ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物姿

2006-11-05 17:11:56 | 着物・古布

写真は、ついこの前までのとんぼ、あまりに髪が伸びすぎて…。
で、コレくらい切りました…キモチわるかったらごめんなさいですー。
針刺しの中身になりますです。





さて昨日は「着物と着ている人」両方で表情を作る・・というお話をしました。
これってもちろん洋装にも言えることなんですが、
着物の場合は特に「形」ということと「体を包む面積が広い」ということ、
この二点で、洋装とは違うコツとかポイントがある…と思うのです。

和装と洋装について考えるとき、いつも思うのですが、
現代の和装のハンデは「経験の積み重ね」がないことです。
私の少し前くらいからの年代の人は、生まれたときから「洋装」中心です。
つまり「洋装経験」は毎日積んでいる…ということですね。
それは、手と体が覚えていくということです。
若い頃、初めてハイヒールを履いたときのこと、覚えてますか?
今までなかったかかとがビョーンとあって、背伸びしっぱなし、
足元に神経集中していないと、コケッといきそうで危なっかしい…でしたよね。
慣れてしまえば、ピンヒールで階段駆け上って電車に飛び乗ったりなんてね、
動作も身について自然とできるようになります。
着物も同じなんですね。経験がないからギクシャクしてしまう。
だから、ゆかたでもウールでもいいから、間をおかずに回数こなすといいんです。
慣れてしまえば、体が「着物の下半分ってのは、スリットの少ない
ロングタイトスカートみたいなもんだ」と覚えます。
袖の下に余分な「袂」というものがひらひらしてから何かと引っかかる、
帯を締めていると、手が上に上がる範囲は狭まる…そんなことを、
体が覚えるわけです。
そうなってくると、着物にふさわしい動作がわかってきます。
昨日の「男の人の歩いたときのすその返り」もそうです。
ちまちま歩いてたら着物の裾は、いそがしくはためくだけです。

さて、では着物を着たときの動作、自然とやっていると思いますが、
それが「見て美しい」動作かどうか、鏡の前でやってみたことありますか?
別に美しくなくても…気取るわけじゃないし…、
いえいえこの場合の「美しい」と言うのは、「自然」「らしさ」という意味。
洋装のときは、洋装に慣れているので別に何を気にするわけでもなく、
自然と「らしく」動いているわけです。
たとえば、ハイヒールはいてズルタラ引きずって歩いたりはしませんし、
家ではソファに腰掛けるとき、ダレーっと座ったりしますけど、
電車のなかではきちんと座りますね。
喫茶店でお茶のときもイスの上で正座したりしません。(するバーサマもいる?)
それはちゃんと「人の目」があることを意識しているからです。
着物を着たとき、人の目に心地よいものとして映るような、
「らしい動き」、それが美しいということです。
着物をきての所作動作が、人の目に心地よい美しさをもっているかどうか、
何か設定してやってみましょう。

あなたはお友達と待ち合わせました。相手はまだきていません。
席にすわり、ケーキとコーヒーを頼みました。窓の外を見ています。
友達がきて、ガラスの向こうからちょっと手を振りました。
入ってきました。「待たせてごめーん」「私も今きたとこー」…。
相手もケーキとコーヒー、ふたつ運ばれてきました。
カップを持ち上げて口に運ぶ、ケーキを見て何か言う、一切れ切って食べる、
話しながらちょっと髪をかき上げる、…いくらでも想定できます。
そのひとつひとつの動作、やってみてください。
歩き方、席の着き方、メニューの見方、窓の外の友達への応え方、
コーヒーの飲み方、ケーキの食べ方…。
まず第一に、帯をすると姿勢がよくなります。帯のお太鼓や角だしの分、
後ろに出っ張りますから、イスにかけるのも浅くなります。
どっかりと背もたれに寄りかかったりできません。
テーブルにひじついて、足組んで・・はなくなります。
すでにこれが「着物の場合の美しい所作動作」です。
してもかまいませんが「美しく」ありません。
さぁ、どうでしたか?
気の置けない友人、気取らない喫茶店…設定は同じでも、洋装だったら、
Gパンだったら…、比べてみると違うところがたくさんあります。
このくらいのことだと、別に意識しなくても「着物」という物理的な理由から
「着物を着ているらしく」すぐにできるようになります。
昨日も書きましたが、着物はたくさんの布が、動きとともについて回ります。
袂や裾のゆれ、広がり、ドレープ、それらが体の動きとともに「きれいに」動く、
それが着物美人のコツなんですね。

