ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

雛道具パート…いくつだっけ

2008-03-15 20:06:58 | 昔の道具・暮らし
まずは、お休みさせていただきましてありがとうございました。
なんかねぇ禁断症状でそーでした。
たいしたこと書いてるわけじゃないのに、やっぱり書いてるの楽しいですー。
それでは!復活ののろし…あげてどーする…。

お雛様道具、今年はお膳と高杯、それにお琴、これで打ち止め、
来年は、タンス系と雪洞にしよう…と考えていたのですが、
これを見つけてしまいまして、こりゃめったに出ないわぁと、買いました。
これはそんなに高額にならなかったので助かりました。
箱をあけると…なんと「枕」ですー。ちっさー、でしょ。


     


形から行くと江戸時代の形ですね。箱枕です。
下が少しカーブしているのはなんでかなぁ…。
これには紙がかかっていませんが、本来は上に載っている
丸い筒状のものの上に、更にに和紙(半紙みたいなの)を巻くようにして、
ずれないように細紐で結びました。髪油で汚れるからですね。
以前ご紹介したハギレの柄にも「箱枕」がありますご覧ください。


          


記事はこちら。足の裏が並んでるところもあります。面白柄です。


さて、枕っていつ頃から使われたのでしょうか。
歴史的に言うと、それこそ古代人の墓で、頭の下に砕いた細かい石が
敷かれていたと言いますから、人間が二足歩行を始めて、
四足歩行の動物とは違うスタイルで寝始めたときから、
何か頭の下に置く、と言うのはやっていたんでしょうね、ヒジ枕とかも含めて。
余談ですが、四足歩行の動物が、人間で言えばうつ伏せと言いますか、
オナカを地面につけ、前足の上にアタマを載せて眠るのは、
地面を伝ってくる敵の気配をいち早く感知するためだそうです。
またその姿勢なら、そのままダッシュできますしね。
敵の少ないライオンなんかは、木の上でだらしなーく寝てたりしますが…。
さて、ではもう少し文明が発達してからの枕はどうだったんでしょう。

元々「ふとん」のところでお話ししましたが、睡眠のときに、
今のように敷布団、枕、掛け布団、というセットになったのは、
ずいぶん時代が下ってからです。身分の高い人でも、布団はなかなかでした。
布団を「蒲団」と書く事もあるのは、綿を豊富に使えるようになるまで
蒲の穂などを使っていたことによります。元々は座禅の座布団から、
蒲団になりましたが、高級品でしたから、枕以前の問題ですね。

枕の語源は、いろいろあるんですが、袖を巻いていた、と言う説もあります。
つまり「巻くら」ですね。そうやって何かで適当に代用していたなんてこと
おおいにあったんじゃないでしょうか。
反対に、道具としてきちんと作られた場合は、まず「頭」と言うものは、
神様が宿るとか、魂の器とか、そういった宗教的な意味合いから、
それをのせるものとした「魂の座」というような言われ方もあったようです。
今の枕は頭を乗せるものというより、よりよく眠るためのもの、
つまり全身的なことも考えてのものですよね。
しかし、昔は頭を乗せるというより首を乗せるもの、或いは
頭を支えるもの、という意味合いが強いわけです。

