情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

年次改革要望書、弁護士部分で日米の要望事項を比較してみると…おいしいところは米国へ?

2007-10-23 06:29:55 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 あいかわらず、報道されない年次改革報告書(日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書)について、村野瀬玲奈さんが報道させるべく頑張っている。この要望書が、アメリカによる日本への市場明け渡し命令であり、日本に格差社会が根付くことになった元凶であるにもかかわらず、報道されないのはまったく変な話で、相当ものすごい力が働いていると思わざるを得ない。

 で、今年の年次改革報告書のうち、弁護士部分を比較することで、日本がいかに米国のいいなりになっているかをはっきりさせたいと思う。

 まず、米国側の要望書(※1

■■引用開始■■
IV. Achieving Legal System Reform
【司法システム分野】

A. Permit Professional Corporations and Branching.
【弁護士法人と支所の許可】
1. Permit registered foreign lawyers in Japan (gaiben) to form professional corporations on the same basis and with the same benefits, including the ability to establish branch offices, as professional corporations for Japanese lawyers (bengoshi); and
【日本での登録された外国人の弁護士(gaiben)が、支所を設ける能力を含めあらゆる面で日本の弁護士(bengoshi)がつくる弁護士法人と同じ権利を有する弁護士法人を設立することを許可してください】

2. Allow all law firms, including foreign law firms and their bengoshi and gaiben partners in Japan, to establish multiple branch offices in Japan without regard to whether they have formed a professional corporation.
【海外の弁護士事務所や日本におけるそれらの弁護士やgaibenのパートナーを含むすべての法律事務所が、専門家法人格(弁護士法人格)を取得しているか否かに関わりなく、日本国内で複数の事務所を開設することを認めてください】

B. Allow Bengoshi to Associate Freely with International Legal Partnerships. Ensure that there are no legal or bar association rule impediments to Japanese lawyers, whether in solo practice, in partnership with other bengoshi or in partnership with gaiben, becoming members of an international partnership of lawyers outside of Japan.
【Bengoshiが海外の弁護士事務所の元で自由に働けるようにしてください。1人で事務所をしていようが、ほかの弁護士とともに経営していようが、gaibenとパートナーでいようが、区別亡く、海外の弁護士とパートナーになることを阻止するような法律や弁護士会規則を確実になくしてください】
※上の図でいえば、真ん中のgaiben事務所を取っ払ってしまおうっていうこと※

C. Revise Minimum Qualification Criteria for Gaiben. Amend the Gaiben Law so that all experience practicing the law of the home jurisdiction, wherever that experience was obtained, will be counted toward the three-year experience requirement for qualification as a gaiben.
【Gaibenの最小の資格取得基準を緩めてください。母国の法律業務の経験をどの国で得たとしても、gaibenとして資格を取得するための3年の経験要件として算入するようにGaiben法を修正してください】

D. Promote Alternative Dispute Resolution (ADR). Amend the Gaiben Law to explicitly permit gaiben to act as neutrals and to represent parties in all international ADR proceedings taking place in Japan.
【裁判外紛争解決(ADR)を促進してください。 Gaiben法を修正して、gaibenが日本で行われるすべての国際的なADRにおいて主宰し、代理をするのことを明らかに許可してください】

