梅雨明け。今日はずいぶんムシムシした暑さだったな。来年の今ごろは東京オリンピック、もう少し涼しいといいなとおもいながら外に出たよ。
本の感想。
森浩美さんの短編小説集「家族の言い訳」(双葉文庫)を読んだ。
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家族の言い訳 (双葉文庫) |
森 浩美 | |
双葉社 |
収録作品は、「ホタルの熱」「乾いた声でも」「星空への寄り道」「カレーの匂い」「柿の代わり」「おかあちゃんの口紅」「イブのクレヨン」「粉雪のキャッチボール」の8小説。
ちょっぴりほろ苦く、けれどもかけがえのない家族の話が綴られていた。
森浩美さんの小説を読むのは、長編小説「夏を拾いに」に次いで2冊目。
「夏を拾いに」を読んだときは、情景が浮かんでくるような文章でとても心地よかった。そして自身の子ども時代のときは自分のことしかわからなかったけれど、おもえばいろいろな背景の子どもがいたはずだよなと思いながら読んだ。
今回は、家族の形はいろいろだなと思いながら読んだ。いかにもありそうで自然なのだけれども、自分と近くてでも自分と遠いみたいな多様性を描くのがすごい。
後味は悪くなかった。どの家族も絵にかいたようなしあわせな家族ではないかもしれないけれど、それでもしあわせなんだろうなとおもって、案外家族ってそんなものなんだろうなとおもえた。
他人の家族は、自分の家族ほどつぶさにみない。なんとなく表面的にみてこういう家族なんだなと判断する。けれども当たり前だけど、いろいろなドラマがそのなかにあるんだよね。
この記事を書くために少し調べて、森さんが作詞家であるということを初めて知った。タイトルを読んですぐにフレーズや歌詞が浮かんでくるという曲はないけれど、彼が手掛けている歌を歌っている歌手の多くを知っていた。
そう、彼。森さんは男性だということも初めて知った。「美」という漢字と、文章が繊細だからで、女性の方だと勝手に思い込んでいた。
なんというか人生を信じる力にあふれている小説な気がして、そこは作詞をされる方だからこその持ち味なのかもしれないとおもった(偉そうですいません)。
きらめきがそこかしこに凝縮されていて、そのまわりに柔らかな空気がまとわりついている感じ。
内容としては、すべてハッピーエンドというか後味がいい感じ。試験問題の課題文になったり、NHKの朗読でも使われたりしたというのも納得する。
だからお約束といえばお約束なわけで、あたしはそういう話に対してどちらかというと斜に構えてしまうところがあるんだけれど、この本については心地よく読めたな。
これぐらいの距離感で読ませてくれると、いろいろな人に優しくなれそうな気がする。どうもありがとうございます。
また森さんの本を読むとおもう。
ではまたー
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