枕がいろいろと形を変えてきたのは「髪を結うようになったこと」も理由です。
またまた以前に書いたことですが、古墳時代から奈良時代にかけては、
男女とも髪を結いましたが、平安時代からは男子のみ、髪を結いました。
当時は「かぶるもの」が身分職業を表すものとして大きな意味を持ちましたから、
男子は「かぶり物」のために、形をきめて髪を結ったわけです。
当時かぶるものは「冠・烏帽子」ですが、ちょっと失礼して
お雛様の男雛の冠を脱がせて見ると、貴族の髪型が見えます。
あの冠をかぶるのに、その芯になるような感じで細く高くまとめています。
つまり中にそれを収めて動かないように紐でくくったりピンで留めたわけです。
烏帽子は元々薄くて軽い素材の、えーと光源氏がかぶってる
クリスマスソックスさかさまにしたよーなアレ…なんという情緒のない言い方…。
その頃は高く結った元結ごとすっぽりとかぶったので、紐なし。
それが時代とともに、社会情勢とともに、これまたいろーんな形に変化しました。
大きく分けて、冠も烏帽子も「頭すっぽり型」と「チョコンと乗せ型」です。
つまりすっぽりかぶるなら髷は中に入る、乗せるなら外に出てもOKです。
烏帽子だけでもいろいろかわって、私、途中で投げましたわぁ。
たとえばあの「光ちゃん(光源氏でっせ)」のさかさまソックスは
素材が柔らかく、薄くて透けて見えるようなものだったのですが、
時代とともに変化し、まずはあんなに長いと面倒なので折りたたみました。
「風折烏帽子」と言いますが、やがて「武士」がでてきましたので、
もっと小ぶりの「侍烏帽子」が出まして、公家と武家では形が違う…になり、
更には素材だの作り方だのがもーいろいろ。
現在はっきり形を見るのに手っ取り早いのは、今放送中、大相撲の行司さん。
あの方のかぶっている、なんか三角のよーな四角のよーな、
あれが、光くん時代の烏帽子の成れの果て、ではなくて変化した後の姿。
あれは「侍烏帽子」の方の「舟形」といいます。
ちなみに横綱の行司さんのあの衣装は鎌倉時代の武士の装束、
決められたのは明治末期、それまではふつーの裃でした。

一方庶民の男性は昔は庶民用の烏帽子、をかぶるので、
今で言うポニーテールでした。烏帽子売りなんて商売も当然ありました。
また女性はずっと垂髪でしたから、宮中の女性のようにひたすら長い人は、
枕ではなく、「髪を入れる箱」を置きました。とぐろ巻いてたわけで…。
やがて時代が下がって、室町鎌倉…あたりから、
また女性が髪を結うようになります。男性のほうは、武士が台頭してくると、
それに合った髪型が出てきます。つまり「月代(さかやき)」のある頭。
これも以前書いておりますが、あのてっぺんだけつるつるに剃ると言うのは、
兜をしっかり固定し、蒸れないようにするためのものです。

元々貴族の時代は、元服は「初冠(ういこうぶり)」というもの、
つまり「身分立場を表すかぶり物」を冠るのが大人の証、
それが武士になると「兜をかぶって、戦に出られて一人前」の証になり、
戦国の世が平らかになってからは、単に大人の証として前髪を落とし月代を剃る、
ということになり、これが庶民にひろまったわけです。
つまりその時代のどんな身分かによって、かぶるものが違い、髪型がかわり、
枕も形が違うわけですね。庶民などは、丸太を切ったもの程度だったようです。
火消しとか人足とか、とにかく一度に全員起こす必要のあるときは、
丸太を一本置いて、それで全員が寝る…何かあったら、
丸太の端をガンと一発たたけば、全員飛び起きると言うわけで…。

ともあれ、男性も女性も髪を結うようになると、鬢だの髱だのと
あっちこっち出っ張ってますから、普通に寝たらつぶれます。
それを保護するための枕が考え出されたわけです。
つまり、枕と言うのは、どちらかと言うと「頭」をのせるものではなく、
「首」を乗せるものであったわけです。
箱枕、伯母が嫁入りで髪を結ったとき数日間つかったことがある、
と聞いていますが、高島田を結ったために髪を引っ張られる痛さと、
首が折れそうなほど高くて硬い枕に、とても寝られたものではなかったそうです。

