創土社から刊行予定のゲームブック、『ザ・タワー・オブ・ドルアーガ 悪魔に魅せられし者』の発売延期記念に、勁文社から刊行された、北殿光徳・文、スタジオ・ハード・編のゲームブック『ドルアーガの塔 外伝』をプレイ開始。
これ以降、「ドルアーガの塔 外伝」のネタバレを含んでいます。ご注意ください。
あたし、レイン・デシンセイ。国を捨てて、旅から旅への気ままな生活を送っている、20歳のか弱い女の子、兼、冒険者。
祖国に忍び寄る、悪魔ドルアーガの脅威。祖国のため、そしてあたしが密かに想いを寄せいていた王子ギルのため、あたしはドルアーガの塔の秘密を探ろうと、ドルアガノンの内部へと侵入したのだった。
苦労しながらも、あたしはようやく3階にたどり着いた。残り4フロア。先は長いけれど、くじけるわけにはいかないのだ。
あたしはぎゅっと剣を握りなおすと、気持ちも新たに階段を登った。
<冒険記録紙>
基本設定
体力 4
剣技 7
魔術 2
バトルポイント
A:5 B:1 C:0 D:4 E:6
F:9 G:8 H:2 I:7 J:3
宝物リスト
白い剣、キャンドル
階段を登りきって扉を開けると、そこからは北と西の2方向へと通路が伸びていた。地図にある扉の位置と比較してみるが、おそらく現在いる地点は、この塔の東の辺りだろう。
重要そうなポイントは西の方に集中しているようだ。あたしは西へと歩を進めた。
ガチャリ、ガチャリ。
前方から金属の触れる音が近づいてくる。
あたしは歩みを止め、暗がりに目を凝らす。
闇の中から現れたのは、漆黒の鎧の騎士、ブラックナイトだ。
……またお前かよ。
2階であたしはブラックナイトを2人倒している。もちろん中の人は違うのだろうけど、同じ階級である以上、強さがそう違うとも考えられない。
あたしは剣を構えると、ブラックナイトへと斬りかかった。
ガキン。
ブラックナイトが振るった剣をかいくぐり、あたしはヤツの胴に一撃を加えた。
手ごたえ、あり。
しかしあたしが振り返ると、驚くべきことに、そいつは胴から血を滴らせながらもまだ倒れてはいなかったのだ。
なるほど。3階にいるヤツはそれなりの力を持っているということか。
そいつはまるで腹の負傷などないかのように、猛然とあたしに突進してきた。あたしも今度こそ息の根を止めるため、剣を構えて迎え討つ。
ボカ、スカ。
ブラックナイトの剣を紙一重でかわすと、あたしは再び胴を打った。今度もまた、充分な手ごたえが両腕に残る。そしてあたしはすぐに振り返り、再度の復活に対応できるよう油断なくブラックナイトの挙動を伺う。
しかしその必要はなさそうだ。ブラックナイトは今度こそ、腹から大量の血を噴出して崩れ落ちた。あたしもそれに合わせて、全身の緊張を解く。
まったく厄介な相手だった。おそらくは、階を上がるごとに手強い敵が現れることになるのだろう。このクラスの相手がうろついているとなると、いろいろと面倒なことも多くなってくるかもしれない。今回は無事だったが、今後はなるべく揉め事は避けるよう行動するべきだろう。
あたしは剣を握りなおし、再び慎重に通路を進んでいった。
ガチャリ。
少し行ったところで、また前方の暗闇から、鎧をまとった人影が現れた。
あたしは剣に手を構え、その人影を凝視する。
!
