ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

お嫁さんの絵ハガキ

2011-02-18 18:08:13 | 昔の道具・暮らし

 

届いてあけたときにまず「ちっさー!」でした。

そういえば、私が子供のころはこんなサイズでしたね。

このハガキ、貼り絵です。布ではなく、なんといいますか今でもたまにありますが、

表面がケバのなくなったベルベットみたいな…昔ペナントなんてものが売られましたが、

そういう物にも使われた化繊素材です。

通常花嫁振袖は黒地ですが、これは紺地。絵ハガキですので、きれいな色柄を使ったということでしょう。

私はたまに骨董市などでも古い絵ハガキを買うことがあります。

主に「着ているもの」や「使っている道具」がわかるもの…それと、自分の知っている場所や

行ったことがある場所の昔の風景…。こんなだったんだぁ…なんて現在と比較しながら見たりします。

 

そういうもののなかでできればエンタイヤが楽しい…。エンタイヤというのは切手が貼ってあるものです。

つまり使用済み、この切手を収集している人もおられますが、私の楽しみは切手の収集ではなく「文面」の方。

他人様の手紙を読むなど「あくしゅみ~」といわれてしまいそうですが、

別に、秘密を嗅ぎ取ろうというのではなく、そのころの人たちの暮らしが垣間見える、

このハガキ、手紙を書いた人が確かに存在し、生きて暮らしていた…と思うと、

自分が今こうして生きて暮らしていることも、なんといいますか、

世間様の歯車の歯のひとつなんだなぁとそんな風に思うのです。

 

             

 

切手は「一銭五厘」、確か大正ではなかったかと思って調べましたら、

明治32年から昭和12年までの料金でした。

文面は、要約すると「お元気ですか、こちらも元気です。そのうち遊びにきてください。

このハガキの花嫁さんは、貴女によく似ています。このお嫁さんが私のお姉さんだったら、うれしいです」

宛名の「伊予三津浜」は、今の愛媛県松山市、差出人は「吉浦町」だけですが、

地図を見ると、瀬戸内海をはさんで広島は呉の近くに吉原、という地名があります。

このハガキ、よく見ると消印がありません。実際にはださなかったのでしょうか。これって希少価値?

                      

                  

 

メールやケータイどころか、一般家庭には電話もなかった時代です。

たった一枚のハガキが、様子を知りえたり思いを届けたりする手段だったのです。

もし昭和も12年のころだったら、戦争の気配も近づいてきていたころです。

届かなかったのか、ださなかったのか、と気になります。

ハガキはその後の戦火を越えて、どこをどう流れてきたのでしょう。書いた人は、無事であったでしょうか。

70年の旅を終えて、私のところに「届いた」ハガキ、高須賀ナミエさんのかわりに、

しっかり読みましたから。お疲れ様でしたね。

 

さて、こちらは「未使用」の絵はがき、伊豆大島の観光土産用と思われます。 

 

             

                

 

有名な「アンコ」ですね。はい、今「♪アンコォォォだよりぃはぁぁ」と歌った方…いましたねぇ、きっと。

「アンコ」は「姉こ」のなまったものといわれています。元は年上を敬う言葉であったらしいですが、

今では若い娘さんの総称らしいですね。

なんでこんな後姿のハガキを買ったのか…いえいえそもそもなんで後姿なの?

それは、この髪型に特徴があったからなんですね。このはがきには「未婚者の髪の結い方」とあります。

私、それに興味があって買いました。以前「大島には独特の髪型がある」というようなことを

読んだ記憶がありまして…よく覚えときゃいいのに、たいがい「へぇぇ」で通り過ぎるんです。

 

髪型とか着物の着方、帯の締め方などが、年齢や未婚既婚で使い分けられるのは

当たり前のように行われていますが、それがだんだん緩んできて境目がなくなる、

ということもまた珍しいことではありません。

大島でも、既婚者の髪と未婚者の髪は違っていたようなのですが、

時代とともに差がなくなったようです。名前が面白いのですが「いぼんじり髷」というのだそうです。

郷土研究者によれば「いぼんじり」は、江戸の「疣毟(いぼじり)髷」と同じであろうといっています。

「いぼじり」は「いぼいじり」、おかしいですね。「いぼじり」はカマキリの古い名称と言われています。

あのカマの振り具合が、いぼをほじるように見えたからですかねぇ。

髪型の分類で言えば「島田」の中の「投げ島田」になります。

部分アップしましたが、こうなると島田とかなんとかの原型とどめてナイ…?

 

         

 

髷を結うというよりは、束ねて縛ってとめる…と、だんだん簡素化して行ったようですが、

それを結って、あの手ぬぐいを角隠しのように前にしてぴったり押さえ込むのが「アンコ」さんですね。

投げ島田と言うのは、髷が下側について、しかも後ろに行きますから上は高島田のようにでっぱりません。

これはアンコが頭の上にものを乗せて運ぶため。

「頭上運搬」は、大島に限らず、昔の日本ではあちこちで見られます。

島国である日本は、農地にしても生活圏であっても、山道や斜面、坂道など

荷車や牛馬を使う運搬がしづらいところが多いわけです。

電気という動力も道具もなかった時代、そこでは肩に担ぐか、頭に載せるか、なんですね。

たとえば水の入ったバケツのようなものを運ぶとき、片手で一個運ぶと、バランスわるいですね。

ゆれも大きくて、急ぐと中身がこぼれます。だから上にのせるか振り分けるか…。

男性は棚田のようなところに水や肥料を運ぶのには「てんびん」を使いました。 

女性は頭にのせるのが、両手がつかえて便利だったんですね。

難しいように思いますが、外国の「水がめを運ぶ女性」などは、帽子をかぶっているだけみたいに、

すいすい動いたり振り返ったりしています。なんでも「慣れ」なんですね。

「暮らし」のためには髪型もかわる…そんなことがわかる写真だと、興味深く見ています。

それにしても黒髪つややかだわぁ。 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2011-02-18 19:25:01
若い頃に流行った歌、三日遅れ~の♪と
よく歌いましたが、アンコの意味も全く
知りませんでした。

切手まで貼って出さなかったのが気に
なりますね。
一銭五厘の切手には分数もローマ字も
書かれていたんですね。
珍しいものを見せて頂きました。
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Unknown (さえ)
2011-02-18 20:56:32
お嫁さんの絵はがき、親戚のお姉さんか、お兄さんのお見合い相手だったのかも知れないですね。いとこがお見合いをした時、相手の方の妹さんが「私のお姉さんになってください」って手紙を持って来たことがあったそうです。
出そうか出すまいか悩んで、出さなかったのかな。出す前にお嫁さんに来てくれたなら良いなと思いました。
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Unknown (とんぼ)
2011-02-19 14:17:57
陽花様

大島へは一度行ってみたいと思っています。
「アンコ」さんに会いたい!

出されないまま、荷物の奥で眠っていたんでしょうね。
読まれなかったのかなぁと気になります。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-02-19 14:19:22
さえ様

もしかしたら、そうだったのかもしれませんね。
一枚のハガキのなんでもない文章でも、
いろんなドラマがあるはずなんですよね。
なんだかしんみりしました。
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