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読んだ小説の感想を書く。羽田圭介さんの小説「ポルシェ太郎」を読んだ。
面白かった。羽田圭介さんの小説を読むのは初めて。
正直なところ、ヤンキーっぽいと申しますか、パリピ―っぽいと申しますか、あたしとは別世界。そもそもたぶん「ヤンキー」でも「パリピ―」でもない。ただあたしからみるとこういう語彙しか思いつかないくらい、別世界です。
主人公は、イベント企業を経営する30代の男性。イベントを企画運営したり、中高年男性と若い美女をとりもつ合コンをセッティングしたりしている。
ある日、1500万円のポルシェを買う。一言でいうと、ポルシェや高級車に憧れる価値観から、他のものを大切にする価値観へと主人公が変遷していく物語です。
東京だとポルシェに乗っていても目立たないけれど、埼玉だとポルシェが妬みの対象になるというのが興味深かった。
そういえば、埼玉ではあまり高級車を見かけません。近所に高級車を複数所有されている家があるのが知っているけれど、そこの車庫は頑丈で外からは様子がわからない。確かに、もしあの高級車が、通りすがりの人が手で触れるような状態で駐車されていたら、誰かにいたずらをされるかもしれない。
一方の東京、特に六本木や表参道、銀座辺りでは高級車を見かける。もともとの資産家なのかもしれないし、あるいはこの本の主人公のように、経営者なのかもしれない。
お金の金額の話がそこかしこに出てきた。あたしはあまりそういう考え方をしないので、でもしたくないかというとそんなことはなく、そういう考え方もしてみたいとおもっているので、とても勉強になった。
なんというか、お金があると自分も楽だけど、それ以上に大切な人のために使ったり、人のしあわせに貢献したりすることができる。それをやりたいのだ。主人公は、お金の使い方は変わるけれど、最初から最後までお金を大切にしているというか、お金への敬意を感じた。尊敬いたします。
物語の最初の頃の主人公よりも、終わりの頃の主人公に、あたしはどちらかという共感と申しますか、親近感を覚える。けれどもそれは、なんというか、お金儲けの得意な人が言うべきセリフであって、今のあたしが言うべきセリフじゃない気がする。
ただあたしは尊敬します、という状態かな。
小説というものはもう少し鬱々悶々とした世界が描かれている印象があるのだけど、なんというか、この「ポルシェ太郎」はとてもカラッとした乾燥したさっぱりした世界観。あたしの独断と偏見で書くのであれば、あまり小説を読まなそうな人たちがいっぱい登場する小説でした。
あとギャラ飲みと称して、若い美女たちにお小遣いを渡し、中高年男性と飲み会をするシーンが何度か登場します。それもあたしにはちょっと別世界で、自分が若いときでもこういうところに呼ばれる機会はなかったし、それはあたしの知人友人もおそらく呼ばれない(あるいはい行かない)タイプの方が多く、その意味でも別世界の感覚が強かった。
あたしの知っている世界は、ほんの一部で、世の中さまざまな世界が、この同じ日本のなかでも繰り広げられているんだとあらためておもいました。フィクションだけど、そうおもいました。
だからこそ、また羽田圭介さんの小説を読みたい。
みなさま佳き宵をお過ごしください。
ではまた
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