さようならハドソン特集・番外編。ハドソンの看板ゲームの一つに桃太郎シリーズがあります。誰でも知っている昔話をベースとした正統派の勧善懲悪ストーリーに、ギャグやパロディをふんだんに盛り込んだユーモラスな作風が当時の小学生にヒット。シリーズの端緒であるRPGの「桃太郎伝説」シリーズを始め、アクションゲームの「桃太郎活劇」、「桃太郎電劇」シリーズ、さらに大ヒットシリーズとなったボードゲームタイプの「桃太郎電鉄」シリーズなど、多くの作品が発売されました。
そして当時の人気ゲームの常として双葉文庫からゲームブック化も為されており、原作つきからゲームブックオリジナル作品まで、桃太郎シリーズのゲームブックは実に6冊が刊行されました。そこで今回は、桃太郎シリーズ第1作である「桃太郎伝説」をゲームブック化した、「桃太郎伝説 愛と勇気のオニ退治」をプレイしました。
桃太郎シリーズで私がプレイしたのは、PCエンジンの「桃太郎伝説ターボ」、「桃太郎伝説II」、「桃太郎伝説外伝 第一集」の3作品。「桃太郎伝説ターボ」は「愛と勇気のオニ退治」の原作であるファミコン版「桃太郎伝説」の移植版で、システム面ではそれなりに改良が加えられているようですが、ストーリーはほとんど同じものとなっています。
プレイしたのはもう10年以上前なので細部はあまり覚えていないのですが、「桃伝」シリーズの印象は、「あまり欠点のない優等生的な作品」といったところですかね。ギャグは多めだし、女湯などのお色気シーンもあったりしますけど、よい子のための勧善懲悪ストーリーという基本線はまったくブレていないので、けして作品を壊すところまで行っていないんですよね。作品全体を俯瞰したときの「この作品はこういうものだ」というポリシーがしっかりしているんでしょうね。
一本芯が通っているので、当時氾濫していたドラクエライクなRPGの中では、飛びぬけて完成度の高い作品となったのだと思います。でもまあ、キレイにまとまり過ぎていて、(良い意味で、ですけど)面白味に欠ける部分もあるんですけどね。悪くない作品だけど、絶賛はできないかなぁ。
ちなみに、多くのプラットフォームで多くの作品が発表され、最もプレイ人口が多いであろう「桃太郎電鉄」シリーズは、あんまりプレイしたことがありません。ちょっと運の要素が強過ぎるかなぁということと、長期間になると飽きちゃうことから、個人的な評価はそれほど高くないんですよね。みんなで集まったときに、短時間でわっとプレイするならいいと思うんですけどね。
さて、電源ゲームの話はこれくらいにして、ゲームブックの方を進めましょう。
ストーリーはほぼ原作準拠。細部は忘れているので、クリア後にファミコン版「桃太郎伝説」の攻略サイトで確認してみたのですが、金太郎や浦島太郎、三年寝太郎にかぐや姫などの登場人物はもちろん、アイテム入手や術の覚え方など、かなり細かい部分まで原作をなぞっているようですね。原作をプレイしていれば(なおかつ、内容を憶えていれば)、ゲームブックの攻略の助けになると思います。
ただ、意図的なのか、どうなのか、一部原作とは違っている部分も見受けられます。あんまり原作の知識に頼りすぎると、足元をすくわれるケースもあるかもしれません。
行動記録紙は4ページに渡っています。
まずは双葉のゲームブックでおなじみの、0から9までの数字をAからJに割り振るバトルポイント。しかし本作ではバトルポイント表が2つあり、それぞれ別個に数字を割り振らなくてはなりません。
そしていわゆるヒットポイントである体力と、戦闘時にバトルポイントにプラスできる技ポイントのチェック。それから、金銭チェックと、お金を預けておける“といち屋”チェック、仲間になったお供のチェックと、覚えた術のチェック。後は入手アイテムと、食料であるおにぎりときびだんごのチェックです。
欄の数はそこそこ多いのですが、結局は、体力、技、金、アイテムに集約されますので、内容自体はそれほど複雑ではありません。
システム面のポイントは、戦闘システムでしょうか。戦闘では、
銀の鬼 5+バトルP(1のC)
