ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

じゅばんとのやりとり・・・

2012-10-22 09:32:51 | 着物・古布

 

とんぼという、やたらブツヨクの深いオバハンが、ある晩、ぼぉーっとしながら、

よく覗く古着屋のショップを見ていたら、まっかっかーな市松に金魚のじゅばんが目につきました。

 

じゅばんの写真を見ながら、とんぼがつぶやきました。

「派手だねぇ、紋綸子…元は着物だなこりゃ。袖長いし、きっと十三詣りが終わったくらいの子だね」

モニターのむこうからじゅばんがささやきます「そおだよぉぉ、いい色だべさぁ、ちゃっちゃと買わんねぇ」

「あんたどこの生まれよ。身丈は?…長っ…なんでちっさい子が私より背が高いのよ。気に入らん」

「長いほうが繰り回しは、やりやすいやろが。袖も長いでぇ。えぇから、買いよし」

「んなこと言ったってさ、こんなの着ないし」

「着るべさ、じゅばんにしてぇ」

「だからどこの生まれだってば」

「ええやん、昔っからあちこち回ってんねんから、言葉もごっちゃになるんやて。」

「でもねぇ、金魚は夏の柄だし、そうするとどうしたって単衣のじゅばんでしょ。これだってそうだし。

 けっこう暑い時期に着たら、汗かいて色落ちそうだし」

「いいじゃん、夏にしなくたって、金魚だからって夏ってのはタンラクテキだよ。

 第一冬だって金魚飼ってる人は毎日みるじゃん。金魚は夏のものってのは、ニンゲンサマの固定観念ってやつ!」

「急にヨコハマ弁になったね。ま、言われてみりゃそうだけどさ、ただねぇ細かい写真があんまりでてないんだよね。

多少のシミはまぁしかたないとして… けっこうどっか泣いてない?」

「泣いてないよぉ、金魚はみんな元気でニコニコ!」

「ちゃうって、これだけまっかっかだと、汗やら水やらで、どっか色が流れて 全面ピンク、なんてことがあるのよ、

それを泣くと言うんだわさ」

「ないない、あ…ちょっとだけある。ほんのちょっと、金魚の涙くらい」

「金魚の涙なんぞ、水の中じゃ見えんわいっ。それを言うなら雀の涙っ!」

「そうとも言う…とにかく、ほんのちょっとだから。目立つほど広々ピンクになんてなってないから」

「そおぉぉ?」

「(よっしゃ!その気になってきたぞ)…そうそう。ばーさんになっ…あ、いやいや『熟年』になったら、

 じゅばんは赤いものがいいんだよ」

「そりゃそうなんだよねぇ」

「(もうひと押し!)そう、シブーイ紬の袖の振りからさ、ちらっと真っ赤な市松なんて、オサレじゃーん」

「そだねー。紋綸子でこの柄ってのもなかなかないよねぇ(ちなみに地紋は大きな業平菱)」

「そうそうっ!」

「袖が長いから、傷みあってもそこに回せるよね」

「そうそうっ!」

「でもハデだよねぇ」

「だから着物で着るわけじゃないと、ゆーとろーが!さっさと買わんと、ほかのもんに買われてまうぞ!」

「ポチッ!」

「よっしゃぁっ!」

 

というわけで、モニターごしの金魚じゅばんのオドシに、ついポチッと押してしまったとんぼオバハンは、

「あぁなんかまた、催眠術にかかったよーな気がする」と思うのでありました。

 

毎度ココロ惹かれるものに出会ってしまうと、このような会話がなされるのです。

「なんと言われてもダメなものはダメッ」と、涙ながらにきっちりサヨウナラも多いのですが…。

そして長旅をして届いたじゅばんと直接ご対面。 

我が家にやってきた金魚じゅばんです。

長いお袖はこちら。

 

                  

 

それにしても鮮やかな赤です。そして本当のことを言うと、私はこの金魚の絵の可愛さに惹かれたのです。

ちゃんと描かれているわけではないのですが、目に青で線がクルリとはいっているだけで、

表情といいますか、金魚の目がどこかちゃんとみているように思えます。

 

         

 

金魚の柄は夏物などいろいろあるのですが、元々魚というものは犬やネコのような「表情」がありません。

男の子のものなどは、鯉の目がギョロッと大きく、丈夫そうな尾びれがピンとはねていると、勇ましくていいのですが、

金魚は目とそれから形の良いボデーと、フリルのような尾やヒレ…あくまでかわいくないと。

というわけで、久々の「赤いべべ着たかわいい金魚」に出会えたのでした。

そして忙しいことに、この金魚さんはきれいに洗っていただくために、悉皆屋さんにお出かけ中です。

はよ、戻りやぁ。

 

