ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

見立て

2007-10-28 23:05:55 | 着物・古布
まずは写真、久しぶりに「伸子張り」をしました。
空気が乾燥していたので、遅くなったけどあっという間に乾きました。
これは「じゅばん」でしたが、うそつきの袖にとおもったのですけれど、
解いてみたら「縫い目」にヒケがあって、ちょっと弱っています。
着物系としての再生はムリかなぁというところ。
手綱風の染め分けで、色も秋らしくていいと思ったんですけどねぇ。

さて本日は「見立て」のお話し。
「見立て」は見立てること、つまり代わりのものを以ってそれとする、ですね。
着物の柄には、この「見立て」がよく使われます。
昨日の「カラスと鷺」も「碁石」に見立てられていました。
あっ、昨日コメントで「カラスではなく鵜ではないか」
とのお話しがありまして、いろいろ私の考えを書きましたが、
結局Suzuka様の「囲碁の勝負を『烏鷺の争い』という」の一言で、
「カラス」に決定!しました。

で「見立て」ですが、日本では、着物の柄に限らずさまざまなことに
「見立て」を使いました。流し雛なども、元はといえば「形代」という、
人間の体に見立てた和紙に、穢れを移して水に流したものです。
身代わり、というわけですね。
こういう「何かに変えて、何かを代わりに」ということが、
「ごまかし」ではなく、思いを伝える、願いをかけるなどの行事や、
美の追求とか、華やかさの演出としていろいろな場面で使われてきたわけです。

例えば、宮中の見立てによる「美しい演出」のひとつに
「打出(うちいで)」というのがあります。
これは宮中で晴れがましい式典などがあるとき、
母屋(部屋)の御簾の下から、美しい装束つまり十二単ですが、
その後ろの華やかに重なった部分や前の袖口の襲の色目部分などを出して
わざと覗かせる…という演出。実は衣装だけで「人」はいません。
几帳の柱を人に見立てて衣装を結びつけ、あたかも人がいるようにみせるもの。
真ん中が「棒」だとわかっていても、そこには佳人がいる、と
見立てる美しい演出です。セレブの余裕??

日本人は、そういう「直接的でなく表現する」とか
「代わりを以って表現する」というような、シャレや粋なことが
とても上手だと思うのです。想像力がとても豊かなのだと思います。
着物の柄も、そのひとつとして大きく花開いたものなのでしょう。

「柄・もよう」というものは、身近なもの、想像上のもの、
現実にあるけれど見たことのないもの、など
日常生活のあらゆることが題材になります。
その中での見立て、昨日の碁石もそうですが、
そういうものが「定番」として、数多くあります。
こちらは「花車」と呼ばれる柄です。


  


眼の覚めるような鮮やかな青色、花の下の両脇絞りの部分、
絞りなのでちょっと目立ちませんが、御所車の車輪です。
本来ならそこにはあの四角い、人が乗る部分があるわけですが、
そこに花を置いて、それを御所車に見立てているわけです。
似たようなものに「花筏」があります。
筏は切り出した木を、早く楽に運搬するための手段。
狭くて流れの速い川の多い日本では、その木が損傷しないように
人が乗って船のようにかじをとって下りました。
この「筏」の上に人ではなく花を乗せたのが「花筏」、
花を人に見立てているわけですね。
また更に、その筏が「笛」を束ねたものだったりする柄もあります。
その場合は「笛」を材木に見立てているわけです。見立ての更に見立てですね。

着物の柄には、見立てから意味を持つもの、がたくさんあります。
前述の「花車」「花筏」もそうですが、
宝尽くしなどはその「宝」ひとつひとつに意味があります。
こちらはぎゃらりぃにも出している「花薬玉」、見事な柄です。


  


薬玉柄は女の子の着物によく使われますが、
元々は「薬」の玉、つまり薬草を束ねたものを、
軒先につるしたりして疫病を払ったり、魔を切ったり、
というものでした。これを薬の代わりに美しい花の玉にして
「花薬玉」という柄にしたわけですが、
小さい女の子の着物柄によく使われたのは、
乳幼児の死亡率の高かった昔、病気にならないように、
健康に育つようにという願いをこめたもの。
ただ、きれいなだけじゃないんですね。

きれいな着物を見たとき、この柄ってなんか意味があるのかな?
と、ちょっと考えながら見たりすると、
また楽しいのではないかと思います。
あぁ本日も時間切れ!なんか中途半端ですが、ごめんなさいです。
HPにかかりまーす。








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4 コメント

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本当に ()
2007-10-28 23:52:16
毎度毎度 同じ事を思い 同じ事を書きますが

本当に とんぼさんは博学でいらっしゃいますね~

ただただ感心するばかりです。
返信する
Unknown (陽花)
2007-10-29 00:01:13
伸子張りのお襦袢はいい色柄ですね~
うそつき袖にも無理なら羽裏にも
無理なんでしょうね。
何に変身するのかしらと妙に気になります。
返信する
Unknown (六十路独り言)
2007-10-29 11:52:42
懐かしや久しぶりに見る伸子張り
      紅葉の景が風にゆらゆら

台風一過昨日は本当に暑かったですね。
仕舞ってしまった半袖をごそごそとひっぱりだしてしまいました。
伸子張りを久しぶりに見せていただいて、土佐の農家の庭先で母親を手伝って糊を広げた少女時代を思い出しました。
この色目スカーフにしてみたいです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-29 15:15:22
惠様
ありがとうございます。
あちこち穴だらけのうろ覚えなんです。
ずっと勉強って、ほんとですね。


陽花様
ほんとに見事に「線」になって切れてる…。
惜しいですけれど、いいところをつなぎあわせる
なんてことも考えてみますね。
とてもやさしくていい色なので…。


六十路独り言様
今日もまた暑いです。ほんとにヘンですね。
お歌、ありがとうございます。
トップの「概要」に掲載させていただきました。
スカーフもいいなぁと思っています。
身頃からとれそうですし。
返信する

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