読んだ小説の感想です。
歌野晶午さんの小説「世界の終わり、あるいは始まり」を読みました。
新型コロナウイルスの拡大にともない、「世界の終わり、あるいは始まり」と聞くと、パンデミックを連想されてしまうかもしれませんが、それとは異なる小説でした。
歌野晶午さんの小説を読むのは初めて。ミステリー作家として名高い歌野晶午さんですが、この小説は、(あたしが正確に読めていれば)オチのない小説です。結末がない。
主人公は、既婚者の中年男性。中学生になる男の子と、小学生の女の子、4人で暮らす家族の父です。あるとき、長男が懇意にしていた男の子が誘拐されて殺されました。近隣では同じような誘拐殺人事件が多発します。長男の部屋に忍び込んだ主人公は、長男の部屋で誘拐に関連するとおもわれるものを発見し、「長男が犯人ではないか?」と悶々とするという小説です。
けれどもこの小説は、具体的に物語が進行するというよりは、主人公の妄想世界のたまものです。
「もし、息子を問い詰めたら~」起こる可能性のことA、起こる可能性のことBというように、延々と繰り返されます。
実際のところは息子に聞くことができない?ようなのですが、「もし聞いたら、、、」という設定が綴られる。
だから、感情移入しながら、続きにドキドキしながら読んでいると、
「はい、想像でした」とやられる感じで、「これは夢でした」。また読んでいくと、はい「あれも夢でした」と続く感じ。
同じ時空をクルクルと繰り返します。
こういうジャンルの小説もあるのでしょうね。
あたし自身については、今の愛猫が他界した状態ではあまり合わない小説でした。どういう小説があうかわからないけど、でもこれは合わない。
ネットでレビューを検索してみると、歌野晶午さんはいつもこの作風というわけではないみたいなので、他の作品も折をみて読んでみたいです。
文章がとても読みやすい。一般的なエンタメ現代小説と比較すると印刷されている文字が小さく、文章がぎっしりと詰まっている小説だったのですが、それでも苦なく読めました。
ではまた
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