カミュの「ペスト」を読んだ。
カミュといえば日本では「異邦人」が有名でしたが、新型コロナウイルス(covid-19)の拡大で、この「ペスト」が注目されるようになりました。
実は「異邦人」を読んだことがありません。カミュの著作を読むのはこの「ペスト」が初めてです。
アルジェリア出身のカミュ。かつてチュニジアで青い海をみたときにカミュがみたアルジェリアの海もこんな感じだったのかなとおもいました。「異邦人」を読まないままに長い年月が経ち、こうやって月日は過ぎていくのかもしれません。
「ペスト」は、「今売れている」「コロナと似ている」と話題になっているのを耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。かくいうあたしもその一人でした。
読まないままにしていたのですが、読書交換会で譲っていただく機会に恵まれ、読んでみました。
読んでみると確かに、今年の春から現在のころまでと状況が似ている。社会が大きく変わった今に読むと、以前に読むよりも感慨深い。
よろしければぜひお読みください。と思うと同時に、もし読む場合は、できる限り最後まで読んでもらいたいともおもいました。途中までしか読まないと、怖いなという状態で終わってしまう気がするからです。
そして読んでみておもったのは、描写があまりに淡々としているので、この綴られ方が好みじゃない方もいるだろうなということ。ある程度本を読み慣れていないと、途中で読むのが嫌になってしまうかもしれません。
だから話題になったから買ったけれど最後までは読んでいないという方、案外いらっしゃるかも。
かくいうあたしも、一年前だったら最後まで読めなかったかもしれませぬ。と考えると、本をだいぶ読み慣れました。読書交換会のおかげです。
「ペスト」を読んでいるとき、新型コロナウイルスのことと同時に、東日本大震災のことを思い出しました。また世界では、今実際にこの「ペスト」のようになっているところもあるのだろうなとおもいました。
世界のどの地域の方が読むかによって、感じ方は大きく異なるかもしれません。もちろんそれはすべての小説についていえることですが、この「ペスト」については特にそうなのかなもなと。
小説「ペスト」のなかで、個人的に一番印象に残ってっているのは「抽象」の捉え方でした。ここでの「抽象」は自身の生活に密着していない、あるいは個性(個人)ではなく社会全体というニュアンスでとらえられていました。
ペスト以前、人物たちには個人的な生活がありました。それぞれの喜怒哀楽がありました。けれどもペスト以後は、会話や関心事項がすべてペストになり、個々人の生活に対する意識が希薄になっていきます。
これは非常事態宣言のころのあたしたちであり、そして普段でも、現実生活ではなく、芸能人の生活が気になる状態と似ている気もして、少し考えさせられたのでした。
示唆に富んだ小説だったな。
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