民意が動いた
― 参議院夏の陣 -
今回の参議院選挙において、与党自民党が大敗し、民主党が参議院において第一党になった。参議院自民党幹部の内、幹事長は落選し、有権者の審判が下され、参院会長など幹部が辞任する一方、安倍総理・自民総裁は敗北の責任を認めつつも、「人心一新」を図り、政権の継続を表明しているが、党内外から総理・総裁の責任論が出されている。
確かに「人心一新して、政権を全うする」ことも一つの政治的選択であり、また総理・総裁の責任論も当然予想されたことだ。しかし、どうも「政権継続論」も、「責任論」も党内の派閥次元の議論でしかなく、今回の選挙で有権者が何に「ノー」と言い、何を期待しているかなどの、反省や「民意」の読み方に欠けているように見えて仕方が無い。
1.密室政治か選挙による民意反映か
与党が参議院で過半数割れになった場合の安倍政権の責任については、選挙前より、自民党幹部が参院選は「中間評価」であるので、辞任の必要はないとの発言がしばしば見られ、また、選挙結果の大勢が明らかになった段階で、一部の自民党幹部とも協議したと伝えられており、その上で「人心一新による政権維持」が表明された。その後、総理経験者も「政権維持」を支持する旨表明する一方、「人心一新」については、「挙党一致体制」による内閣とするよう注文が付けられている。要するに、従来通りの派閥推薦に基づく「派閥均衡人事」の待望論と映る。
総理退陣、政権交代論も、総理を連続3人出し、一人勝ちしている町村派(旧森派)に対し、壊された旧最大派閥その他の派閥を中心として出されているものであり、派閥順送りの総理・総裁へのノスタルジーからではないか。総理が退陣し、与党内での政権交代となれば、また旧態依然の密室政治に逆戻りする恐れが強く、民意が置き去りにされることにもなる。
2.安倍政権、政権与党への「お灸」か、政党選択か
今回の参院選の特徴は、無党派層の過半数以上が政権与党ではなく、主として民主党を中心とする野党を選び、参議院の第一党の地位を民主党に与える結果となっていることだ。また、事前の世論調査で自民支持としていた有権者も、相当数が民主党支持に回っている。連立与党の公明党も議席を減らしており、自民支持層を取り込めなかったと言える。自民党への「お灸」であれば、票は、公明党や野党少数党に向かうこともあるが、今回の参院選では少数党は伸びておらず、最大野党の民主党に参議院における第一党の地位を与える結果となっている。
「民意」が動いた。特に無党派層の多くが、少数野党ではなく、民主党に投票し、自民・民主の2大政党の勝敗を決定的にし、無党派層が政党選択のキャスチング・ボートを握った形となった。従って、今回の結果は、安倍政権や与党への単なる「お灸」では無く、有権者は、参議院の第一党として民主党を選択したと見ることが出来る。2大政党制による政権交代を期待しているか否かは直ちには判断できないが、それを容認する結果となっている。
従って、今回の選挙においては、安倍総理・総裁への批判だけではなく、与党の長期に亘る政権運営に対する不支持が出されたと言える。だとすると、現在の与党の下で総理を入れ替えても、国民の批判に耐え切れない可能性がある。ましてや内閣改造による「人心一新」では党内だけでなく、世論も収まらない可能性がある。その批判は、単に年金の記録漏れ問題や辞任した赤城農水大臣の「ばんそこ」問題への反感などと言う矮小化された現象に向けられているだけではなく、これらに象徴される長期に亘る行政に対する監督責任や政治の透明性、公正さなどに向けられていることを認識すべきなのであろう。民主主義政治にあっては、民意に鈍感であってはならない。
安倍政権は、小泉前政権を引き継いだもので、衆議院選挙で直接の審判を受けてはいない。国民は、参議院選挙において政権与党にいわばレッド・カードを出した。現与党が政権を継続するのであれば、早い時期に民意を問うべきなのであろう。自民と民主の連立も考えられないことはないが、その選択肢は日本の民主主義の健全な発展にとって悲劇となろう。
他方、民主党自体も、他の野党等の協力も得つつ、国民の期待に応えられる具体的な政策や安定した政権運営能力を示し、結果を出して行かなくてはならない。