その人物の顔を見て、あたしは仰天する。
透き通るような美しい白い肌に、形よく整った唇、そして切れ長の鋭い眼。その鎧の人物は、あたしと同じ顔を持っていたのだ。
異なるのは、あたしがイシターからもらった金の鎧を纏っているのに対して、そいつが鏡のように磨き上げられた銀の鎧を纏っていること。そして、そいつの瞳が泥のようによどみ、生気を失ってしまっているということだ。
あたしはその偽者に対して、沸々と怒りが湧き上がってきた。
そいつは高々と剣をかざすと、あたしに向って突進してくる。あたしも当然迎え撃つ。本物の力を見せてやる。
ボカ、スカ。
偽者の一撃を腕に受けながら、あたしも負けじと剣を繰り出す。そして相手の剣をかわして懐にもぐりこみ、体当たりをして一気にふっとばす。
偽者を転倒させたあたしは、肩で大きく息しながら、一旦間合いを置いた。何度か打ち合ってみたが、流石にあたしの偽者だけあって、それなりの実力は持っているようだ。悔しいけれど、これまでのところは、いい勝負と言わざるを得ない。
この偽者は、技術面でも体力面でも、あたしとまったく同等の力を持っているようだ。銀色の鎧を纏っていることからも裏付けられるが、こいつの正体は、相手の姿かたちはもちろん力量までコピーしてしまうというミラーナイトだろう。
ミラーナイトはゆっくりと立ち上がり、再び剣を手にこっちに向ってくる。しかしその足取りは多少覚束なくなってきている。あたしが疲労している程度には、あいつも疲労が溜まっているのだろう。
同じ実力ならば、後は精神力の勝負だ。あたしはあらんかぎりの気力を振り絞り、雄叫びを上げてミラーナイトへ突進した。
果てしない勝負が続く。既にお互い傷だらけで、いつ倒れてもおかしくはない状況だ。
霞みがちになる意識を、あたしは必死で奮い起こす。鉛のように重くなってしまった腕も、足も、もう動かしているという感覚すらない。
そのときだ。床にできていた血溜まりにミラーナイトが足を滑らせた。ヤツの上体がバランスを崩して、大きく揺らぐ。
チャンス!
あたしはその機を逃さずに、思いきって身体ごとミラーナイトにぶつかった。
ミラーナイトも必死に体勢を立て直して、あたしに斬りかかる。
ミラーナイトの剣はあたしの兜をかすめ、あたしの剣はミラーナイトの腹を貫いた。
あたしとミラーナイトはもつれる様に床に倒れ込んだ。ミラーナイトは見る見るうちに生気を失い、ただの木偶人形のようにのっぺらとした顔となった。きわどい勝負だったけれど、あたしはどうにか生き延びることができたようだ。
あたしは剣をミラーナイトの身体から引き抜くと、付着していた血を拭った。多くはミラーナイトのものだが、あたしの血も少なからず混じっているかもしれい。
今の激闘で、あたしの身体は全身傷だらけになってしまった。どこか適当な場所を見つけて、早く手当てをしないと拙いかもしれい。
あたしはふうと大きく息を吐くと、再び通路を進んでいった。
しばらく行ったところで、前方に宝箱が置かれているのを見つけた。箱を開けてみると、中には赤い液体で満たされたガラス瓶が入っていた。
その液体は透明度が高く、まるでルビーかと見間違うほどの輝きを持った、とても綺麗な液体だ。また、ワインのようでもあり、味も上等ではないかと思わせる。
それが安全である保障とはならないことなど百も承知だが、あたしはその薬を飲んでみる気になった。しかし瓶にはきつく封がしてあった。その封がきつすぎて、今は開けることができなさそうだ。
仕方がないので、あたしはとりあえず、その瓶をザックの中に放り込んだ。後で役立つときもあるだろう。
地図があまり当てにならないので、それから足が棒になるほど歩き回ることになってしまったが、あたしはようやく鍵を入手することができた。3階に上がってから、ブラックナイト、ミラーナイトと強敵が続いたのだが、その後は一切敵が出てこなかったのは助かった。
後は4回に上がるための扉だ。
現在位置から見て、通路は東と南の2方向へと伸びている。ここまであまり計画性もなく歩き回ったせいで、あたしのいる位置が今ひとつよくわからない。適当に、南へと進もう。
南へ行くと、捜し求めていた扉をようやく見つけることができた。ふう。これで次のステップに進むことができる。
しかし、喜び勇んで扉を開けたものの、あたしはすぐに落胆する。扉の向こうにあったのは、下の階におりるための階段だったのだ。
ここはあたしが3階に上がってきた階段とは違う場所だ。下の階なら敵も強くないだろうし、探索がてらに降りてみるのも一手かもしれない。
あたしはその階段を伝って、2階へと降りていった。
(つづく)
基本設定
体力 6
剣技 7
魔術 2
バトルポイント
A:5 B:1 C:0 D:4 E:6
F:9 G:8 H:2 I:7 J:3
宝物リスト
白い剣、キャンドル、赤い薬


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下に降りる階段とか、二股に分かれた階段とか、落とし穴
ワープとかを使って、不思議な雰囲気を生み出してま
したね。すっかり忘れてました……。(爆)
鏡の鎧に映った姿――だけで終わらせず、しっかり顔
までコピーしてるというアレンジは良いですね~。
こういうドッペル対決は好きです。
続きを楽しみにしております~。(←身勝手)
いやホント、テキトーに書いているだけなんですけどね。
そんなことができるのも、原作がいい感じにテキトーだからだと思いますが。