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時の関守

一瞬を生きる (3)

その瞬間、私は子供を亡くしたことの喪失感、後悔、この先への不安、憂うつといったものが、まったく抜け落ちていました。
ただ、ただ、鳥のさえずりをきき、一瞬ですが、とても美しい世界にいるという、充足感を味わっていました。

そこには、過去も未来もありません。
その瞬間は、過去にも未来にもしばられていません。

ほんとうの自分がいたとして、この出来事について、何も言葉にしてないはずなのですが…、

「つらい経験だったなぁ。」
「でも、どんな経験だって、
人として生きてくうえでは、
とても大切な経験なんだよ。」

「他人の気持ちになるというのは、言葉にすれば簡単だけど、やっぱり自分が経験しなければわかりえないことが、
たくさんある。」
だから、

「どんな経験も貴重だし、どんなささいなことのなかにも、天の導きと采配があるんだよ。」

あのとき、言葉にならなかった言葉が、今この瞬間に、言葉となってあふれてきたのでしょうか…。

過去も未来もない。
今、この瞬間があるだけ。
だから、過去にこだわるな。
何かをうらむなんか、とんでもない。
未来は大事であっても、大事にするあまり、今この瞬間を生きなければ、本末転倒なんだよ。

一瞬を生きるということは、ほんとうの自分に出会うことなのだから。

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