では歩くのはどうでしょう。元々着物は「歩幅」が狭くなるものです。
あわせて手を振ってみると、せわしない…。ふらなきゃいいんです。
なんば歩き・・・というのをご存知かと思いますが、
右手と右足が一緒・・・という歩き方です。
実際にやると難しいのですが、別に幼稚園児が右手と右足を高々とあげて
イッチニイッチニと歩く…というアレでなくていいのです。
要するに右の足が出るとき、右の腰が一緒に出る…ということ。
これは口で説明するより、やってみるとわかります。
そんなに体の向きがかわるほど、腰をだすわけじゃないんです。
そういう「感覚」ですね。要するに体がねじれない歩き方です。
でも、ずっと手と足を反対に出すという今様の歩き方に慣れた身には
やってみるとこれがなかなか…。

私がややこしく説明するより、時々コメントをいただく「中村ダン之助」様の
こちらの説明をお読みいただくほうが確実です。
ダン之助様ぁ、お借り致します~。

http://kamomenotamako.hp.infoseek.co.jp/kty-mame-nanba.html

こんなんで昔の人は歩けたんだろうか、なんて考えてしまうんですが。、
まずは慣れ、それと昔の女性は、歩くのにそんなに手をふりませんでした。
身分の高い女性はたいがい体の前で手を組んで(この前お話した
写真のポーズです)歩きましたし、バッグというものがありませんでしたから、
モノを持つならふろしきです。つまり胸に抱えるわけです。
片手で風呂敷包みをその手の側の胸に抱え、反対側の手はそれに添える、
大きな荷物は背負う…ですね。ついでのことにお金持ちならお供に持たせる!
でも巾着はぶら下げる…いいえ、京都の舞妓さんを見るとわかりますが、
籠つきの巾着を胸に抱えています。そのほうが形がきれいです。
浴衣に巾着を持つお嬢さんが、巾着の紐を長いままバッグの持ち手のようにして
提げているのを見ますが、実際長く下に下がるものを持って普通に歩いたら、
それがぶらぶらとして歩きにくいです。
巾着の紐は、本来巾着の口をすぼめるための紐で、男の人の合切袋なども、
実は紐で口を閉めると、その紐を手首に通し長ければ手首に巻く、
或いは紐を結び、その結び目もしくは口に近いところの紐をまとめて
つかむようにして持ちました。ひったくり予防にもなったでしょうね。

ちょっと横道にそれますが、江戸時代の町の中で
当時提げるといったら、仕事柄、たとえば食物関係の岡持ち、
周り髪結いの道具箱、草紙屋など。そのほかには、大工は道具箱を担ぎ、
魚屋、八百屋、荒物屋…さまざまな商売の人は「棒手振り」、
つまり「天秤」で担いでいました。
今のように、女性が暮らしに必要なものを買いにでかけなくても、
日常生活の衣食住にかかわるほとんどのものが、この「棒手振り」の
「行商」でまかなうことができました。
時間を決めて通るので、つかまえりゃ良かったわけです。
朝から蜆売り、納豆売り、房楊枝や落とし紙、野菜、魚、なべや籠・笊、
古着にはぎれ、買うばっかりじゃありません、髪の毛からかまどの灰まで、
「売ってくれー買うよぉ」と、きたのです。
ちなみに、長屋暮らしのおかみさんたちは「お惣菜」は買って当たり前でした。
外出するのは、女中さんや下働きの子が、お使いを言いつかって出かける
あとは「参詣・墓参り」等々、そんなに出歩きはしなかったわけです。、
そういうときに荷物があれば「ふろしき」です。
今のウォーキングのように、大きく手を振って歩くことは、少なかったんですね。
成人式の日などに、ながい袂をもてあまして、つかんで振ってたり
バッグをブラブラ…なんてのを見たことがありますが「うつくしくなぁい」。
なんば歩きとまではいかなくても、着物を着たら大きく手を振らない、
というより、着物の所作動作は全て「大ぶりにならない」「急がない」ことです。

