ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ごらんになりましたか?

2010-08-14 18:13:34 | つれづれ
「色つきの悪魔」という番組。第二次世界大戦の記録フィルムです。
トーク部分には、少しものたりなさを感じたものの、画像は説得力がありました。
最初にモノクロフィルムにパソコンで色をつけて「カラー画像」にする過程を紹介、
こんなこともできるのねぇ…と、そのへんは楽しませていただいたのですが、
まずモノクロよりもカラーの方が、よりリアルで同じ画像なのにインパクトがある
ということを実感しました。
それによって放送されたのは「第二次世界大戦」のおおざっぱな経緯です。
まさに「色つきの悪夢」、なんとうまいネーミングかとおもいました。

ゲストに呼ばれていたのは若い女優さんや俳優さんでしたが、
なんといいますか「言語力」、やっぱりちょっと物足りないなぁと感じながら、
それでも言いたいことや気持ちはなんとなく通じました。

学校の歴史で習うのは、本当にカンタンな事実の羅列だと、つくづく思います。
もちろん、余計な主義主張や、個人の主観でものを言ってはいけないのは当然ですが、
もう少し「戦争」というものの本質みたいなものは、
小さいころから教えないと…と、今更のように思います。
さまざまなダイジなポイントを、うまくMCが導き出していましたが、
もっと長い時間をかけて、こういうものを話し合ってほしいものだと思いました。

もうひとつは「玉砕」についての番組。
同じ日に放送されました。

みなさんは「アッツ桜」という花をご存知でしょうか。
桜と名はついていますが、見た目は桜のイメージではありません。
写真がありました。こちらです。よく見るのは濃いピンクのものです。
船橋で育てていたのですが、からしてしまいました。   

この「アッツ」というのは、日本軍が初めて玉砕しところ、つまり全滅したところです。
アッツ桜という和名は、この花を日本兵が祖国の桜に重ねたからとか、
玉砕した兵士を悼んでとか、それが由来だと言われています。

ご承知のように、戦時中は政府のほかに「軍令部」というものがあり、
天皇直属とされ別格扱い、戦争に関するすべての実権を握っておりました。
そしてそれは、当然のように「報道分野」にもおよび、
日本の国民が毎日聞いていたラジオ放送の中身は、うそだったり都合よく改ざんされたり
更にはこのうそをつくために、兵隊の命が無視されたりしたわけです。

「玉砕」という言い方で「全滅」を報道したのがこのアッツ島が最初だったのですが、
カンタンに言いますと、敵を迎え撃ったはいいけれど、どうにも相手が強くて難しい、
軍令部は「必要な兵隊、武器弾薬、食料を送るから、いってこい」といいました。
そこで「これだけの軍と、兵器と食料と…」ともちろん依頼したわけですが、
軍令部は戦局があやしくなったため、結局少し離れたところにあった司令部撤退し、
何も送らないまま、前線部隊を見捨てたのです。
いくら援軍を頼んでも、誰もなんにもやってこない。
結局アッツ島の部隊は全滅しました。
それを国内では「援軍も呼ばず、何の要求(武器も食料も)もせず、
見事に全員散っていった」と、彼らが自分たちで迷惑かけずに
突撃して全滅したんだよと報道したんですね。これを「玉砕した」と言ったわけです。
なんでこんな言い方がされたのか、それは「戦陣訓」というものがあったからです。
いわば「軍人としての行動規範」とでもいいますかね、
その中の最初にあるのが、よく耳にする「生きて虜囚の辱めを受けず」です。
お若い方は、なんじゃそりゃ…でしようね。
これは「生きて捕虜となることは、たいへん恥ずかしいことである」という意味。
つまり「生きて捕まるな、捕まるくらいならその前に自決せよ」です。
番組の中でもいっていましたが、日本軍が勝っていた時期、
イギリス兵などを捕まえたとき、彼らがあっけなく捕虜になるのがフシギだったそうです。
そりゃキリスト教では自殺は罪ですからねぇ。