■■引用終了■■

日本の弁護士が閉鎖的なように思える書きっぷりだ。ところが…
日本側の要望書(※2)の弁護士部分は次のとおり。

■■引用開始■■
2.法律サービス
(1)外国弁護士の受入れ
(a)外国弁護士受入制度の全州への拡大
米国において、外国弁護士受入制度を設けている管轄地は、平成19 年1月に外国弁護士受入れに関する新たな規則を設けたニューハンプシャー州を含め26 の州及びコロンビア特別区に過ぎず、その他の州においては、外国弁護士が開業することが許されていない。米国政府の説明によれば、外国弁護士受入制度を設けている上記管轄地の法律サービス市場の収入は、米国における全法律サービス市場の収入の約85%となるという。しかし、日本においては、外国法事務弁護士は日本全国で活動することができ、法律サービス市場の100%に当たる部分を開放している。日本国政府は、米国法律家協会(ABA)が外国弁護士受入制度のモデル規則を全州で導入することを目標として活動していること、及び2006 年8月の最高裁判所判事会議の決議等、外国弁護士受入州の拡大に向けた動きを歓迎するが、外国弁護士受入制度を全州に拡大するため、米国政府の積極的な行動を引き続き求める。

(b)外国弁護士の受入要件としての職務経験期間
外国弁護士受入制度を設けている管轄地における受入要件としての職務経験期間に関して、ABA は、2006 年8月にモデル規則の改正を行い、申請直前要件を廃止し、受入要件としての職務経験期間を5年として、さらに、第三国を含むいずれの国における職務経験であっても構わないものとした。日本国政府は、米国におけるこのような改善に向けた動きを歓迎するが、なお多くの州において職務経験期間に関する問題が解決されておらず、米国政府に対し、以下の事項の実現に向けて努力するよう引き続き求める。
 (i)職務経験期間の短縮
    外国弁護士受入制度を設けている管轄地において、コロンビア特別区を除くすべての州が一定期間の職務経験があることを受入要件としており、多くの州ではその期間を5年以上としている。日本の外国弁護士受入制度では受入要件としての職務経験期間は、米国の要望により既に9年も前に5年から3年に短縮されており、米国すべての州において、これを3年に短縮するよう求める。
 (ii)申請直前要件の廃止
    外国弁護士受入制度を設けている州において、確認されている限りでは、受入要件としての職務経験期間には申請直前の職務経験の期間のみが算入できることとされている。かかる直近要件は、日本の外国弁護士受入制度では課されておらず、米国のすべての州において、改正モデル規則に基づき、受入要件としての職務経験期間に算入できる職務経験の期間を申請直前のものに限定しないよう求める。
 (iii)第三国における職務経験期間の算入
    外国弁護士受入制度を設けている州において、確認されている限りでは、受入要件としての職務経験期間に第三国における職務経験の期間の算入を認めているのは、テキサス州、ニューヨーク州及びインディアナ州の3州に過ぎない。日本の外国弁護士受入制度では第三国における職務経験の期間の算入を認めており、米国のすべての州において、改正モデル規則に基づき、第三国における職務経験期間を算入可能とするよう求める。

(2)外国弁護士による裁判外紛争解決(ADR)手続に関する規制
外国弁護士又は外国リーガルコンサルタント(FLC)によるADR 手続(仲裁手続を含む。以下同じ。)の主宰及び代理に関しては、各州がどのような規制を行っているかが明確に確認できないため、外国弁護士又はFLC が活動するに当たって支障が生じている。よって、日本国政府は、米国政府に対し、これらADR 手続の規制内容を明らかにすることを引き続き求める。
■■引用終了■■

つまり、米国は自分がしてもいないことを日本に押しつけようとしているわけだ。

日本の大型ローファームは300人規模になっているが、こんな改革がされたら、おいしいところは全部米国の弁護士が吸い上げて日本のローファームの弁護士は期間雇用で1年使ってみたけど使えないから辞めてねとか、3年使ってもうそろそろ過労死しそうだから首にするとかっていう事態が起きるかもね。

自分の関係する分野に米国がどんな口を挟もうとしているのかを見るだけでもしてみたらいいと思う…。あちこちのブログ主が献身的に日本語に訳しているようだし…。

図はhttp://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/kentoukai/kokusaika/dai2/2siryou4_1.htmlより

※1:http://www.ustr.gov/assets/Document_Library/Reports_Publications/2007/asset_upload_file751_13383.pdf

※2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/pdfs/kisei07_yobo.pdf








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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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