真相解明へ証人喚問が不可欠
自民党派閥の裏金づくりの実態解明に向けた参考人聴取で、旧安倍派の会計責任者だった松本淳一郎氏は、政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分をキックバック(還流)する慣行について「違法行為をやっている認識はあった」と認めました。派閥幹部の証言との食い違いもあらためて明白になりました。事件にかかわった幹部らの証人喚問がいよいよ不可欠です。
■ある幹部とは誰か
旧安倍派では2022年4月の幹部会合で還流中止が決まりましたが、その後、再開されました。松本氏への聴取では、いったん中止された還流が再開された経緯の一端が新たに明らかになりました。
松本氏は、同年7月の安倍晋三元首相の死去後、「ある幹部」が還流再開を要望し、8月の会合で再開が決定されたと述べました。松本氏は「本来なら(政治家)自身が話すことだ」として、「ある幹部」の名前はあげませんでしたが、「現職の議員ではない」と証言しました。
8月の会合には、現職の西村康稔氏、世耕弘成氏、現在落選中の下村博文氏、政界を引退した塩谷立氏が出席していました。松本証言に従えば下村氏か塩谷氏のどちらかになります。下村氏は取材に対し、派内から還流再開を求める声が寄せられ、松本氏に伝えたと明らかにしました。
また、松本氏は8月の会合で「意見の対立はなかった」と発言。還流再開について「私は事務局であり、方針を決定する権限はない」「やらざるを得ない状況だった」と述べました。衆参両院の政治倫理審査会の弁明では3人の幹部が8月の会合では還流再開の結論が出なかったとしており、松本氏の証言との食い違いは明白です。
一方、肝心の裏金づくりをいつ、誰が何のためにはじめ、何に使われたかについては明らかになっていません。
■慣例に従った方法
松本氏は、裏金づくりについて「前任の事務局長からこういうやり方をやっていると聞いた」と発言。参院改選期のパーティー券販売の全額還流についても「これまでのやり方を踏襲した」と述べました。
裏金づくりが20年以上前から行われていたとの指摘には、「可能性としてはあった」と証言しました。松本氏が19年に会計責任者を務める以前から、旧安倍派で違法行為が組織的に行われてきたことは重大です。派閥の会長だった森喜朗元首相を含め、裏金づくりの実態を知る人物がいるはずです。
聴取では、裏金づくりを始めた政治家の責任と、還流再開での幹部の関与が明確になりました。衆参両院の政倫審での幹部の発言が虚偽であった疑いも濃厚です。松本氏は、政治家が責任をすべて松本氏に押しつけているのではないかと問われ、「不思議だなと思った」と答えています。
真相解明をするためには、出席や答弁を拒否できず、虚偽の証言を行えば偽証罪に問われる証人喚問で関係者をただすしかありません。証人喚問は国会の国政調査権の一環です。国会は国権の最高機関として、国民を代表し、事件の真相を明らかにする責任があります。
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