ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

貝桶柄の袱紗

2011-12-16 11:44:12 | 着物・古布

 

袱紗については、過去記事がありますので、こちらをご覧下さい。

地方地域によっての違いはあると思いますが、現代の暮らしの中では「袱紗」は昔ほど使われません。

元々「ものを贈る」ときに使うものですが、最近は宅配便で遠方へ、近くはデパートの袋で…。

美しい袱紗より「○○デパート」の包装紙が「心のこもりよう」をあらわすことになる???

なんかちと寂しいですね。

 

そんなわけで、ヤ○オクやショップで昔の袱紗が出品されていても、あまり使い道はないし、

加工するにしても大きさや状態が…だったり、使い方が限られたりで、いつも見るだけでした。

それがあの「胡蝶」の袱紗を入手したときから「袱紗」も廃れていく文化だよねぇ…と思い始め、

出ているとシゲシゲと眺めるようになりました。

そうなってよくよく見てみると、なかなか「これ」というのにめぐり合わないものです。

この袱紗も、柄はいいのですが、土台の方のはじっこが擦り切れていたりします。

それでも「柄」のよさと珍しさに惹かれました。

貝桶ですから、婚姻関係のお祝い事に使う袱紗だと思います。

大きさは65センチ×74センチ、大きい袱紗です。

 

貝桶に几帳…は、組み合わせの定番です。

この絵、とてもきれいで豪華なのですが、ちょっと遠近感とか奥行きが感じられないところが難点です。

手元に広げてみるとあまり感じないのですが、少し離れてみると平面的に感じられます。

これは絵画ではなく「柄」ですから、そういう写実感などには重きを置いていないのだと思いますが、

平面的な絵になっているのが惜しいと思うのですよね。もう1回出してみましょう。

 

       

 

ちょっとイタズラをやってみました。

例えば貝桶の内側とフタの内側の色を少し濃くすると…これだけでも立体感でますでしょ。

 

    

 

それと几帳がヤケに大きくないか?と感じたのですが…。

いいじゃんそんなこと…なんですが、気になりだすと気になる…あっこりゃきっと「枕几帳」だわ。

几帳は大きさがいくつかありますが基本的には布幅は同じで、それを横に何枚つなげるか…です。

普通サイズは大小あって、大は高さ120センチくらい、小は90センチくらい、それぞれ横は5幅と4幅。

この几帳だと、絵ではどうにも几帳の高さとかねぇ…で、これは婚姻関係のお祝い用と思われますので

几帳は、極小サイズの「枕几帳」と勝手に決めたわけです。

「枕几帳」というのは、つまり枕屏風と同じ、就寝時の頭のアタリの隙間風よけです。

枕几帳は、ふたつを頭の上で八の字において使用したそうです。

几帳はホンモノを見ているのですが、枕几帳はまだ見たことがありません。

高さは60センチくらいだそうですから、たぶん布は3幅ではないかと思います。

この絵はそれを考えれば、貝桶とのバランスは悪くはないのですけれど、

何度もしつこいですが、遠近感を出したほうが几帳の大きさとか貝桶がその向うに隠れている様子とか、

もっと出せるんじゃないかと思った次第です。

でも、つまらん講釈など本来不要…この絵はとてもきれいです。

これを描いた人は、心をこめて、これを持ってお嫁に行く人のシアワセを祈りながら仕上げたことでしょう。

私の重箱の隅をつつくような指摘など、この袱紗の価値を貶めることなどカケラもできません。

袱紗という限られたスペースと、柄の持つ意味から行けば、

絵の中心はあくまで貝桶、互いにピッタリ合う貝はこの世に一つしかない…という夫婦円満を願う図柄。

それとコンビの几帳は大きな道具ですから、貝桶だけでは寂しい空間を埋めるのに最適。

でも袱紗からはみ出るほどに描いては、貝桶がお添えモノになってしまう…。

そこで几帳の紐も真ん中によせてまとめてみた…感じでしょうか。

絵というのは、難しくも楽しいものです。

 

つまらない文句をつけてはいますが、絵の細かさにはため息ついてます。

刺繍も繊細で、見事に立体感を出しています。

貝の中の柄も極細の筆先で青海波など髪の毛くらいの細さです。すごいですね。

金糸が少し緩んでいます。ほかにもそういうところがありますが、これはプロにお願いすれば直せます。

 

          

  

花の描き方も見事に繊細。菊の葉の色の変わっているところなど、心憎いです。

 

     

 

こちらは貝桶の脚部分、ちょっと色が濃すぎるきらいがありますが「木目」は細かいです。

そして、赤い紐は刺繍です。立体感、ありますよね。

 

     

 

松の茂った部分にも、細かく筆が入ってますし、わずかに見えている観世水なども目が痛くなるほど丁寧です。

立体感がありますね。房の先はこんなです。

 

                  

 

こちらは几帳のてっぺん部分。蒔絵もしっかり描いてありますし、赤い紐と五色の糸は刺繍です。

写真ではうまく出ませんが、絵と違って?立体感ありますね。

 

       

       

 

残念ながら、桶の下の青海波柄部分のような剥落があり、白地の部分にはシミ、

なにより袱紗そのものの端部分に、大きな擦り切れがあります。袱紗としての使用はムリですね。 

とはいえ、こんな袱紗は、今どこに行っても売っているというものではありません。

大切に保管しようと思います。

裏は「剣片喰(けんかたばみ)」の紋、日本でも古い紋です。

 

       

 

裕福な家庭のお嬢様が、結納とか祝言の時に使われたのでしょうか。

きっとお道具もすごいものを持っていかれたのでしょうねぇ。

前の飾り板がハズレ落ちた自分の嫁入りダンスを横目で見ながら、そんなことを思いました。 

合板の薄い木目がモノガナシヒ…。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2011-12-16 16:33:23
すっごく凝った袱紗ですね。
アップで見せて頂き、遠目では分からなかった
刺繍など、手間隙掛かった袱紗だと良く分かりました。本当に素晴らしいものですね。
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Unknown (とんぼ)
2011-12-16 19:30:22
陽花様

ぱっと見て柄で買ったのですが、
とても細かくてきれいでした。
完品だったら、すごく高いでしょうねぇ。
傷アリで、安かったのが申し訳ないみたいです。
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Unknown (アゲハ)
2011-12-17 15:02:34
袱紗ってこんなに豪華な物もあるんですね。
地方によって又違っているというと、いつだったかドキュメンタリーで見た、専ら上掛けにする大きな風呂敷みたいなのも袱紗だったと思います。
日本画の平明さがあって、華やかで美しいですね。
お金掛かってんなぁ~って感じ!!

エリザベス・テーラーさんの宝石がオークションで落とされたニュースを先日見ましたけど、ああ、結局あの世までは持ってけないもんなのねって、しみじみ思ったことでしたが、これもそういう印象で鑑賞させてもらってます。
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Unknown (とんぼ)
2011-12-18 19:16:02
アゲハ様

元々が櫃にかけたものですから、大きいのから始まっています。
おめでたい柄が多いのですが、それだけに「当たり前」の柄が多くて…。
珍しいのを探すのは苦労します。

私の集めたものは、リズさんの宝石ほどの価値などありませんが、
「あの世まで持っていけないこと」は、私とて同じことは自覚していますから、
先々の「嫁入り先」のことなども考えています。
遺産相続などでモメるほどのものはないのが救いですわ。
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