軍令部は、これをうまく利用したというのです。
つまり、勝てないとわかったところでは「玉砕」を命じるわけです。
あの「水木しげる」さんの戦争体験を描いたドラマ「鬼太郎が見た玉砕」、
去年の作品ですがごらんになりましたか?
12日にBSで再放送されました。香川照之さんが熱演しました。
それが「ニューギニアの玉砕」のお話です。
もう勝てない、という戦いで、彼らは必死に戦いながら後退します。
当然、援軍も物資補給もありません。一緒に食べられるものを探しに言った戦友は、
川に落ちてワニのえさになってしまう…そんな場面もあります。
そして彼らは上官の命令によってひたすら進むのですが、率いていた部隊長が重傷をおい
途中で「自分をおいて、退却せよ」といいます。彼自身はそこで自決してます。
ドラマでは確か「石橋蓮」さんが好演していました。
部隊は必死で逃げるのですが、司令部では、もう全員死んだものとして、
「全員見事に玉砕した」と報じます。ところが、それを発表したあとで、
わずかに生き残った兵士がいたことがわかるわけです。
「玉砕したといっているのに、生き残ってちゃまずいだろう」ということから、
やっと逃げ延びたというのに、この生き残りに突撃命令を出すんですね。
つまり「お前たちは生きて帰ってくるな、突撃して全員死んでこい」です。
このとき数名の上官が「切腹」しています。つまり「死ぬはずだったのに、生きてたから」
誰かが責任を取らないと面子が保てなかったからです。
戦争に行って、敵に殺されるでもなく、捕まりそうになって自決するでもなく、
軍のつまらない面子のために、罰として「切腹(実際には刃をつきたてた時点で射殺)」
させられたのですね。

とても悲しかったのはアッツの「玉砕」でインタビューを受けた「生き残った人たち」が、
最後に「なんで生きてしまったんだと思う」とか「運が悪かった(助かったことを)」とか
「こうして生きているのは恥なのですよ」そんな言葉をもらしたこと。
あれは負け戦だったとか、手榴弾くらいしかないのに勝てるわけがない、とか
そんな風に、自分たちが理不尽な戦いを強いられたことを話していても、です。
65年たっても「生きて虜囚の辱めを受けず」にそむいてしまった自分を、
責め続けているのです。生還して、仕事も家庭も持って、妻子がいて、孫もいて…。
それでも心からシアワセではないのでしょうか。

日本は今平和、です。戦争は永久に放棄、といっています。
でもだからといって、この先ゼッタイ「巻き込まれない」なんて保障はありません。
戦争って始まりからおかしいのです。一応はじめるときは「宣戦布告」をします。
真珠湾攻撃が、アメリカ側から「だまし討ち」「卑怯」とされたのは、
「もうこれでアンタとは話し合いをしないから」という日米交渉をやめるための
大切なお知らせの届くのが、攻撃に間に合わなかったからです。
単純に文章の翻訳に時間がかかったとか、いろいろ言われていますが、
「ぶつよー」といってからぶつなら「構えられる」、いきなりはひどいじゃん、です。
でも、ドイツのポーランド侵攻は、いきなりでした。
別にダレも何もいいません。ひとつには戦争ってそういうもんじゃないの?でしょ。
「ぶつよー」と言ってからぶつんじゃケンカにならない。
また、ドイツがロシアに侵攻したのは、それもまた「約束破り」です。
お互い手を出さないようにしようね、約束だよ、といっていたのに、
いきなり横っ面張り飛ばしたわけですから。

戦争なんて、約束は破られるわ、卑怯な手は使うわ、そして、それがまた
プロパガンダに利用されると、あっちではしょうがなかったことが、
こっちでは国際問題になる…もうめちゃめちゃなものなのです。
そのとんでもないことに、この先日本が巻き込まれないということは、
ゼッタイではないのです。

広島や長崎というと、原爆のお話です。もちろん、最終兵器として、
こんなにおそろしいものはありません。
でも、それ以外にも、戦争ってものは、なんんっにもいいことなんかない、
笑うのは「それでお金が儲かる人」「その間権力を握れる人」だけです。
昨日までそばにいた友人が今日は骸になっている、
家族に会いたくても、死ななきゃ帰れない、
やっと帰ったのに、たった一行の「生きて虜囚の…」という言葉に一生を縛られ、
心の底からの生きる喜びを摘み取られてしまう、
…そんなことが起きるのが戦争です。

