雑居空間
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 社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「雪の魔女の洞窟」のプレイを開始しました。

 これ以降、「雪の魔女の洞窟」のネタバレが含まれています。ご注意ください。



<現在の状況>

技術(10):10
体力(21):15
運(10):7

金貨:0
宝石:なし
飲み薬:ツキ薬
食料:10

装備:戦鎚、槍



 無事に怪しげな礼拝堂を抜けると、通路はまた丁字路になっていた。と、そのとき、左の通路から助けを呼ぶような男性の声が聞こえてくる。その声に思わず2、3歩走り出してから、不意にこれが厄介ごとの引き金ではないかという不安が頭をよぎった。しかしこの洞窟には雪の魔女の手下以外にも、先ほどの山エルフ同様、強制的に魔女に従わされている者もいるのだ。魔女の打倒はもちろん大切なのだが、そういった者たちも可能な限り救ってやらなくてはならないだろう。あたしは歩を早め、声のする方へと向かって行った。
 左の通路はやがて崖によって行き止まりになっていた。崖下を覗き込んでみると、一人のドワーフが攀じ登ろうと崖にへばりついている。崖はそれほど急峻ではなく、あたしが手を貸すまでもなく崖を登ってこられそうにも見えたのだが、そのとき頭上から無数の岩やら瓦礫やらが降り注いできた。哀れなドワーフはその岩を受けて、少しばかり下方へと滑落していく。
 頭上からは、なにやら楽しそうな歓声が聞こえてくる。どうやら雪の魔女の手下が、このドワーフを嬲って喜んでいるらしい。
「よそのお人、助けてくれないなら呪ってやるぞ。首輪もつけていないくせに」
 あたしに気がついたドワーフが、崖下からそう叫んだ。このドワーフの物言いも大概ひどいものだが、頭上にいる連中の卑劣な行いにもいい加減うんざりしていた。あたしは崖下に身を乗り出すと、ドワーフに向かって手を差し伸べた。ドワーフはにんまりと笑みを浮かべ、ゴキブリのように素早く崖を登ってくると、しっかりとあたしの腕を掴んだ。
 助けが現われたことに気がついた頭上の連中からまた礫を投げつけられるが、あたしは全霊を込めてドワーフを引っ張り、どうにか通路まで引き上げることに成功した。頭上からはひどい罵詈雑言が浴びせられるが、どうせもう連中はあたしたちに危害を加えることはできない。こちらの目論見が成し遂げられた今となっては、気持ちよくさえ感じられる。
 あたしたちはゆっくりと元の丁字路まで戻ってきた。ドワーフは助けてもらった礼を言うと、あたしに皮袋を手渡した。そして自分の村に帰らねばならないと告げ、出口のある方――すなわち、悪魔の像に祈りを捧げている連中がいる方へと進んでいく。
 あたしは彼に、出口までの道順と、これまでに遭遇した者たちについての情報を伝えた。彼もまた去り際に、「白ネズミに気をつけろ」と忠告してくれる。……白ネズミか。気をつけろと言われても何をどうすればよいのかわからないが、頭の片隅にでも止めておくことにしよう。
 ドワーフから貰った皮袋を調べてみると、中には石投げと、鉄の玉が3つ入っていた。あたしはそれを背負い袋に放り込むと、今度は丁字路を右へと進んでいった。