          


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14 コメント

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Unknown (sachi)
2012-10-22 17:43:17
真夜中のぽちっとなは失敗も多いですが、よいお買い物でしたね。(^o^)
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かわええ♪ (べにお)
2012-10-22 18:08:07
襦袢との会話、楽しませていただきました(笑)。
それにしても、優美なタッチで描かれた金魚です。
しなやかなフォルムと、やっぱり表情!
ホントにブルーのラインが入ると、顔つきが変わるんですねぇ…。
赤の市松というのも、おしゃれ。いいなぁ。
これが地味な紬あたりからチラッと見えたら…惚れちゃいますよ~♪
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Unknown (港屋)
2012-10-22 18:57:35
はじめまして。
時折り訪問させて頂いております。

こちらのお品物、
私もポチしようかと悩みまして、
結局あきらめました。
金魚、可愛いですものね。

あきらめた理由は、
人形の着物を作っておりまして、
いかんせん、柄が大きすぎる。。。。
人形の着物の柄としてどうか、と、
そればかりをものさしにして着物をみるクセが
ついていますので、
残念でしたが、
でも素敵な長襦袢になると思います。
どんなお着物と合わせられるのか、
今から楽しみにしております。
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Unknown (陽花)
2012-10-22 20:40:46
ポチッとするまでの心の会話あるある・・と
思いながら読ませて頂きました。

ふっくらしたランチュウ可愛いですね。
地味目な着物の振りから見える赤がきっと
素敵でしょうね。
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Unknown (古布遊び)
2012-10-23 08:13:02
可愛らしい金魚!
金魚柄は人気ですよねーー確かに「目」言われて、なるほどと思いました。
納得の金魚ですね。

早く戻ってくるといいですね。
楽しみです~~
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ほんと (アゲハ)
2012-10-23 08:41:24
変に図案化されてなくて、とてもいい柄ですね。

で、これ悉皆屋さんからご帰宅あそばしたら、襦袢として、とんぼさん、お召しになるの?

それとも何か他のアイテムに変身でしょうか???

是非是非、公開してくんなまし。
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Unknown (柾女   )
2012-10-23 09:21:17
着物は出会いと言いますが、オークションをのぞくようになって、”24時間日本中店開き”してますから、自制心が問われますね。
今、1歳の孫娘にお正月用のでんちセットでもちくちく縫いたいなと思っているので、赤い柄には反応してしまいます。金魚に救われました。とんぼさんが、前のようにはぎれを販売されたら毎日ちぇっくしますぅ。
ところで、洗い張りもお手のものなのに、どうして今回は悉皆屋さんにだされたのですか。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:09:41
sachi様

真夜中の・危ない誘惑・ぽちっとな…。

ほんとに、なんかその気になっちゃうんですよね。
おかげさまで可愛くてよかったです。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:11:18
べにお様

昔の柄の方が「大胆ステキ」ですよね。
絵って、ほのちょっとに違いで、ずいぶん雰囲気が変わりますね。
なんとかじゅばんにしたいと思っています。
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こちらこそ (とんぼ)
2012-10-23 11:14:58
港屋様

はじめまして、コメントありがとうございます。

お人形さんの着物サイズで…・というお話、よくわかります。
以前も古い訪問着の部分写真を出しましたら、
「あの花の大きさはどれくらいでしょう」と、聞かれました。
いくら綺麗な柄でも大きすぎては…ですものね。

小ぶりの柄は、人間様には地味目になりますが、お人形さんなら華やかですね。
なにかありましたら、またご紹介させていただきます。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:16:42
陽花様

抑えて抑えて、と思うのに、迷うんですよね。
今回は割と掘り出し物だったかなと、思っています。
それにしても、昔のものはハデかわいいですね。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:18:58
古布遊び様

もぅ「おめめ」に惚れ込みました。
子供の浴衣とか、絽はよくみますが、
綸子は珍しいですね。
なんとか袖からチラリと、やってみたいです。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:20:31
アゲハ様

おかげさまで、思い切り可愛くて、じゆばんくらいにしかなりません。
とりあえず、使う分の「丈」があるかどうか、お帰り待ちです。
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Unknown (とんぼ)
2012-10-23 11:25:04
柾女様

ほんとに「自制心」、必要ですねぇ。
夜中のぼーっとした頭だと、よけいにふらっと傾きます。
アブナイアブナイ。

これは自分でやったら絶対、赤い色がダーッと流れて、白いところがダンダラに染まります。
大量の水をザンザン流してやらないと、です。プロはすごいと思いますわ。 

お孫さんのおでんち、可愛らしい柄がみつかりますように。 
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