桃太郎 技P+バトルP(2のG)
のように指示が与えられ、それぞれの合計値を比較して勝敗を決します(“1のC”とは、バトルポイント表1のCの欄の数値を意味しています。ここでは鬼のバトルポイント表が1で、桃太郎が2になっていますけど、1が鬼で2が桃太郎と決まっているわけではなく、鬼が2で桃太郎が1の場合もあり、基本的には鬼と桃太郎とで異なるバトルポイント表を使用するようになっています*1)。
技ポイントはスタート時は0ですが、戦闘で勝利を重ねることでどんどん増えていきます。しかも中盤以降は敗北=ゲームオーバーになることもありますけど、多くの場合はバトルポイントの比べ合いで負けても体力が減ったり技ポイントが減ったり金銭が減ったりするだけで、なかなかゲームオーバーにはなりません。ですので、序盤はともかく、ゲームが進んで技ポイントが増えるに従って、だんだん乱数のウエイトが減っていくんですね。
戦闘の数は多いので、勝てる戦いで着実に技ポイントを稼いでいけば、技ポイントは充分に上昇させることができます。そのため、途中から戦闘はかなり楽になりますし、なんとなれば同じ敵と何度も戦って経験値稼ぎのようなこともできます。
バトルポイント表を用いたゲームブックは、戦闘が簡便だという利点はあるものの、最初に決めた数値だけで成否が決まってしまうために理不尽さが酷く、ストレスが溜まりやすいことが多いのですが、その辺りの理不尽さはかなり緩和されていると思います。
普通にプレイしていましたが、難易度が低めでしたので、それほど苦労することもなくクリアすることができました。特に戦闘については、1箇所だけ初期設定のバトルポイントでは突破できずにゲームオーバーになってしまった所がありましたが、そこ以外では引っかかることはほとんどありませんでした。
戦闘が楽な分、ストーリーやアイテム収集などに集中することができました。アイテムの入手や罠の存在に対しては事前情報が得られることが多いですし、失敗に対して救済措置が与えられることも多いです。一部、アイテム入手が面倒くさい部分もありますけど、丁寧にパラグラフを追っていけばなんとかなる範囲だと思います。
本作の印象は、原作と同じく、「欠点の少ない優等生」という感じですかね。
偶然に左右される部分が少なく、自分で選択した行動の結果はしっかりと自分に跳ね返ってきます。頭を使わせるところは使わせますし、引っ掛けみたいな箇所もあります。それでいてい親切設計で、頑張れば誰でも最後まで辿り着くことができる。難易度が低過ぎるかもしれませんが、双葉文庫のゲームブックの中では良くできている方ではないでしょうか。
*1 ただし1箇所だけ、双方が同一のバトルポイント表を使用する場所があります。大した問題でもありませんけど、多分間違いでしょうね。バトルポイント表を2つ使用するのは煩雑ではあるのですが、1つしか使用しない場合より良い乱数が発生するはずです。
そして当時の人気ゲームの常として双葉文庫からゲームブック化も為されており、原作つきからゲームブックオリジナル作品まで、桃太郎シリーズのゲームブックは実に6冊が刊行されました。そこで今回は、桃太郎シリーズ第1作である「桃太郎伝説」をゲームブック化した、「桃太郎伝説 愛と勇気のオニ退治」をプレイしました。
むかーし、むかしのことじゃ。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきおった。
さらにビックリすることに、その桃から人間の赤ン坊が生まれたのじゃ!
子どもがいなかったおじいさんとおばあさんは大喜び。
桃太郎と名づけられたその赤ン坊は、すくすくと育っていったのじゃ。
――ところが、おじいさんたちの幸福とは反対に、
世の中はどんどん暗くなっていきおった。
地獄の底からオニどもが現われ、悪さをはじめたのじゃ。
オニは、人間たちをいじめぬき、まさにこの世はオニの天下。
こんなことではいけない!
6歳になった桃太郎は、「オニ退治」を決意した。
はたして、桃太郎は鬼ヶ島にたどりつけるだろうか?
冒険と笑いの旅がはじまった!
