きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

タバコの味(その2)

2019年05月23日 | Switter
「その薬を飲むと、タバコだけじゃなくて、食べ物もおいしくなくなるんですか?」


禁煙講話で、聴講者から禁煙補助薬チャンピックスについて質問されました。(※)




タバコを吸ったときの感覚を、「おいしい」と、味覚に置き換えて表現した最初の人は誰なのでしょう?
考えてみると、これはスゴイことです。


たぶん、広告会社の人の、ブレイクスルーな発案で生まれたキャッチコピーが発端となって、人々に浸透していったのでは?
・・・そんな気がします。




美味しいとか不味いとか、そういう「味覚」は私たちが持っている五感のひとつです(五感:味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚)。

味には基本の五味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)というのがあって、主に舌に分布している味蕾にある受容体で化学的刺激がおこって、それが脳へ神経伝達されて、私たちは味を感じています。


タバコを吸ったときの感覚は、正確に言えば、この「味覚」という感覚によるものではありません。


喫煙者(ニコチンに依存している人)は、煙(加熱式タバコの場合はエアロゾル)に含まれるニコチンが、脳内の受容体に結合し、ドパミンが放出されることで、「いわゆる快感」を得ています。

その「快感」を、人はそれぞれ、「スッキリ」「ホッとする」「落ち着く」「緊張がとける」「ガツンとくる」「気力がわく」「シャッキリする」「気分転換」等々、表現しているわけです。


このように、タバコを吸ったときの感覚を、精神的な変化として捉えた言葉で表現すると、より一層「薬物」としてのイメージが強くなりますね。


そうすると、初めてタバコにトライしようという時に、少し躊躇する人がいるかもしれませんね。


でも、いったん身近な「味」という言葉で表現してしまえば、だれでも気軽に「ちょっと味見」しやすいですね。

実際に子どもたちは「どんな味がするのだろう?」と興味を持っています。



嗚呼、なるほど、そういうことなんですね!!



喫煙で得られる感覚を最初に「おいしい」と表現することを考えついた人、まったくスゴイです。
あっぱれ!と言わざるを得ません。


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※チャンピックスは、脳内のニコチン受容体にくっつく薬です。
それにより、ニコチンが受容体にくっつけなくなって、喫煙による報酬感が得られなくなって(人によっては、おいしくないと感じる)、禁煙を助けるという仕組みです。
ですから、食事までおいしく感じなくさせることはありません。
むしろ禁煙すると、喫煙によって鈍感になっていた味覚や嗅覚が回復して、おいしく食べられるようになります。
でも食べすぎには注意!




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