雑居空間
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 一時期よりは多少マシになってきたとはいえ、まだまだ暑い日が続く今日この頃。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 暑い夏には、背筋も凍るような恐怖体験で納涼と洒落込みたいものです。と、いうわけで、夏の怪奇特集と称しまして、ホラー系のゲームを幾つかプレイしていきたいと思います。
 怪奇特集の第一弾は、思緒雄二のゲームブック「顔のない村」。元々はウォーロック第12号に掲載された作品で、「送り雛は瑠璃色の」(社会思想社・現代教養文庫)に収録されています。



 舞台は現代の日本。主人公は気が付くと、とある旅荘の一室にいた。ふと外を見ると、旅荘の庭に、赤い着物を着た2、3歳くらいのオカッパ頭の少女がたたずんでいる。近くに寄ってみると、その少女には、「顔」がなかった……。

 冒頭から状況説明は一切なし。主人公は記憶を失っており、自分が何者で、なぜここにいるのかもわかりません。唯一の手がかりは、部屋に残されていた、切迫した状況を伝える殴り書きのメモのみ。主人公はほとんどヒントもないままに村をさまよい、この村の謎を解いて、生還しなくてはならないのです。

 地図に行ける場所とパラグラフ番号が9箇所記載されていて、行きたい番号に飛んで、その場所で起こるイベントを処理して、1d6×10分の時間が経過して、また次の探索ポイントへ移動する、という形でゲームは進行していきます。
 主人公が現在どういう状態に置かれているのかがわからないことと、村内で起こる奇妙な出来事に、不気味な化け物たち。さらに探索を進めるにつれてどんどん時間が経過していき、気力点もじりじりとすり減らされる(「地獄の館」の恐怖点並みに、ちょっとしたことで減点されます)ことで、どこか落ち着かないような雰囲気と、焦燥感が演出されます。

 システム面は、能力値の決定から、戦闘方法、運試しまで、ほぼファイティングファンタジーシリーズそのまんまです。異なるのは、体力点が気力点になっていることくらいですかね。気力点は、通常の体力に精神力の意味合いをからませた感じ、だそうです。

 冒頭にあるルール説明の文面も、体力と気力の表記以外はほぼ同じものです。もっと言えば、冒険記録紙も同じです。

「顔のない村」冒険記録紙
「火吹山の魔法使い」冒険記録紙

 ご覧のとおり、「火吹山の魔法使い」のキャラクターシート、そのまんまですね。しかも一箇所、気力点が体力点になってるし。
 ちなみに、冒険記録紙には欄が用意されていますが、「顔のない村」には金貨も宝物も飲み薬も登場しません。そのくせ、「顔のない村」にはあってしかるべき、時刻の記録欄が存在しないんだよなぁ。手抜きにもほどがあるだろ!



 1回目のプレイは技術点9、気力点15、運点12と、運以外がしょぼかったので、途中で気力が切れて死亡。2回目のプレイでも能力値は平均的でしたが、1回目のプレイのときの知識があったので、普通にクリアすることができました。

 パラグラフ数は200とそこそこあるのですが、大量の選択肢(ただし、そのほとんどがハズレで、結局数パターンの移動先に収束する)で水増しされている箇所もあるため、数字ほどのボリュームは感じません。実際、「顔のない村」のゲームパートのページ数は、84ページしかありませんしね。

 残念ながら、ゲームとしての完成度は、それほど高くないと思います。最大の理由は前述の移動システムで、次にどこに行くのかという自由度は高いのですが、次にどこへ行くべきを判断する材料が、全然ではありませんがほとんどありませんので、適当に選択していくしかないんですよね。
 そういった部分は、どのゲームブックにも少なからず存在します。しかし、それを補うためにあるストーリーや伏線といったものが、「顔のない村」には希薄です。しかも、どうすればクリアできるのかといった攻略的な部分も、移動先があらかじめすべてオープンになっているために、端から試せばなんとかなってしまいます。
 結局、たくさん並べられているビックリ箱を適当に開いていって、「当たった」「外れた」と中身を確認する作業を繰り返すだけの、単調なゲームになってしまっているのです。
 この辺り、良くも悪くも、「送り雛は瑠璃色の」のプロトタイプといった印象ですね(「送り雛は瑠璃色の」の感想については、こちらをご参照ください)。この1年半後に「送り雛は瑠璃色の」が書かれるわけですが、長所短所共に「顔のない村」と似通った部分が多くなっています。ただ、ストーリーや謎解きといった部分で、「顔のない村」からは明確に進歩していると思いますけどね。



 正直、ちょっとイマイチでしたかねー。和風ホラーとFF準拠のルールを結合させたまでは良かったのですが、あまりバランスの良い仕上がりにはなりませんでした。

 ところで、一足先に創土社から復刊された「送り雛は瑠璃色の」に続き、「顔のない村」も創土社の復刊予定リストに載っていたのですが、こちらはとんと音沙汰が無くなってしまいましたね。つーか、2011年3月の「七つの奇怪群島」以降、創土社からは1年半もゲームブックが出ていません。ドルアーガの最終巻、待ってるんだけどなぁ……。
 しかし、「顔のない村」が創土社から単独タイトルで復刊されるなら、ゲームの構造はシンプル過ぎるし、ボリュームも足りないしで、相当手を入れないとならないでしょうね。復刊された暁には、きっと別物と言えるくらいに改造されるでしょうから、この作品にどんな現代的なアレンジが加えられるのか、楽しみですね。もし、本当に復刊されるなら、ですけどねー。




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