双葉文庫「桃太郎伝説 愛と勇気のオニ退治」表紙折り返しより
桃太郎シリーズで私がプレイしたのは、PCエンジンの「桃太郎伝説ターボ」、「桃太郎伝説II」、「桃太郎伝説外伝 第一集」の3作品。「桃太郎伝説ターボ」は「愛と勇気のオニ退治」の原作であるファミコン版「桃太郎伝説」の移植版で、システム面ではそれなりに改良が加えられているようですが、ストーリーはほとんど同じものとなっています。
プレイしたのはもう10年以上前なので細部はあまり覚えていないのですが、「桃伝」シリーズの印象は、「あまり欠点のない優等生的な作品」といったところですかね。ギャグは多めだし、女湯などのお色気シーンもあったりしますけど、よい子のための勧善懲悪ストーリーという基本線はまったくブレていないので、けして作品を壊すところまで行っていないんですよね。作品全体を俯瞰したときの「この作品はこういうものだ」というポリシーがしっかりしているんでしょうね。
一本芯が通っているので、当時氾濫していたドラクエライクなRPGの中では、飛びぬけて完成度の高い作品となったのだと思います。でもまあ、キレイにまとまり過ぎていて、(良い意味で、ですけど)面白味に欠ける部分もあるんですけどね。悪くない作品だけど、絶賛はできないかなぁ。
ちなみに、多くのプラットフォームで多くの作品が発表され、最もプレイ人口が多いであろう「桃太郎電鉄」シリーズは、あんまりプレイしたことがありません。ちょっと運の要素が強過ぎるかなぁということと、長期間になると飽きちゃうことから、個人的な評価はそれほど高くないんですよね。みんなで集まったときに、短時間でわっとプレイするならいいと思うんですけどね。
さて、電源ゲームの話はこれくらいにして、ゲームブックの方を進めましょう。
ストーリーはほぼ原作準拠。細部は忘れているので、クリア後にファミコン版「桃太郎伝説」の攻略サイトで確認してみたのですが、金太郎や浦島太郎、三年寝太郎にかぐや姫などの登場人物はもちろん、アイテム入手や術の覚え方など、かなり細かい部分まで原作をなぞっているようですね。原作をプレイしていれば(なおかつ、内容を憶えていれば)、ゲームブックの攻略の助けになると思います。
ただ、意図的なのか、どうなのか、一部原作とは違っている部分も見受けられます。あんまり原作の知識に頼りすぎると、足元をすくわれるケースもあるかもしれません。
行動記録紙は4ページに渡っています。
まずは双葉のゲームブックでおなじみの、0から9までの数字をAからJに割り振るバトルポイント。しかし本作ではバトルポイント表が2つあり、それぞれ別個に数字を割り振らなくてはなりません。
そしていわゆるヒットポイントである体力と、戦闘時にバトルポイントにプラスできる技ポイントのチェック。それから、金銭チェックと、お金を預けておける“といち屋”チェック、仲間になったお供のチェックと、覚えた術のチェック。後は入手アイテムと、食料であるおにぎりときびだんごのチェックです。
欄の数はそこそこ多いのですが、結局は、体力、技、金、アイテムに集約されますので、内容自体はそれほど複雑ではありません。
システム面のポイントは、戦闘システムでしょうか。戦闘では、
銀の鬼 5+バトルP(1のC)
桃太郎 技P+バトルP(2のG)
のように指示が与えられ、それぞれの合計値を比較して勝敗を決します(“1のC”とは、バトルポイント表1のCの欄の数値を意味しています。ここでは鬼のバトルポイント表が1で、桃太郎が2になっていますけど、1が鬼で2が桃太郎と決まっているわけではなく、鬼が2で桃太郎が1の場合もあり、基本的には鬼と桃太郎とで異なるバトルポイント表を使用するようになっています*1)。
技ポイントはスタート時は0ですが、戦闘で勝利を重ねることでどんどん増えていきます。しかも中盤以降は敗北=ゲームオーバーになることもありますけど、多くの場合はバトルポイントの比べ合いで負けても体力が減ったり技ポイントが減ったり金銭が減ったりするだけで、なかなかゲームオーバーにはなりません。ですので、序盤はともかく、ゲームが進んで技ポイントが増えるに従って、だんだん乱数のウエイトが減っていくんですね。
戦闘の数は多いので、勝てる戦いで着実に技ポイントを稼いでいけば、技ポイントは充分に上昇させることができます。そのため、途中から戦闘はかなり楽になりますし、なんとなれば同じ敵と何度も戦って経験値稼ぎのようなこともできます。
バトルポイント表を用いたゲームブックは、戦闘が簡便だという利点はあるものの、最初に決めた数値だけで成否が決まってしまうために理不尽さが酷く、ストレスが溜まりやすいことが多いのですが、その辺りの理不尽さはかなり緩和されていると思います。
普通にプレイしていましたが、難易度が低めでしたので、それほど苦労することもなくクリアすることができました。特に戦闘については、1箇所だけ初期設定のバトルポイントでは突破できずにゲームオーバーになってしまった所がありましたが、そこ以外では引っかかることはほとんどありませんでした。
戦闘が楽な分、ストーリーやアイテム収集などに集中することができました。アイテムの入手や罠の存在に対しては事前情報が得られることが多いですし、失敗に対して救済措置が与えられることも多いです。一部、アイテム入手が面倒くさい部分もありますけど、丁寧にパラグラフを追っていけばなんとかなる範囲だと思います。
本作の印象は、原作と同じく、「欠点の少ない優等生」という感じですかね。
偶然に左右される部分が少なく、自分で選択した行動の結果はしっかりと自分に跳ね返ってきます。頭を使わせるところは使わせますし、引っ掛けみたいな箇所もあります。それでいてい親切設計で、頑張れば誰でも最後まで辿り着くことができる。難易度が低過ぎるかもしれませんが、双葉文庫のゲームブックの中では良くできている方ではないでしょうか。
*1 ただし1箇所だけ、双方が同一のバトルポイント表を使用する場所があります。大した問題でもありませんけど、多分間違いでしょうね。バトルポイント表を2つ使用するのは煩雑ではあるのですが、1つしか使用しない場合より良い乱数が発生するはずです。