「大関経験者が、勝負にかける矜持を示した。大相撲名古屋場所14日目、元大関の幕内朝乃山(29=高砂)が新大関の霧島(27=陸奥)を真っ向勝負で破り、7勝目(4敗3休)。突き放しにきた相手を右四つで組み止めると、豪快なすくい投げで土俵に転がした。

 取組後は「昨日(霧島との)対戦が決まってから、思い切っていくことだけを考えていた。あの投げも思い切ってやった結果。しっかり相手を見て〝ここしかない〟というところで、体が反応した」と振り返った。朝乃山が結びで相撲を取るは、一昨年の夏場所以来2年ぶり。当時は大関として格下の挑戦を受ける立場だった。

今回は、逆に挑戦者として臨んだ一番。「新大関の霧島関に、思い切って自分の相撲を取って勝てたことを少しでも自信にしたい。連日応援していただいている中で、結びで勝てたのはうれしかった。拍手や歓声が力になりました」と謙虚な姿勢で受け止めた。

朝乃山の取組前、大関昇進を目指していた関脇大栄翔(追手風)と関脇若元春(荒汐)が立ち合いで変化を見せ、観客のため息を誘った。

朝乃山は直前2番の取組の影響について「いや、(自分は)昨日の夜から決めてましたので」ときっぱり。勝ち越すためには一つも星を落とせない状況の中、真っ向勝負の選択に迷いはなかった。多くのファンが朝乃山を支持する理由の一つが、ここにある。