ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

手仕事

2011-08-28 18:30:09 | つれづれ

 

今、この「柳 宗悦」氏の「手仕事の日本」という本を読んでいます。

柳 宗悦氏は、明治22年生まれ、あの「白樺」を創刊したかたです。つまりもうすでに故人…。

上記の「手仕事の日本」という本も、初版は昭和23年、私が生まれる前です。

最初、執筆が戦中であったため検閲が厳しく、なかなか許可が出なかった上、戦災や戦後のドタバタやらで、

出版そのものが止まってしまい、間を置いてやっと別の出版社からの発刊となったもの。

読書はいつものとおりなかなか進まないのですが、今、私がアレコレ考えていることの

答えのひとつがあるような気がして…。

いずれそのことはまた書きたいと思います。

 

この本はいわば「写真集」みたいなもので、日本全国の手仕事の作品がたくさん載っています。

この「柳氏」が日本中歩いて探したのは、有名な作家のものや宝として伝わるものではありません。

その地方の人が営々と築いてきた暮らしの中で、当たり前に使われている道具の数々です。

もちろん、今、それが有名な名産品になっているものもたくさんありますが、

柳氏はそれらが有名になる前に、気づき、掘り起こし、日本の手仕事ってすばらしい…と紹介したのです。

 

タイトルにもありますように「あなたのふるさとには、こんな手仕事がある」…と日本全国の手仕事が載っています。

私の住む神奈川では「鎌倉彫」と「箱根細工」が紹介されていました。

なにしろ日本全国ですから、地方ごとに地図も入っており、知っているものもたくさんありました。

福島の「本郷焼き」という焼き物があります。

父の身内に、この焼き物を扱っている人がいました。春の震災では、被害は受けたものの、

原発からも離れており、とりあえずは無事だということでほっとしています。

ずっと前、父に、本郷焼きの「鰊鉢」、手に入らない?ときいたことがあったのですが、

残念ながら、身内はそのときすでに仕事をやめておりました。その「鰊鉢」も載っていました。

鰊鉢は、福島の人が鰊のさんしょ漬けを作るために使うもので、魚を並べて漬けやすいように、

昔の防火用水の容器のように、長方形をしていて深さのある鉢です。

今でももちろん作られていて、宗像窯が有名なのですが…高いですー。

 

そのほかにも、鹿沼に行ったとき母が「コレはいい」と買ってきた「鹿沼箒」、何しろ私20代でしたから、

さんざ使ってさすがに先がボロって、さすがの実家にももうないと思います。

そのほかにも、まげわっぱのお弁当箱、丹波焼きの小鉢、八尾和紙のブックカバー、

壺や焼きの抱き瓶、箱根細工の小箱…旅先で買ってきて今も使っているものがたくさんありました。

いわゆる「民藝」と呼ばれる手仕事のわざもの。

民芸」よりは「民藝」という難しく古めかしい字が合うような気がします。

 

それぞれの場所では、確かに「有名作家」になった人や、有名メーカーとなっているところなど、

たくさんありますが、名もなきひとの小さな作品も、連綿と続いているわけです。

この本には「着物」のことはほとんど出ていません。和ものとして「こぎん」や「道明寺の組みひも」

「琉球紅型」「葛布」「印伝」などが載っています。

いずれにしても、これらはまだ残っていますが、着物そのものの「織り・染」は、

着物が「日常」というラインから「非日常」の側に、大きく入り込んでしまってから、

のこりづらいものになり、いまやもうできなくなったものも出始めているわけです。

本当に残念なことだと思います。

 

どこの国でも、その国独特の「民芸品」はあるものです。

その中でも、日本という国は、たくさんのすばらしい「手仕事」による「民藝」というものが、

まだまだあるのだと、改めて気づかされました。

 

今夜のおかずは、できるだけ土くさいかんじの益子焼のお皿と、前に父からもらった本郷焼きの小鉢に

こんもり持ってみました。味はまぁねぇ…いつもどおりですけど。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とんぼ)
2013-09-06 18:53:47
天鼓様

鰊鉢、今でもいいのがあったら…と思いつつ、
そのままになっています。
深鉢は丸や楕円が多いですから、ひとつはあるといいなと
思っているのですけれど…。
花器としてもいいな、なんて余計なことを考えています。

本のご紹介、ありがとうございました。
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鰊鉢 (天鼓)
2013-09-03 17:17:53
何?と思ってこういうときはオークション、と思ったらやはりありました。
結構お手軽なお値段で。
15×11×(高さ)7cmって、ちょっと小さくない?
秋刀魚じゃなくて鰊だからこれくらいでいいのか?
鰊というと、日本海側で取れるイメージでしたが、福島でも取れるんですね。

これより後、民芸関係ではグラフィック社から「民芸の教科書」というシリーズが出ております。
「②染めと織り」は2012年8月発行です。
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Unknown (とんぼ)
2011-08-31 21:23:32
miminaga様

まぁそうですか。
お知らせありがとうございます。
私はなかなか出られない状況ですので、
行かれる方、ぜひいろいろご覧になっていただきたいものと思います。
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柳 宗悦 (miminaga)
2011-08-31 21:21:22
9月の15日から松屋銀座でこの方の展覧会があるようですね。
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Unknown (とんぼ)
2011-08-29 16:23:18
古布遊び様

おぉ福島でしたか。
あの鰊鉢は花器にもいいと、生け花をしている友人が言ってました。
私は浅漬けに使いたいと思っているんですが…。

親が「○○はどこそこのものがいい」とか「××の何々を使いたいものだ」とか
そんな言い方で、名産を自然と教えてくれました。
たまに物産展などやってくれると、小さなハケだの、竹細工だのと、
買うのが好きです。
なくならないでほしいですね。
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Unknown (古布遊び)
2011-08-28 19:31:22
鰊鉢ーー懐かしいです。
私の故郷は福島なので家にありました。
特に使っていたわけではなく飾ってあったように思います。
そう、確か宗像窯と聞いていました。

思い返すと一寸昔にはイロイロなものがありました。箱根の細工物も懐かしい~~
鹿沼の箒もあったなあ~~
今はずいぶんと消えてしまっていますね。。
意識していないとドンドンと無くなってしまうのでしょうねえ
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