雑居空間
趣味のあれこれを、やたらめったらフットスタンプ




 以下、「火吹山の魔法使い」についてのネタばれがありますが、内容については大幅に脚色が施されています。でも、ネタばれはネタばれなのでご注意ください。




前回のあらすじ

 あたし、レイン・デシンセイ。15歳の駆け出し冒険者。ひと月前に行方不明になったお師匠さまを探しに、悪名高い火吹山までやってきたの。
 川に流され、死体の山をかき分け、でっかい龍も乗り越えて、いよいよラスボス一歩前。
 ここまできたらあとちょっと。待っててね、お師匠さま。

技術点:11
体力点:17
運点:9
食料:10
薬:ツキ薬×2
金貨:21
持ち物:<9>の鍵、<99>の鍵、<111>の鍵、古い耳飾×2

 そっとドアの影から中を覗くと、中では小柄で優しそうなおじいさんがひとりでカードゲームをして遊んでいた。あたしは四つん這いになり、そっと中へと入っていく。

「よく来たな。待っていたぞ」

 え? 気づかれた?

 あたしは驚いて、思わず頭を上げる。おじいさんは椅子に座ったままこっちを見つめている。が、明らかにさっきの柔和な雰囲気とは異なっている。とても禍々しく、恐ろしい。なんなの? まさか、こいつが、あの……。

 あたしは意を決して言葉を放つ。「あなた、ザゴールね」

 ザゴール。火吹山のあるじ。力のある魔法使いであること意外、その詳細を知るものはいない。あの伝説の魔法使いが、今、目の前にいる。

「あたしのお師匠さまは……、デイブ・レーシッチはどこ? ここに来たはずよ」
「レーシッチ? フム、お前さんは奴の弟子か」
 ザゴールは興味深そうに薄笑いを浮かべる。やはり、お師匠様はここに来たんだ。
「知っているのね。お師匠様はどこ?」
「ヤツは死んだ」
「嘘! お師匠様がそう簡単にやられるわけがない!」
 あたしは剣を握りなおして、ザゴールに飛び掛る。しかしザゴールは老人とは思えないような身のこなしで軽く受け流す。

「血の気の多い娘だ。そんなに会いたければ、会わせてやろう」
 そう言うと、ザゴールの身体に変化が現れる。顔中に刻まれていたしわが消えていき、白髪も黒く染まっていく。あたしよりも小柄だった身体は徐々に大きくなり、見上げるほどになった。そして、長い髪をかきあげて中から出てきたその顔は……。

「お師匠さま!」

 そこに現れたのはお師匠さま。ザゴールが、お師匠さま?

「こいつの身体はワシがいただいた。これほど強靭な身体には、そうはお目にかかれんからな」
「返せ! お師匠様の身体を!」
「返して欲しくば、力ずくでやることだ」

 くそっ。何とかしないと。

 あたしは部屋の中を見渡した。何か使える物は……。ここで運試しをする。コロコロ。9。ギリギリ成功。でも、何も使えそうな物なんて……。

 ! 今回描写は省いていたけど、村で聞いた噂話を思い出した。魔法使いはひと組のカードから魔力を得ているのだと言う。あのカードをどうにかすれば……。

 あたしはザゴールが遊んでいたカードのもとへ走る。ザゴールもあたしの意図を察したのか、カードのもとへと急ぐ。しかし間一髪、あたしの方が早くカードに手を伸ばし、カードの束を掴み取った。

「それにさわるな! 許さんぞ!」

 うっさいっての! あたしはカードをランプの炎にかざす。

「やめろ! 頼む!」

 ザゴールは情けなく哀願を始める。ったく、それが人に物頼む態度か? あたしはカードを次々と火にくべていく。カードが消えるごとに、ザゴールもどんどん弱体化していくみたい。お師匠様の面影は消え、最後のカードを燃やし尽くしたとき、ザゴールははじめに見た、頼りない老人の姿になっていた。ザゴールは部屋の奥のドアへと逃げ込もうとしている。

 逃がすか! あたしは容赦なくうしろから斬りかかる。ザゴールも力なく反撃してくるが、魔力を失ったザゴールなどあたしの敵ではない。

「もう一度言うわ。お師匠さまの身体を返しなさい」

 ザゴールは観念したのか、力なくつぶやいた。

「扉の……奥の……箱……」

 その言葉だけ搾り出すと、ザゴールは事切れた。伝説の魔法使いも、意外とあっけないものね。

 あたしは奥のドアを試す。がちゃ、がちゃ。鍵がかかっているみたいだけど、途中で拾った鍵を使ってみたらすんなりと開いた。

 そこは薄暗い小さな部屋だった。箱って……。あ、これか。部屋の真中に低いテーブルがあり、その上に大きな箱がある。そして、その箱は3つの錠前で閉ざされている。その箱へ近づいていくと、回りから奇妙な音が起こり、部屋を満たす。箱へ近づいていくほど、その音は大きくなる。

 あたしは途中で拾った鍵を取り出す。<9>と、<99>と、<111>の3つ。それらを使って、ガチャガチャと……。

 かちり、かちり。2本の鍵はどうやら錠に合ったみたい。そして、3本目の鍵を回す。

 キャアッ。

 突然、箱から透明な液体が飛び出す。すんでのところでそれをかわしたけど、その液体があげる酸性の湯気を吸い込んでしまい、咳込んでしまう。

 あたしは呆然とその箱を見つめる。ひょっとして、鍵が、違うの……? この箱を開ければお師匠さまを助けられるかもしれない。でも、でも……。

 感情が爆発し、あたしはとっさに剣で箱に斬りつけた。しかし、剣が箱に触れる刹那、どこからか稲妻が飛んできて、剣のの束を打った。あたしはもんどりうって倒れる。砕けた剣と、少しこげた右腕を見つめ、今度こそ完全に心が折れてしまった。

 あたしは力なく、その箱に取りすがる。そして、お師匠さまのことを思い、さめざめと泣き出した。



 いきがぽーんとさけた。




 うーん。どうやら正しい鍵の位置を間違えて覚えていたみたいです。実は数ヶ月前に携帯アプリ版をやったときも間違えていて、そのときは文庫版と携帯アプリ版では正解の鍵の位置が違うのかなと思っていたのですが、違っていたのは私の記憶の方みたいです。むー。

 ラノベ風文章はマニアの心を逆なでしようという試みだったのですが、むしろ私の心が逆なでされてしまったような。慣れない文体で書いていたので、無駄に疲れてしまいました。キャラの設定が殆どなく、なおかつネタを知っていた「火吹山の魔法使い」だからまだ書けましたが、他のゲームブックだとつらいでしょうね。まあ、当分こんなことはやるつもりもありませんが。ただ、「おジャ魔女どれみ」で「さまよえる宇宙船」というのにはちょっと惹かれるのですが……。


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