ニュースでは、「まずはじめに新型コロナウイルス関連です」というのが常套句となり、感染者数や死亡者数が読み上げられるのが通例となりました。
そんな数字を見ると気持ちが落ち込んでしまうので、新聞もテレビもネットも、コロナ関連のものをなるべく見ないようにしていた時期がありました。
かつてない緊急事態を経験しているあいだにも季節は巡り、気づけば5月も終わろうとしています。
5月の終わり・・・といえば、「世界禁煙デー」です。
世界保健機関(WHO)が5月31日を世界禁煙デーと定めたのは・・・1989年。
おおっと、私が医師になった年です!
とても運命を感じます。
毎年この時期には、WHOのホームページでスローガン(標語)を確認しています。
今年のスローガンは「The secret's out」、直訳すると「秘密は暴露された」です。
タバコ会社は子供や若者をターゲットにして、販売戦略を練り、莫大な広告資金を投入しています。
その販売戦略は実に巧妙で、さまざまな広告媒体を使って、未成年者をニコチン依存症という病気にかからせ、自社を裏切らない顧客とし、結果として自分達の私腹を肥やし、若者たちの明るい未来を奪おうとしています。
その黒い戦略方法を子供達に理解させ、彼らが正しい選択をできるように教育を推進していきましょうということが、このスローガンには込められているのです。
私も常々タバコ会社の販売戦略について最新のものをリサーチし、喫煙防止教室で子供達に紹介してきました。
子供達の授業後の感想文に「詐欺だ!」「許せない!」「だまされないぞ!」といった言葉が書かれているのをみると、授業をやってよかったと心から思います。
最近のタバコ広告のトレンドは、やはり電子系タバコですね。
若者が好むような様々なフレーバーが加えられています。
またネットでは、多くのファッショナブルなバリエーションの柄が売られていて、そんなサイトを見ていると、スマホの着せ替えカバーを選んでいる錯覚におちいります。
また、電子タバコ系広告では主に「臭くない」とうたっており、外出自粛が続くなか、「自宅で吸っても家族に文句言われないから安心」といった内容の文言が並びます。
でもねえ、臭いんですよ、やっぱり。
臭くないと思っているのは、吸ってる人だけです。
禁煙外来でも、診察室がすごくタバコ臭くなって困ることがあります。
受診前に「これで最後・・・」と、思いっきり吸ってくる方がたまにいらっしゃるからです。
さて、5月26日現在、新型コロナ感染症による世界の死亡者数は34万人を越えました。(ジョーンズ・ホプキンス大学集計)
いっぽう、タバコが原因で亡くなっている方は、世界で年間800万人以上といわれています。(WHO)
そのうち120万人は、受動喫煙による死亡です。