江戸時代には、携帯用折りたたみ枕という、秀逸なものも作られましたが、
形はうまくできていても、やはり「首乗せ台」、到底使う気になれませんわ。
今の時代ですと、枕は柔らかさのあるものという感覚ですが、
昔は木、やがて「首のせ台」、その他夏用のせとものや籐の枕など、
いろいろできても、今のように頭全体を包み込むようなものはありませんでした。
さらに時代が下がって、髪は結っても「髷」がなくなってから、
ようやく「寝るのにつごうのいいラクなもの」が作られるようになりました。
いわゆる「くくりまくら」と言われる、つまり円筒形のもの。
中はそば殻が一番、と今でも言われますね。
昔、古い民宿に泊まったとき、布団側と同じ生地で作った、俵型の枕でした。
中はたぶん籾殻、ちょっとチクチクして独特の音がします。懐かしいなぁ。

まぁそんな感じで、今に至る…わけです。
今のようなラクなまくらになったのは、ずーっと近代になってから、です。

というわけで、お雛様の枕、あれは大名雛の飾り、と言うことですね。
つまり江戸時代に入ってからのお雛飾りを模したものです。
最近は、睡眠は健康の元、というわけで、体全体にとって「よい」枕が、
いろいろ出ています。貴女はどんな枕がお好きですか?
私は、実は枕ナシ派、ほとんどタオル折ったくらいのです。
なんたって母言うところの「軍艦アタマ」で、後頭部がでっぱってるもんで…。



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7 コメント

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安心した (otyukun)
2008-03-15 21:50:14
あの千さんと同じ様に体調崩されたのか気になっていましたが、まずは安心。

枕の話で想い出すのは、学生時代友人の下宿アパートで酒盛りした後雑魚寝した事です。
肩を付き合わせて寝返りもままならぬ狭さで、何より困ったのは枕。
ビール瓶だったかウイスキーの瓶を枕にした事。
痛くて酔っぱらっていたのに何回も目が覚めて困ったものでした。

明日は職人を囲む会で講演です。
聴衆の皆さんは悲劇ですね。
でも頑張ってきます。
返信する
Unknown (蝸牛)
2008-03-15 22:25:00
可愛い枕・・・こんな物まであるのですね!
また見つけちゃいましたね・・・

そろそろ・・お雛様の代わりに、五月のお飾りにしなくては・・ですね!
返信する
Unknown (陽花)
2008-03-15 23:03:26
子供の頃、実家で黒い箱型の枕を
見た記憶があります。
今もあるのかどうか知りませんが・・・
私は枕の高いのはダメでごく薄い枕の
手作りのを使っています。
枕の中身はそば殻です。
旅先ではバスタオルを折って枕にしています。
返信する
Unknown (伊藤)
2008-03-16 08:44:38
>どんな枕がお好きですか?

好きなお方の膝枕・・でぇ~す
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-03-16 20:24:47
otyukun様
ご心配いただきまして、ありがとうございます。
固い枕はそれだけで寝られる気がしません。
籐とかせとものとか、涼しいとか冷たくて
キモチいいといいますが、固いと思うだけで、
私なんかゼッタイダメだと思います。

講演会、もう無事終了されましたか?
お疲れ様でした。


蝸牛様
そうなんですよ。やーっとお雛様は片付けたんですが
次は五月人形…でも、息子のはあまりに大きすぎて
ちーっとムリなんです。
かわいい細工物と、友達にもらったお皿、
あとはこれから考えます。
こいのぼりも15歳くらいまでは
出してたんですけどねぇ、団地サイズのを。
いまやもう戸棚に畳まってお休みしてます。


陽花様
箱枕って見ただけで首の筋違えそうですよね。
私も枕は薄いのが好きで、旅先はいつもタオルです。
主人みたいに、何でも頭がのっかりゃいいって人、
信じられませーん。



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はじめまして (NPO法人 行司)
2008-03-17 16:32:53
こんにちは!

熊本からです。

記事をよませていただきました。

また伺います!

塘居
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-03-17 22:37:39
NPO法人 行司様
ようこそおいでくださいました。
着物(装束)の歴史をいろいろ探りますと、
結局は二本の歴史を追うことになります。
相撲も大切なその一部、とわかります。
なにしろ歴史がありますからねぇ。
またどうぞお越しください。
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