― 参議院夏の陣 -
今回の参議院選挙において、与党自民党が大敗し、民主党が参議院において第一党になった。参議院自民党幹部の内、幹事長は落選し、有権者の審判が下され、参院会長など幹部が辞任する一方、安倍総理・自民総裁は敗北の責任を認めつつも、「人心一新」を図り、政権の継続を表明しているが、党内外から総理・総裁の責任論が出されている。
確かに「人心一新して、政権を全うする」ことも一つの政治的選択であり、また総理・総裁の責任論も当然予想されたことだ。しかし、どうも「政権継続論」も、「責任論」も党内の派閥次元の議論でしかなく、今回の選挙で有権者が何に「ノー」と言い、何を期待しているかなどの、反省や「民意」の読み方に欠けているように見えて仕方が無い。
1.密室政治か選挙による民意反映か
与党が参議院で過半数割れになった場合の安倍政権の責任については、選挙前より、自民党幹部が参院選は「中間評価」であるので、辞任の必要はないとの発言がしばしば見られ、また、選挙結果の大勢が明らかになった段階で、一部の自民党幹部とも協議したと伝えられており、その上で「人心一新による政権維持」が表明された。その後、総理経験者も「政権維持」を支持する旨表明する一方、「人心一新」については、「挙党一致体制」による内閣とするよう注文が付けられている。要するに、従来通りの派閥推薦に基づく「派閥均衡人事」の待望論と映る。
総理退陣、政権交代論も、総理を連続3人出し、一人勝ちしている町村派(旧森派)に対し、壊された旧最大派閥その他の派閥を中心として出されているものであり、派閥順送りの総理・総裁へのノスタルジーからではないか。総理が退陣し、与党内での政権交代となれば、また旧態依然の密室政治に逆戻りする恐れが強く、民意が置き去りにされることにもなる。
2.安倍政権、政権与党への「お灸」か、政党選択か
今回の参院選の特徴は、無党派層の過半数以上が政権与党ではなく、主として民主党を中心とする野党を選び、参議院の第一党の地位を民主党に与える結果となっていることだ。また、事前の世論調査で自民支持としていた有権者も、相当数が民主党支持に回っている。連立与党の公明党も議席を減らしており、自民支持層を取り込めなかったと言える。自民党への「お灸」であれば、票は、公明党や野党少数党に向かうこともあるが、今回の参院選では少数党は伸びておらず、最大野党の民主党に参議院における第一党の地位を与える結果となっている。
「民意」が動いた。特に無党派層の多くが、少数野党ではなく、民主党に投票し、自民・民主の2大政党の勝敗を決定的にし、無党派層が政党選択のキャスチング・ボートを握った形となった。従って、今回の結果は、安倍政権や与党への単なる「お灸」では無く、有権者は、参議院の第一党として民主党を選択したと見ることが出来る。2大政党制による政権交代を期待しているか否かは直ちには判断できないが、それを容認する結果となっている。
従って、今回の選挙においては、安倍総理・総裁への批判だけではなく、与党の長期に亘る政権運営に対する不支持が出されたと言える。だとすると、現在の与党の下で総理を入れ替えても、国民の批判に耐え切れない可能性がある。ましてや内閣改造による「人心一新」では党内だけでなく、世論も収まらない可能性がある。その批判は、単に年金の記録漏れ問題や辞任した赤城農水大臣の「ばんそこ」問題への反感などと言う矮小化された現象に向けられているだけではなく、これらに象徴される長期に亘る行政に対する監督責任や政治の透明性、公正さなどに向けられていることを認識すべきなのであろう。民主主義政治にあっては、民意に鈍感であってはならない。
安倍政権は、小泉前政権を引き継いだもので、衆議院選挙で直接の審判を受けてはいない。国民は、参議院選挙において政権与党にいわばレッド・カードを出した。現与党が政権を継続するのであれば、早い時期に民意を問うべきなのであろう。自民と民主の連立も考えられないことはないが、その選択肢は日本の民主主義の健全な発展にとって悲劇となろう。
他方、民主党自体も、他の野党等の協力も得つつ、国民の期待に応えられる具体的な政策や安定した政権運営能力を示し、結果を出して行かなくてはならない。