富裕な市シルバートンには、夜になると恐怖が忍びよる。
ザンバー・ボーンの手下、血に飢えたムーン・ドッグが人々を殺しに来るのだ。
君の任務は、盗賊都市ポート・ブラックサンドに潜入し魔術師ニコデマスに会い、ザンバー・ボーンを倒す秘密を聞き出し、彼を難攻不落の要塞で殺すことだ。
君は、必要なものをすべて入手できるか?
イアン・リビングストン「盗賊都市」(現代教養文庫)裏表紙より
「魔人竜生誕」をちょっとほっぽって、社会思想社刊、イアン・リビングストン著のゲームブック「盗賊都市」をプレイ開始。
以下、猛烈な勢いでネタばれしてますのでご注意ください。
まずはサイコロを転がしてキャラメイク。
技術(9):
体力(22):
運(10):
食料:10
装備:ツキ薬
うーん。なんかフツー。
あたし、レイン・デシンセイ。19歳。か弱い女の子兼、凄腕の剣士やってます。これまでも火吹山に挑んでくたびれもうけをしたり、バルサス・ダイアの砦に忍び込んでガンジーに追い掛け回されたり(あたし、何で生きてるんだろう?)、いろいろと修羅場を潜り抜けてきているのだ。まあそんなんでも一応は名前が売れるみたいで、この地方ではそれなりに有名人になっているみたい。酒場でも冒険譚の一つもでっち上げれば結構ウケるのよ、これが。まあ、事実が1割、フィクションが9割ってところだけどね。娯楽に飢えた大衆には、それくらいでちょうどいいんだけどね、実際。
そんなこんなで、その日暮らしに放浪しているあたしですが、シルバートンという市に流れ着いてきたのです。ここは辺境ではありますが、交易ルートが交差するポイントでもあるのでそれなりににぎわっています。いや、にぎわっているはずなのですが、と言っておこうかな。雰囲気がおかしいのよ、なんか。じめじめしているって言うか、ぴりぴりしているって言うか、とにかく大きな市のそれじゃないのは確かね。
その雰囲気に引きずられて、あたしもなんだかカビが生えたみたいに重い足取りで通りを歩いていたんだけど、突然鐘の音ががんがんと響いてきました。
「夜だ! 夜だ! みんな家の中へ!」
なによ、一体。確かに暗くはなってきているけど、そんなに慌てることもないじゃない。
まあ、でもあたしには関係のないお話なわけで。ともかく目の前にあった<老いたヒキガエル>という居酒屋に入ってみました。
しかし、その居酒屋の中もやっぱり変。外と同様に妙にどんよりとしているって言うか、普通はあたしみたいな冒険者がやってきたらみんな旅の話を聴くために寄ってくるもんなのに、ここの人たちときたらちらちら視線を投げるばかりで一向に寄ってこない。むぅ、これじゃカッコつけらんないじゃない!
とりあえずここの親父に部屋と風呂とをオーダー。全部で銅貨6枚だと言うので財布をジャラジャラかき回していると、扉をどんどんと叩く音が聞こえてきました。
「開けてくれ! 開けてくれ! わたしはオウエン・カラリフだ」
何? あたしは扉の方を見やる。ここの親父さんが扉を開けると、赤いローブを纏った禿げたオッサンが転がり込んできました。
ここで好奇心を存分に発揮してしまうのがあたしの悪い癖。いや、冒険者としてはOKなのかな? ともかくオッサンをじろじろ見ていたら、思わず目が合っちゃったわけですよ、これが。
「旅のお方よ、ぜひとも相談したいことがある。どうかすわってくだされ。きわめて重大な用件なのだ」
するとそのオッサンはパチンと指をならして食べ物をオーダーしちゃいました。なんかこのオッサン、それなりの顔役みたい。ちょっと無碍にもできなささそうね。何より,目の前に並べられた料理に負けました。あたしはとりあえず、このオッサンの話を聴くことにしました。
ガツガツ、むしゃむしゃ。
あたしは目の前の料理をたいらげることに専心していました。どうせろくでもない話に違いないんだから、もらえる物はさっさと頂いておくに限ります。
で、人心地がついたところで、ビジネスのお話が始まりました。彼の名前はオウエン・カラリフ、このシルバートンの市長だそうで。彼曰く、10日前にこの市に悪魔の使者がやってきて、彼の娘ミレルを奴らの主人であるザンバー・ボーンに差し出せと要求してきたそうです。もちろんオウエンさんは断ったのですが、その代償として、ザンバー・ボーンは6匹のムーンドッグを差し向け、市の人々を殺して回ったそうなのです。犬は毎晩やってきて、市民を襲いつづけます。オウエンさんの娘さんを差し出せば事態は収拾するかもしれないけれど、それだけは絶対に飲めない。どうかあたしに、この厄介ごとを解決して欲しいと、そう依頼されちゃったわけなのです。
正直、娘を差し出せよと思わないでもないですけど、ここは歴戦の勇者として、断るわけには参りません。ここはドンと胸を叩いて、一丁あたしに任せなさいといってやりましたよ。あたしはこう見えても、凄腕の冒険者なわけですからね。
オウエンさんが言うには、ザンバー・ボーンに対抗するためには、『盗賊都市』という異名を持つポートブラックサンドに住む、ニコデマスに力を借りよとのことでした。ニコデマスはオウエンさんの旧友で、とにかく彼をここまで連れてきて欲しいそうです。
あたしは力強くオウエンさんにうなずき返します。ま、どんとこい、てなもんですよ。
あたしは旅費として金貨30枚を受け取り、ついでに素晴らしい剣を一振りもらいました。この剣、本当に鋭く、素晴らしい出来栄えです。剣に惚れたのは、あたし初めてかもしれない。こんな剣をもらっちゃったら、もう断るものも断れないわ。
その夜はムーンドッグがさまよう音が気になりましたけど、それでも準備万端怠りなく、ムーンドッグが退散した夜明けにはすっかり旅立つ支度は整いました。あたしはポートブラックサンドへ向けて、第一歩を踏み出したのです。
と、足元を黒猫が通り過ぎて、あたしは思わずこけそうになってしまいました。これは悪い予兆なのか、それとも役払いなのか。黒猫が横切るのが不吉だなんてあたしは迷信だと思っているけど、大仕事の前だけにちょっと気になりましたが……、いやいや、あたしが頼るのはあたしの腕のみ。猫のことは忘れて、改めて第1歩を踏み出すのでありました。
(つづく)
<現在の状況>
技術(9):
体力(22):
運(10):
食料:10
金貨:30
装備:ツキ薬
イントロ長いよ、リビングストン。


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