 通路を進んでいくと、それまで氷河をくりぬいたきらびやかなトンネルだったものが、山中へと連絡して、岩をくりぬいたトンネルへと変化した。岩肌は幾分殺風景ではあるが、氷の中にいるよりは、しっかりとした大地を踏みしめている方が多少は落ち着くというものだ。
 少し行ったところで、通路は大きな洞窟へと出た。その洞窟には出口が3つある。まずは左右に1つずつ、少し小さめの出口。そして正面には、最も巨大な、髑髏の形をしたいかにも怪しげな出口がある。やはり気になるのは髑髏の出口だ。禍々しく、いかにも何かありそうな雰囲気を漂わせている。しかし、それだけ危険も多いと考えるのが妥当な判断だろう。
 覚悟を決めて髑髏の出口に進もうとしたそのとき、その危険は向こうから先にやってきた。髑髏の出口から、のっそりと年配の男が現われたのだ。男は長いローブを身に纏い、両手にプリズムを携えている。その頭は禿げ上がり、口元には醜く引きつったような笑みを浮かべている。
「山に入ることが許されるのは、雪の魔女の直接の部下だけだ。引き返せ!」
 男はあたしにそう警告してきた。しかしそのふてぶてしい態度から、まるであたしが警告を無視して男に刃を向けてくることを待ち望んでいるようにも思われた。もちろんあたしだって、こんなところで引き返すつもりはサラサラない。男にこちらの気持ちを見透かされるのは癪だったが、他にし方も思い浮かばなかったので、あたしは剣を抜き去ると、男を叩き斬るべく一気に距離を詰めた。しかし男に斬りつけようかという直前、あたしは驚き、思わず足を止めた。男が不敵な笑みを浮かべたまま手にしたプリズムをこすると、奇妙な魔術が発動したのか、なんと男の姿が3つに分裂したのだ。3人の男はそれぞれ短剣を手にし、それぞれ一様に不気味な、いやらしい顔をあたしに向けてくる。おそらく1体だけが本物で、他の2体は幻なのだろう。しかしどれもこれも憎々しい顔をしており、その不愉快さに甲乙付けるのは難しい。
 3体の男はじわりじわりとあたしに近づいてくる。どれが本物か考えている暇はないし、考えたとしても答えが出てくるわけもない。あたしは本能に任せて、左にいる男に向かって斬りつけた。しかし剣は何の手ごたえもなく、虚しく空を裂く。そしてそれと同時に、背後から男の振るう短剣があたしの肩に突き刺さった。あたしは痛みをこらえて床を転がり、男と距離を取る。男は再び3体に分身し、からからと人を小馬鹿にしたような笑い声をあげる。
 クソッ。あたしの全身を怒りが支配した。なおも近づいてくる男に対して、あたしは3体とも同時に攻撃しようと、気合を込めて剣を横に薙ぎ払う。しかしそんな破れかぶれの攻撃が、そうそう上手くいくはずもないのだ。またも空振りしたあたしを嘲笑うように、男は短剣を、今度はあたしの利き腕である右腕に突き刺してきた。思わず取り落としそうになった剣を、必死の思いで掴み直す。くそぅ、くそぅ! あたしは混乱しながらも手近にいる男に斬りつけるが、それらもことごとく狙いを外れ、一方的に負傷箇所だけが増えていく。
 しかし、下手な鉄砲も数を撃てば当るものだ。一体何度目の剣戟だったのかは定かではないが、夢中で剣を振り回しているうちに、ようやく両腕に手ごたえを感じることができた。剣の切っ先が、本物の男のわき腹を捕えたのだ。男が悲鳴をあげて倒れ、それと同時にダミーの2体も姿を消した。こうなればこちらのものだ。あたしは男に止めを刺すべく歩み寄り、剣を振り上げる。しかし男はまたも嫌らしい笑い声を上げると、すっくと立ち上がった。しかも先ほどの傷も、きれいに消えてしまっているではないか!
 幻術で目をくらませ、ようやく斬りつけたと思ったら一瞬にして治癒してしまう。そして何より、この癇に障る下卑た笑い。これほど不快感を催すヤツに出くわしたのは、生まれて初めてだ。あたしは感情の爆発を抑えきれず、気がついたときには男に飛び掛っていた。不意を突かれた男は、またあのプリズムに手をやろうとする。
 ん? そうか、このプリズムこそが男の力の源に違いない。あたしは力任せに男を押さえつけると、プリズムを奪い取り、思い切り床に叩きつけてやった。粉々に砕けたプリズムを見た男は、先ほどまでのふてぶてしい態度もどこへやら、恐怖に顔をゆがめながら、情けなく悲鳴をあげて髑髏の出口へと逃げ出していった。
 そんな男の様子を嘲笑いながらも、男との戦いでボロボロになっていたあたしは、力なくその場にへたり込んでしまった。と、そのとき、叩き割ったプリズムから煙が立ち昇り、その煙が坊主頭の太った男の姿へと変化していく。そのプリズムには魔人が封じ込められていたのだ。
 魔人はあたしに深々と一礼をして、解放してくれたことに対して感謝の言葉を述べる。そしてその印に、魔人を呼び出せば1度だけあたしの姿を他者から見えないようにしてやろうと言ってくれたのだ。それだけ言うと、それに対してあたしが感謝の言葉を述べる間もなく、魔人は煌めく光とともにあっという間に姿を消してしまった。
 あたしは疲弊した身体を休めるため、床に腰を降ろし、食事を取ることにした。全身に負っている細かい傷も痛いことは痛いのだが、何より利き腕を負傷してしまい、うまく動かすことができないのが辛かった。傷口をきつく縛り上げて止血するが、力を込めると痛みが走る。このままでは戦闘においても、充分な力を発揮することができないかもしれない。
 まだ魔女の顔も拝んでいないのに、こんなことで大丈夫なのだろうかと、少し不安がよぎる。だが、不安は失敗を避ける役には立つが、成功を呼び込むことはけしてしてくれないことを、あたしは経験則から知っている。今はとにかく前に進むしかないのだ。気力を振り絞って重い腰を上げると、あたしは正面にある髑髏の形をした出口へ向かって歩を進めた。

