もちろん、それは本との出会いというよりは、一人の宗教家との出会いということなのでしょう。
葉室頼昭(はむろよりあき)というかたです。
奈良の春日大社の元の宮司(ぐうじ)さんだったかたです。
(※頼という字は、旧の漢字が本来なのですが、そのまま書かせていただきます。)
本屋で偶然みつけて、おもしろそうなので、買って読ませていただきました。
そこには、科学者である医者(葉室氏)と、宗教の幸運な出逢いがあったように思えて、とてもおもしろく、興味深く読ませていただきました。
葉室氏は、とても信仰の深い両親のもとに生まれ、さまざまな出会いと(神の)導きのなか、医者を志すことになります。
それも、当時ではほとんど無名な、形成外科をを志します。
なぜかというと。
(学生時代)当時、(大学の)外科には、顔に変形のある多くの人たちがきていました。
しかし、診察するだけで治療することはありませんでした。
ですから、そのがっかりして帰っていく姿をみて、とても気の毒に思ったのですね。
それで、その人たちを助けたいと(形成外科を)志すことになります。
その形成外科医になるまでのことも、とてもおもしろのですが、ここでは割愛します。
日本でも、ほとんど先駆けのような形成外科を目指した作者が、たどりついた境地というか秘密は、とても興味深いものです。
葉室氏の言葉をたどってみましょう。
「人間の顔は神さまの造られた最高の作品です。
われわれは当たり前と思っていますが、例えば鼻翼の丸み、目尻や口角の微妙な形などは、人工的にはとても造ることできません。
どんなに一生懸命手術をおこなっても、どうしても不自然さが残ります。
だから、自然を百とすると手術ができるのはだいたい八割くらいです。
それ以上は人間の力ではできません。
けれども患者さんは普通の姿になりたいと願っています。
何もきれいになりたいと言ってるわけじゃないのです。
ただ普通の人と同じ顔になりたいという当たり前の願いです。
その希望に医者が応えられないのです。」