ちょっとした動作を優雅に美しく、自分で研究してみましょう。
ちなみに、着物を着慣れない人によくあることですが、しょっちゅう衿のあわせに
手をやるしぐさが見られます。真正面なのに自分では見えない襟元が
崩れていないか気になるんですね。でも、地域によっては
「男に媚びるしぐさ」として眉を顰められたりします。衿元が気になるときは、
まずショーウィンドーとか手鏡などでさりげなく確かめ、
崩れていたら人目につかないように直しましょう。

とまぁ、こんな具合にえらそーな講釈しておりますが、
とんぼはあんまり歩き方上手じゃないし、性格的におおさっぱなので、
「うつくしくない」動きばっかりしています。
陽花様はご存知ですー。かるぱん履くと「中性化」しちゃうんで
よけいにドタバタなんですねぇ。
実は今日のブログは「反省」の内容でもあったりして…。




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5 コメント

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Unknown (陽花)
2006-11-05 19:04:55
あら~、随分思い切ってバッサリ切りましたね。
それだけ切ると頭が軽くなったのではと思います。
イメージチェンジ?、また次に会ったら分からずに
すれ違うかもしれませんね。

着物を着たら上品にとは思うのですが、つい日頃の
くせが出てしまいます。やはり、立ち居振る舞い、
所作は付け焼刃では無理なようです。日頃の積み重ね
ですね。
返信する
挙措の美しさ (蜆子)
2006-11-05 22:18:36
ほんと着慣れないとということは実感しております。お茶の稽古、長い間洋服でやってました。なにしろ日常のというか仕事の時間をやりくりしてでしたので。こんな状態で茶会に突入、にじる、座ったまま回る、両手にものを持って歩く、そのまま座る、もう稽古以前、合わせ目がぐちゃぐちゃ、着慣れないとお茶にもならないことが判明、
いまはどうでも稽古だけは着物着用にしています。
着慣れる、これしかありませんね。

ところで髪の毛の針刺し、針通りはいいですし、油もあっていいですよね。いっぱいできそうですね。
それにしても今でも髪が伸びるのが早いなんて羨ましい。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-11-06 11:31:14
一番長い真ん中で15センチくらいきりました。
ほんと、髪って重さを感じますよね。
おかげ手軽くなりました。
中身は元々軽いですー。

蜆子様
着慣れる…ほんとにそれしかないですね。
でも、着崩れても何でも、
着物着ることが楽しい…それがいいんですよね。
髪はほんっとーによく伸びます。
元々が多くて太くて硬いんです。
年をとって、少しコシがなくなり細くなって、
ちょうどいいかなというところなんですが、
伸びる速さはどうにもなりませんねぇ。
なんなんでしょ…。
返信する
Unknown (麻の葉)
2006-11-07 00:26:48
いちいち納得し、またとっても参考になりました。
着物を着ているときって、姿勢も違うし、使っている筋肉も全然違うのです。それだけジーパンとT-シャツで過ごしているときは緊張感なく、弛緩しきってる、ということですね、私の場合。
それに、私は、着物着ていると、信号無視をしたり、横断歩道の手前を斜めに渡ったり、電車で居眠りなんてことも、しません。・・これは他の人は普段でもしませんね(笑)
所作の美しさもそうですが、気持ちも凛とさせてくれるのも、着物が好きな理由の一つです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-11-07 01:07:10
麻の葉様
「慣れてしまえば」カンタンなことばかり。
その「慣れ」がなかなか…。
「凛とする」と言うのわかります。
よく、帯をしめおめったらポンッとたたく…
という人多いんですが、なんかこう
「よっしゃ」って感じで気合が入ります。
凛として優雅に…目標!!
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