 通路はほどなくして、またもや広い洞窟に出た。そこには立派な白いひげを蓄え、白い毛皮を着込んだ、全身白ずくめの格好をしている巨人が立っていた。どうやら木製の箱を高い位置にある棚に納めようとしているところらしい。
 あたしは巨人の様子をじっと窺う。その巨体から判断して、戦ったらけして無事で済む相手ではないだろう。正直なところ、先ほどの戦闘でだいぶ消耗してしまっているので、できることなら無駄な戦いは避けたいところだ。幸いなことに、巨人はまだあたしの存在には気がついていないようだ。ここは穏便にやり過ごすことにしよう。
 周囲に目をやると、出口はこの洞窟の反対側に、ひとつだけ存在している。巨人が箱を棚に乗せようとしたまさにそのときの狙って、あたしは通路から素早く飛び出した。なるべく音を立てず、なおかつ迅速に洞窟を横切ると、巨人があたしに気がついたかどうかも確認しないまま出口に飛び込み、後ろも振り返らずに通路を駆け続けた。

 随分と走ったところで、ようやく速度を落とす。後方を確認するが、巨人が追ってくる気配はない。もう大丈夫だろう。
 気がつくと、通路が十字路になっているところに出ていた。さて、どちらに行こうかと思案しようとしたのだが、どうやら雪の魔女はそんな暇も与えてはくれないようだ。正面の通路から不気味な人影が現われたのだ。そいつの身体は、全身が光り輝く石英でできている。まともな生物ではない。雪の魔女によって生み出された、魔法生物なのだろう。
 こいつの身体を考えたら、もしかしたら普通の剣では歯が立たないかもしれない。あたしは猟師の小屋から失敬してきた戦鎚を取り出すと、それを力いっぱい振り回した。痛む右腕をかばいながらだったが、うまいこと肩口に命中し、その身体を傷つけることに成功した。よし、この戦鎚ならば、なんとか太刀打ちできそうだ。
 しかしこの相手は、並の戦士ではなかった。何度かラッキーヒットをお見舞いすることはできたのだが、スピード、パワー共にあたしの技量を圧倒しており、あたしはみるみるうちに窮地に追い込まれてしまった。
 いよいよあたしの体力も風前の灯火となった。しかしヤツもあと少しで倒れるはずだ。不利な戦いであることは承知しているが、僅かな勝ち目に全てを賭け、あたしは最後の力を振り絞って戦鎚を振るった。しかし、この一撃がヤツの身体に届くことはなかった。あたしは胸に深々と突き刺さった剣を抱きながら、冷たい洞窟の床へと沈み込んでいった。

(おしまい)



 元々技術がそんなに高くなかったのに加えて、幻術士のところで2下がったのが効きましたね。運試しも多くて、能力値の低下がきつかったです。敵も強いのが多かったですしね。
 次は能力値マックスでプレイしようっと。



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