ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

手仕事のあかし

2007-08-31 21:50:10 | 着物・古布
この前の「どっさり組み」の中の一枚です。
昔見たような縞模様ですね。
これはちょっと厚手のお召しです。けっこうしっかりしています。
色柄はちょっとはじけてませんが、クラシックという意味では、
おもしろい着物になるかもしれません。
これがねぇ…表地はなんとかいいんですが、
とにかくモノがない時代のもの、という典型です。
まずは袖、袖口は薄黄色のちりめん、かなり使い古したちりめんで、
薄くなっていて、色もおそらく元はもっと鮮やかだったと思います。
袖の「振り」のほうは、布がなかったのでしょう、紅絹がついていますが、
これがまた、裏地全部はなくて、真ん中は木綿です。
しかも紅絹はかなり状態がよくない…。


     


これ、実はしつけがついていました。もちろん新品ではなく、
何度も繰り回し、最後にかき集めた材料で仕立てたものですが、
それでもしまうのにしつけをかけたのでしょう。
ところがそのしつけというのがこちら。


       


えっミシン?と一瞬思ったのですが、実はこういう糸でした。


       


ちょっとピンきてませんですみませんが、要するに白と黒のダンダラの糸。
和裁ではこういう糸は…それになんか絹糸ではないような気もします。
なかったので、これを使ったのですね。
さらに、八掛をどうぞ。


     


お召しですから、本来暈しではなく全面色つきですが、
それがなかったので、残り切れのちりめんをはいで、
ギリギリみえるところだけつけています。袖口と同じ布ですね。
この下の部分の背縫いに近いところには、ミシンで縫ったのを
苦労して解いたあとがあります。糸穴が残り汚れも残っています。
絹の裏は、このすその額縁分と、袖口のちりめん、振りの紅絹だけ。
あとは全部裏は木綿です。それも使いまわしのようで、
表の汚れの割にはさらに汚れのひどいもの。

お金がなかったのか、時代的にモノがなかったのか…。
とにかく、着てしまえばなんということはない着物なのに、
裏を見ると、どれだけの苦労をして布をかき集めて作ったかよくわかります。
薄暗い電灯の下、丈や幅を合わせながら、一生懸命縫ったものでしょう。
戦中戦後、女性の着物はもんぺに変わったか、食料や日用品に換わりました。
その困難な時代を潜り抜けて、大事にしまわれてきたのでしょう。
表地も特別いいお召しではありませんが、まだまだ布ちからはあります。
まだ検品していませんので、表地の細かいキズや汚れはこれからチェックですが、
できればまた和装の何かに生まれ変わらせてあげたい、と思います。
もうひとがんばり、してほしい古布です。


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2007-09-01 07:55:43
今はここまでして着物を着るって事が
なくなりましたからね~。
着物を常着にしていた時代の苦労が
分かりますね。
戦前戦後を生きてきた母もどんなに小さな
布も洗い張りしてなおしていました。
よほど物の無い時代の苦労が身にしみて
いたのだと思います。
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こうなると・・・ (蜆子)
2007-09-01 10:20:21
たかが着るものとはいえませんね。
生地をいつくしむ、あるものを最大限にいかす、
ここには貧しさというよりも、あるもの、ある命を最大限にいかすという、じつに豊かな心があることに感心します。
こんな文化は、本当に心の豊かさがあればこそと思います。
ものは豊富にあるようになったけど、ものの命を最大限いかす、命をいただくという謙虚な心は今は見られない。文化度はかえって低くなったのかも、と思わざるをえません。
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Unknown (とんぼ)
2007-09-01 13:24:23
陽花様
今は豊かになりましたが、だからといって
何でも使い捨てってのは、抵抗ありますね。
親の代では、本当に苦労があったと思います。
よく育ててくれましたよね。


蜆子様
貧しさではなく「豊かな心」、
本当にそうだと思います。
愚痴をこぼすのではなく、
これでなんとかしよう、これを作ってやろうという
自分のささやかなオシャレ心とか、親心とか。
文化度、ほんとにそうですね。
先も考えず使い散らし捨て散らすのは、
野蛮だと思います。

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Unknown (花兎)
2007-09-01 14:55:36
こんにちは。
いつぞやはありがとうございました。
この着物、すてきですね。
自分も、これくらい着物を使い込みたい、大切にしたいと思います(ああ、それにはお針の腕がアレですが…)

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Unknown (とんぼ)
2007-09-01 17:53:13
花兎様
ようこそ!
ノスタルジックな色柄ですよね。
私も、ウデがないばっかりに人頼み…。

花兎様は、身近にたくさんの着物があって
そのお話も聞けて、いいですね。
戦争柄の着物のお話など興味深く
読ませていただきました。
それと「花よりも花の如く」やっと出てくれました。
「ケント」くんもいいけど「チャパツ」君、
応援しています。
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