わが国の戦争の歴史を学ぶことは、大切なことですが、それと同時に
「戦争はどこの国で起きても、よいことではない」ということをも、学ばないと…。
年をとったせいか、そんな風に考える今日この頃です。

明日は終戦記念日、もう一日お話をさせていただくつもりです。
あさってから、また着物のお話に戻る予定です。


トップ写真は、いかにもツタの絡まる風雅な窓辺…に見えますが、
実は「あっというまにヤブカラシに絡まれてしまった我が家の風呂場の窓」です。
見た目いいんですけどね、家をも傷ませるというとことん頑強なヤツです。
はやいとこ取り払わねば…なんです。

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ああダレてますー。 | トップ | もう一日、戦争のお話を… »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
男女で少し違いがあるのかも (otyukun)
2010-08-14 22:59:19
数年前に北朝鮮の拉致問題がこじれた時、戦争に突入するかも知れないと国内に緊張が走った事があります。
私は団塊の世代ですが、もし戦争になったら素直に銃を取ると思いました。
下職の職人さんも同意見。
しかし、我ら団塊の世代より若年の世代は間違いなく逃げだすだろうという意見も。
イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争がありました。
石油の確保と言うだけの理不尽な戦争です。
戦争は間違いなく悪だと思います。
しかし、理不尽な戦争を仕掛けられれば戦わざるを得ない事も正しいと思うのです。
他国の人間を拉致すると言うのは戦争を仕掛けるに等しい悪です。
その悪を上前を行って戦争が仕掛けられたなら戦うと言うのは間違っているのでしょうか。
死よりつらい生き様を残す戦争は何より回避すべきですが、湾岸戦争や理不尽に仕掛けられた戦争を受けて白旗を揚げるのは納得いかない部分があります。
自分の命より大切な事があるから。

幸い、忍び難きを忍ばねばならない事態には至っていませんが、これから先には有り得る事だと思います。
どんな事があっても戦争を回避しなくてはなりませんが、歴史上戦争に引っ張って行くのは大抵国民が主体になっています。

衆愚と言う奴。
今は大衆だけでなく政治家が率先して愚かですから。
返信する
Unknown (あひる)
2010-08-15 10:40:36
好き嫌いもあるし、いがみ合うことだってある。
損得がからんで仲が悪くなることもあるでしょう。

だからといって、殺しあうことだけは絶対にやめてほしいと思うのです。

たとえ夫が「家族を守るために戦う」と言っても、私は絶対に行ってほしくない。
一緒に逃げてほしい。
卑怯者でもいいです、生きていてほしいです。
返信する
Unknown (陽花)
2010-08-15 17:40:02
戦地へ行って生きて帰れた事は、
本来喜ぶべき事なのに・・・
戦死をすれば英雄、生きて帰れば
生き恥と、ある種洗脳されていた?
悲しい時代だから、生き延びた方の
戦後がなおさら辛いのではと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-08-16 00:09:20
otyukun様

おっしゃるとおりだと思います。
私だっていざとなったら…はあります。
ただ私はその前の段階を思うわけです。
人に銃を向ける前に、向けてはならないことを
日本だけでなく、みんながそうならなければと。
そりゃ理想論ではありますが、
だからといって「むりだ」とあきらめるのではなく、
せっかく「理不尽な戦争」も「核の被害」も
経験しているのだから、それを以って、
「戦争はアホなことだ」と、
世界発信していかないと…と思うわけです。
それにはまず、自分たちの国の子供や若い人に
と、まぁそう考えるわけです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-08-16 00:13:27
あひる様

女の立場としては、生んだ子供を戦地にやるのも、
オットが戦うのも、いやですよね。
素直な気持ちだと思います。
ただ、もしそんなことになったら、
またそこで「アンタは逃げた」「アンタは戦った」と、
差別が生まれるでしょう。
戦争を避けなければならないのは、
そんなことを起こさないためでもあるわけですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-08-16 00:15:41
陽花様

日本人は、長い時間かけて洗脳されたようなもの、
私はそんな風に感じでいます。
多数と少数に分かれてしまったら、
勝てないというのが常ですし、
勝つことは容易ではありません。
そんなつらいことがおきないように、
平和であることを願います。
返信する

コメントを投稿

つれづれ」カテゴリの最新記事