内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

2009-04-25 | Weblog
シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

2009-04-25 | Weblog
シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

2009-04-25 | Weblog
シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

2009-04-25 | Weblog
シリーズ過剰反応―日本漢字能力検定協会の過剰料金、過剰利益問題

日本漢字能力検定協会が「公益法人」として認可されていながら、過剰な利益を挙げている上、ほとんどの資料等の発注が理事長や息子(副理事長)が経営している会社になされており、営利事業に近い事業活動がなされていたことが明るみに出た。
漢字検定の受験者は、最近のクイズ番組ブームや首相の誤読報道などで関心が高まり、2007年の受験者は270万人にも達している。にも拘わらず、上級に行くほど高くなる検定料は1級となると5,000円に設定されたままであるので、収入が大幅に膨らんだ。本来であれば、受験者が増えればコスト・ダウンも図れるので、漢字普及と漢字能力の向上という公益性から、料金を下げ、受験し易いようにするのが筋であろう。
そもそも「検定事業」は、漢字検定に限らず、国に代わって行う性格が強く、公益性は高い。日本漢字能力検定協会が漢字への関心を高め、普及した実績は評価して良いのであろう。年末に行われる清水寺での「今年の漢字」は、漢検が選択しており恒例になっている。08年を象徴する漢字は「変」であり、その前は「偽」であった。その年を象徴する漢字として興味深いが、皮肉なことに、漢検自体が「偽」であり、「変」であったことが明らかとなった。自分のことはなかなか分らない「他人事」であったのか、反省が足りなかったのか。
現在、前理事長・副理事長など前執行部の責任問題に焦点が集中しているが、過剰な反応が重要な問題から目をそらせる結果を招いている。旧役員は、「公益法人」としてのあり方を越えた「過剰利益、過剰利得」を得ていたということであるが、利用者が割高の検定料を支払わされ、利益の還元が行われなかったという以外に誰も過大な被害を受けたわけではない。また協会を「私物化」しているとの批判があるが、財団にせよ社団にせよ、その多くは特定個人やグループが出資した基本財産により設立され、役員もそれらの者が中心に運営されていることが多く、事業内容に公共性が高いか、営利性が無いかで判断される。重要なことは、可能な範囲で過剰利益・利得を回収することと利用者への利益の還元であろう。
もっとも漢字能力の普及は重要なことであるが、公的な「検定」が必要である否かは疑問であり、また、漢字能力を伸ばすための各種の教材、電子機器や習字塾など多くの機会があるし、漢字能力に等級を付ける実体上のメリットもないので、「検定協会」を廃止することも一つの選択肢としてあろう。また、「協会」組織を特定の個人、グループに任せないで、国語教材関係企業・団体を含めたより普遍的な組織に改編することも考えられる。しかし、いずれにしても「検定」事業を続けるのであれば、次の点が考慮されなくてはならないのであろう。
1、検定料の大幅な引き下げー利用者への利益還元
まず事業コストをカバーする程度に料金を大幅に引き下げるべきであろう。本来であれば、受験者が大幅に増加し、過剰利益が出始めた段階で検定料を引き下げ、利用者へ利益を還元して行くべきであった。公益法人であっても、利益を出す努力は評価すべきであるが、その利益を利用者、ユーザーに還元することが求められていると言える。本来であれば、監督官庁が年度末に提出される事業報告書などに基づき過剰利益を指摘し、値下げなどを指導すべきであったのであろう。しかし、多くの場合報告書は回覧された後、担当官のファイルに眠ってしまう。
同様のことがその他の公益法人でも起こっている可能性があるので、点検、監督の徹底が望まれる。また、事象的にはNHKなどについても類似のことが起こっている。高度成長期の70年代以降、テレビが飛躍的に普及し、受信料収入が6,500億円前後になり、本来であれば「公共放送」の観点から可なりの部分が値下げとして視聴者に還元されることが望ましかった。しかし事業拡大の方向に流れてしまったことにより、「公共放送」の肥大化と視聴者への負担継続という結果を招いている。テレビ受信契約は、68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。各種の要因で1人世帯が増える中で、1人当たりの受信料の負担は増加していること、及び外国放送を含むテレビ番組の多様化などを勘案すると、受信料と共に「公共放送」のあり方も問われていると言えよう。事業計画を承認する国会の責任も問われよう。
2、事業決算報告書の開示と会計監査の徹底
 公益法人はその公益性から、補助金団体と共に、例えば年間事業費1千万円以上の団体については全て、決算報告書を開示、公表すべきであろう。
 また例えば年間事業費1億円以上の事業については、余剰利益の額を例えば1~3%以内に限定すると共に、公認会計士による監査を義務付けるなど、公正さと透明性の向上を図ることが望まれる。
3、資機材調達など、外注(アウトソーシング)の原則公開入札の徹底
 漢検協が各種の調達、印刷等を身内企業に割高の価格等で外注し、2重に利益を得ると共に、協会側には過剰コストを強いる結果となっている。
 アウトソーシングは、行政当局が政府関連機関に行い、また各政府関連機関も幅広く関連企業、団体等に行っているところであり、それ自体が問題ということではないが、公開入札にしないと割高の恣意的外注となる等の弊害が生じる可能性が強い。
 従って公益法人についても、例えば年間5百万円を越える調達については原則公開入札にすることが望まれる。
 もとより政府関連機関を含め、全ての政府関係事業については原則公開入札を徹底すべきであろう。
4、独立行政法人など政府関係機関の剰余金管理の徹底
独立行政法人、特別勘定事業を含む全ての政府関係機関・事業についても、適正な余剰金管理が不可欠である。そのためには認められる余剰利益の基準を定める必要があろう。個々の機関が多額の余剰金を抱えることになると、不必要な支出、浪費を促す可能性が強い一方、ニーズが変化しても特定の事業に公的資金が偏在、固定化し、他の必要な事業への資金の再配分を制限することにもなるので基本的に好ましくない。事業の種類にもよるが、余剰利益の額は原則として事業規模の1~3%以内とするなど、適正な管理が必要であろう。

 現在、電子政府など、政府事業のIT化や合理化が進められ、景気対策の一環としても多額の予算が投じられようとしているが、行政側の省力化などが重点となり、ユーザー側の利便性の向上、負担の削減の視点に欠ける場合が多い。例えば、インターネットによる税の申告e-taxの普及率が3%前後と低く、普及が進まないのは、ユーザー側の納税者にとっては、システムが複雑で手間が掛かり過ぎるからであろう。政府関係事業はもとよりであるが、公益・公共事業についても、ユーザー側の利便性、負担軽減に重点を置いた改善、改革が強く望まれる。それが行政サービス、公益・公共事業の本来の目的なのではなかろうか。(09.04.)
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