きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

出血時間と止血法

2023年01月20日 | ヘルスリテラシー
毎日、病院の採血室のフロアーマネージャー的な仕事をしていますが、針を刺したら血が出る・・・ということを知らないの?と疑いたくなる大人が多いのでビックリしています。

誰でも、生涯に一度なりとも、「出血」を経験していると思います。

ころんで膝をすりむけば、ヒリヒリして血がにじみます。
誤って包丁で指を切ったり、裁縫中に針を刺してしまえば、血が出ます。
鼻をほじくりすぎて、粘膜を傷つけてしまえば、鼻血が出ます。

出血したら、その部分を軽く圧迫をすれば、擦り傷程度であれば、通常は5分以内に必ず血は止まります。
専門的には「出血時間」といいます。
生体内で血小板や凝固因子が働いて、血が固まるまでに要する時間のことです。


採血や注射の際には、絆創膏を貼っただけでは止血されにくいので、針を抜いた瞬間から指で圧迫をするのがコツです。


そう申し上げているのに、正しく止血ができずに、だらだら出血させて、「血が止まりませーん」と腕を差し出してくるだけの人のなんと多いことか。

基本的な「からだのしくみ」の知識がたりないのかもしれないなあ、と思いました。

ある世代までは、学校での保健学習がおろそかにされてきたツケでしょうか?
それにしても・・・・!!です。


路上で何者かに刺されて亡くなった・・・なんていう事件をきくと、犯人がまだその辺にいるかもしれないという恐怖とか、いったい何が起こっているのか即座には理解できなかったりだとか、現場にいてみないと実際のところはわからないけれど、亡くなった原因が大量出血ときくと、止血さえしていれば、ひょっとしたら助けられたケースもあるかもしれないと、残念に思います。

血が出たら、とにかく出ている場所を圧迫するのが基本です。

その際は、きれいなガーゼやハンカチ、タオル、緊急時に手元にそのようなものがなければ、とりあえず、マスクやマフラーでもいいです。

自分以外の人の血液は、素手では触らないほうがいいので、本人に押さえさせるか、手袋やビニール袋などを介して、出血ポイントを見極めて、しっかりと押さえるようにしましょう。

鼻血はたいてい、鼻の穴の入り口の内側に毛細血管が集った場所(キーゼルバッハ部位)があり、そこから出血することが多いので、鼻をつまむようにして圧迫するとよいです。
上を向くと、血液がのどにまわってしまうので、普通にしているほうがいいです。
ティッシュをつめると、そのティッシュをはずすときに、止血してできたかさぶたまで一緒にはがしてしまって、再び出血させてしまうことがあるので、注意が必要です。

鼻炎などのときの出血は、粘膜全体の浮腫が原因だったりするので、強く鼻をかんだりして、刺激しないようにするといいと思います。


採血室の隣の男子トイレは、時々自動ドアだと勘違いして、ずっとドアの前で待っている患者さんがいるのが気になったので、ドアを押したくなるように、イチゴ付きの押すマークをつけました!


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