ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

鳥さんの羽裏

2007-10-27 22:10:57 | 着物・古布
まずは…なんだって急に台風が…って言っていたら、時速100キロ?
あっというのに雨がひどくなり、風がびゅうびゅう!
今まだ表はすごい風です。被害がありませんように…。
ほんと、一日違いで息子の旅行にぶつからなくてよかったです。
そんな台風の朝に…なんと朝顔が…


    


ヘブンリーブルーのほうです。この夏、空とおんなじ色の花を咲かせて
楽しませてもらい、さすがにこのところはもう葉も枯れてました。
種がしっかり茶色になるまで、と思って根元に近い種のついているところだけ
残しておいたのですが、今朝見たら「あり?」…まぁがんばってくれるのは
うれしいけれど、台風の朝でっせ、すでにちょっと妙なふり方の雨の中、
ひょろひょろとゆれながら必死で咲いていました。ありがとね。

さて、「鳥さん」のハギレに戻りましょう。
これは羽裏です。少し汚れた感じがありますが、洗えばさっぱりしそうです。
「カラスと鷺」、たまにこの取り合わせがでてきます。
今の時代、鳥としてのイメージで言うと「カラス」は悪、鷺は「善」なんですが、
実はカラスは日本では「悪いもの」とばかりは思われていません。
神話の時代においては吉兆とされていましたし、
昔から今に至るも、熊野三山のお使いはカラスです。
熊野神社の護符「牛王宝印」は、それに起請文(今なら契約書?)を書いて
その約束を破ると、熊野ではカラスが三羽死に、本人には天罰が下るといいます。
りこうな鳥で人家近くに住み、鳥の暮らしにくい現代ではゴミアサリの名人。
そんなところから、今の時代は敬遠されていますが、
昔はそんなに「悪」の象徴というわけではありませんでした。
だからというわけではありませんが、着物のこういった柄には、
鷺とペアで使われることも多いようです。
少し前までは、そのアタリのことが私もよくつかめなかったのですが、
たくさんの柄を見るうちに「そうか『白黒』の対比は『善悪』の対比ではなく
例えば『右と左』とか『男と女』とか『固い柔らかい』などの単純な対比、
そういう意味合いでも多く使われるのだなぁと気がつきました。
さてそれではこの「カラスと鷺」はなんの対比でしょうか。
実は、コレにはまだ別の図柄が入っています。


   


「碁笥(ごけ)」です。もうおわかりですね、コレは「見立て」、
カラスと鷺を「碁石」に見立てているわけです。
ですから、鳥の向きが、カラスは右向き、鷺は左向きに揃っていて、
いかにもせめぎあっている…という感じに見えます。
またこの「碁笥」の柄ですが、梅や松といったおめでたい柄のほかに、
「武具・馬具」(早口言葉じゃありませんよっ)があります。
上の写真では上の左に「兜」がちょっと見えています。
左下は「馬具」馬のくつわのところにつく金具です。
もう一枚アップで…


   


こちらは「兜」と、右上は「刀の鍔」ですね。
つまり、囲碁の勝負を「合戦」に見立てているわけですね。
私は囲碁はよくわかりませんが、平安時代から囲碁は盛んに行われ、
宮中には囲碁指南もおり、女性もたしなんだ…つまりハイソな方々の
理知的なお遊びだったわけです。戦国の世になってからは、碁より将棋、
「王将」だの「歩」だのを使って、盤上で戦をするほうが好まれました。
囲碁というのも「陣取り合戦」ではありますが、より直接的な「将棋」のほうが、
武士の気質には合っていたのでしょうね。
ともあれ、囲碁は廃ることな、今も日々名勝負が続けられています。
一枚の羽裏の中に、囲碁、戦、歴史、そんなものが垣間見える、
「見立ての柄」のおもしろさはそこにあります。

さて、本日や~~っと「洗える着物」をちょっとだけ
HPのほうにアップしました。
続けて加工用の羽織とか、普段用着物なども出します。
まだリンクをちゃんとしていませんので、今すぐ見に行っていただくと
「こらっ飛ばないじゃないか!」なんてことになるかと思いますが、
これをアップしたらすぐにやりますのでぇぇ。ひぇぇ~~おゆるしをぉぉ~。
まぁ明日あたり、のんびりご覧ください。

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6 コメント

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Unknown (とんぼ)
2007-10-28 13:17:02
Suzuka様
はいはい、そーでした。
私「烏鷺の争い」という故事を知っていましたが、
そういえばあれがあって「囲碁の勝負」を
「烏鷺の争い」というようになった、という話し。
えーと、鷺とカラスが日本中の仲間を呼び集めて、
京都を舞台に大ゲンカ…そういうお話でしたねぇ。

すっかりすっぽ抜けていましたよ。
それとそれでふと思い出したのですが、
最近どこかのブログで「黒石は那智、つまり
「熊野」ですね、そこの産物で、
白石は貝、それが宮崎、つまり「日向」の産物、
それで実は囲碁というのは「熊野と日向の戦い」
であるとかなんとか…いやもっとおもしろい
話だったなぁ…。
囲碁そのものの歴史が古いですから、
そういう話もでてくるのでしょうね。
フォロー、ありがとうございました。
返信する
烏鷺の争い (Suzuka)
2007-10-28 11:17:50
カラス身びいきで言うわけじゃあないんですが、
ここはやっぱ、からすのほうがおさまりがいいかも、です!

