よく見ると、まぁ、少し男前にも見える。
まぁ、もてないこともないか。
ただ、最初に会ったとき、まだ二十歳になってなかったので、誰はばからず、タバコは吸わないでほしいんだよね。
そんな彼と、少しだけ話をしました。
「車の免許とれた?」と、私。
「まだです。実技はとれたんですが、筆記試験がなかなか受からなくて。」彼。
「まぁ、半年以内にとれば大丈夫(だいじょうぶ)だからね。
でも、免許を取ると、車が今度ほしくなるんだよね。」私。
「大丈夫です。貯金が〇百万ぐらいあるはずなので、免許がとれたら、即(そく)、好きな車買います。」
彼に〇百万の貯金があるとは、予想外です。
ですが、少し心配になりました。
「今の言葉、すこし気になるなぁ。あるはずって、自分で自分の貯金、管理してないの?」
と、聞きました。
彼は「親が全部管理しています。」とのこと。
彼は母子家庭なので、親はまぁ、生活も、それなりにたいへんなはずです。
ですから、余計(よけい)なことを言ってしまいました。
「それだと、その貯金、君が思ってるほど、ないかもしれないよ。」(子育て中の親の苦労は、わかりますから。)
すると、わたしにとって、思いもかけない言葉が返ってきました。
「親が使い込んでるかもしれないってことですか?
そんときはそんときで、(親が使い込んだとしても)いいです。」
私は、少し驚いていました。
思いもかけない、爆弾発言でした。最初の第一印象からすると、(私のなかの彼の)株がばく上がりです。
「親にずいぶん心配かけたんじゃないの。だから、そんなこと言うの?」
すると、彼は
「罪をおかすようなことはしてないけど、警察には何度もお世話になってます。」
(だから、親には迷惑かけてますので、親がもし、俺の金を使ったとしても、別にかまわないと思っています。)
少し、感動しました。
私は、彼を甘やかしたくはなかったのですが、少しほめたくなりました。
「〇〇君、見直したよ。」
彼の肩に、軽く手をかけていました。