「ツナグ」も最高だった。
ツナグ(使者)とは、死者との再会を叶えてくれる仲介者。ひとりの人は使者(ツナグ)にお願いすれば、一緒に一度だけ死者と再会をすることができる。
芸能人に会おうとする人、家族に会おうとする人、友人に会おうとする人、様々な人が登場する。そしてまた使者(ツナグ)その人にも焦点が当てられる。
辻村深月さんの小説が物語として面白いのは言うまでもない。
この「ツナグ」を読んだのは、猫たちが亡くなったあとであり、そしてあたしが考えていたことと似たことが書かれていたから、冒頭ではみなと共有したいと書いたけれど、このあともずいぶん個人的な感想が続くよ。
「ツナグ」から気になった個所を抜粋させてください。
(使者が死者を呼び出す作業について)
「――記憶と掴むみたいだった」
「すごく、曖昧なところから連れ出してくるんだなっていう印象。あの世から呼び出すっていうよりも、この世に残っているその人の欠片や記憶をいろんな場所からかき集めて、どうにかひとりの形にするように、見えた」(396ページ)
記憶や考えも全く同質なら、単なるクローンよりはずっとずっと本人に近いだろう。だけどそれでも、釈然としなかった。(398ページ)
これね。すごい、考えています。考えたし、今でも少し考えている。なんというか魂本体は旅立ったけれど、やっぱりあたしも記憶やクローンが残っていて、それは自分だけのものかもしれないけれど、でもその精巧なクローンとはコミュニケーションがとれるとおもっています。
だけど「ツナグ」のなかで、使者となった青年が自問自答していたように、そのあたしとのやりとりは旅立った魂にとってどういうものなのだろうか、だとか考える。
わからないのだ。でも記憶やクローンや、たとえ分身でも、うれしいのだ。
そんなことを考えています。
こういうことを書いてくれる、辻村深月さんはすごいとおもう。この小説に出会えてよかった。
どうもありがとうございます。
思いっきり個人的な感想になりました。太陽、蓮、ありがとうね。大好きだよ。
東京読書交換会は、池袋で本を持ち寄ってお互いの本を交換したり、オンラインで読書経験を交換したりする会です。
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◆臼村さおり twitter @saori_u
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