烏鷺(うろ)のあらそいって、黒石と白石で勝負をあらそう、囲碁の異称だそうですから。

わたしが知ってた!といいたいけど、これは日本野鳥の会シンパのさる御仁からのコメント。です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-28 09:51:37
萬屋千兵衛様
千さま、では「鵜」でもかまいませんよ。
本当は「鵜」かもしれませんね。
私もどっちかなと思いましたが
「カラス」だと思いたいのでカラスにしました。
ちなみに布に「これはカラスです」とも
「鵜です」ともかいてありません。
のどの下が膨れている、では真ん中の図はどうですか
確かに「尾」は「鵜」の形とそっくりです。
大きさの対比で言えば「鵜」でしょうね。
でも首、長い首を折りたたんでいる鷺にくらべれば
普通のように見えませんか?

また戦というのはしばしば「川」をはさんで、とか
水に関係のある場所でも行われます。
もしかしたらそういうことも想定して、
「鵜と鷺」だったのかもしれません。
だったらなおのことステキなセンスですね。

私は「カラスであったらおもしろい」というほうで
「カラス」にしたのです。
「カラス」には神武天皇の東方遠征の際には、
八咫烏(やたがらす)が松明で行く先を導いたという
神話があります。熊野神社のお使い鳥でもあります。
「牛王宝印」(護符)には、熊野特有の
特殊なカラスの図が描かれています。
起請文のことは、約束とか礼を尽くすとか、
裏切りとか、そういうイメージがありますね。
そんなことから「霊力」とか「神聖さ」とか、
「武士道」とか「勝負事においての潔癖さ」とか
そういうことににつうじるものがある、
日本人ってそういうことにこだわりますから。
そんなことから、カラスと鷺、と見立てました。
それと着物の柄としては「鵜と鷺」「カラスと鷺」
両方あります。「対比」の意味合いかと思いますが。

私はこの図でのポイントはカラスか鵜か、
ということよりも「白と黒」ということではないか
と、そんな風に思っていますので、
あまり深く考えずに「カラス」とお話ししたのですが
もしも鵜であったなら、
とんでもない私の見立て違いですね。
こういう風に「そういうけどこうじゃない?」と
その根拠を論じるのも、また楽しさかとも思いますが
私のたいへんな勉強不足を教えていただきました。
貴重なご意見、ありがとうございました。

返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-28 09:00:53
陽花様
着物の柄ってホントに楽しいですね。
きっと書いたり染めたりしている人も
楽しんでいたんでしょうね。
そういうところって、
日本人の心の豊かさだと思います。

返信する
黒い鳥ですが、 (萬屋千兵衛)
2007-10-28 05:05:01

おはようございます♪毎度お騒がせしております千兵衛です。(笑)

この黒い鳥なんですが、胴体に比べて翼や尾羽が大きめな事、
のどの下が膨らんでいるのがいますが、これは長めの首を曲げて
いるからだと思われる事、そして何よりも、そう思うのは、
この2種の鳥が仲良く川でエサを捕る姿を良く見てる事から、
黒い鳥は、カワウ(川鵜)だろうと思います。

一方、白鷺も種類的にはダイサギ、チュウサギ、コサギといますが、
脚が黒い色をしてる事と、やはりカワウと仲良くいる事が多いので
コサギだと思われます。この2種はホントに一緒の場所にいて、
コサギは立ってジッと川面を見つめて素早く小魚を捕らえますが
カワウの方は、水中に潜っては小魚を追いかけて捕食したり、
日当たりの良い場所で、翼を広げ乾かしている様子が可愛いんです。
ちなみに、長良川で有名な「鵜飼い」の鵜の方は、ウミウです。

なんちゃって、偉そうに話ちゃいましたが、羽裏に「カラスと鷺」の
文字が書いてあるのでしたら、ゴメンナサイではあります!(笑)
でも、うちの裏の川で、この2種は本当に良く見かける光景なので、
思わず言いたくなってしまったのであります。
決して、ねえさんに楯突くつもりはありませんので、お許しを!(笑)
返信する
Unknown (陽花)
2007-10-27 22:50:16
カラスと鷺は分かりますが、これが碁石に
見立てられているとは・・・もしこの羽裏を
持っていたとしても気づかなかったと思います。
やっぱりスゴイわ、とんぼ様!
返信する

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