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文は人なり

2024年09月15日 18時41分17秒 | 一言
 文は人なり。18世紀フランスの博物学者ビュフォンのことばとして知られています。文章を見れば書き手の人となりがわかる、という意味です。
 96歳まで書き続けた英文学者でエッセイストの外山滋比古(とやま・しげひこ)さんは、ことばの表現は心であって、技巧ではないといいます。文は人なり、を引きながら、文章に上達するには、心を練る必要があると。
 外山さんは著書『知的文章術』の中で文章を料理に例えています。食べる人のことを思い、中身を考え、おいしく食べてもらう。文章も、何が言いたいのか、読む側にはっきりと伝える。相手の関心をひく“おもしろさ”も足して。
 昨今はメールやSNSの普及で文章を書くことが増えています。手軽さの一方で真意が伝わらず誤解をうんだり、うまく意思疎通ができなかったり。また、みずからの考えや意見を正当化するために相手の人格を否定し、誹謗(ひぼう)中傷する書き込みが社会問題にもなっています。
 ことばや文章は相手を傷つける刃(やいば)にもなります。外山さんはそうした風潮を嘆きながら、ことばを見直し、新しい文化をつくろうとする動きもあると。「心のはたらきをよくする、賢いことを考えるためのことばが必要であると感じる人たちが、静かに動き出しているようである」。
 文章をよくするには推敲(すいこう)も欠かせません。唐の詩人、賈島(かとう)が「僧は推す月下の門」という自作の詩句について「推す」を「敲(たた)く」とすべきか苦慮したとの故事にもとづきます。これを怠ると思わぬ間違いも。自戒を込めて。


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