ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ネクタイと格闘、筋けし編?

2014-11-14 17:07:27 | 着物・古布

 

トップ写真は、解いたら「あらら」だった1本。まぁ見事に汚れていて、シミまであって…。

お気に入りだったのでしょうねぇきっと。これは裏まで汚れが通っていたので不採用にしました。

 

まず「筋消し」、ついてる筋を消す…ですが、私はいつもわかりやすいかと思って「折ったところの線」

折れ跡、折れ線…なんて書いてます。気を遣ってるつもりが、かえってわからなくなったりして…。

つまりは「生地が折り返されたりしていたところの、山にもりあがってしまっている線」です。

この「折ってあったためについてしまった線」、つまり「筋」を無くして、生地を平らに戻すことですね。

 

この「筋消し」、けっこうやっかいなものなのです。

ごく簡単に消えてしまうものもあれば、こんなにやっているのにぃ…と泣きたくなるくらい消えないものもあります。

素材や、筋のつき方、どこの筋かの場所などによっていろいろ違いがあります。

綸子やちりめんは、人間でいえばまぁ「おっとり型」で、

「あらぁ消すんですか、ま、そんならしゃーないね」なんて感じ。比較的消えてくれることが多いです。

もっとも古くて、もうプレスされっぱなしだったりすると「消えたくないんだけどねぇ」なんてこともあります。

どうにもガンコなのは「紬系」と「ポリ」。

紬は「私はここでいいのよっ、消すなんてきいてないわよっ」…ポリは「消されないことになってるんで、ムリよ」。

こんな感じでしょうか。

なので、手間暇かけて消えなかったり、その処置でかえって生地が傷んだりしそうなものは、

プロに任せた方が無難です。筋消しだけでもしてくれますから。

 

筋消しにしてもシミ抜きにしても…とにかく「生地」を何とかしようという場合、

「特性」というものを知ることが大事です。

例えば「アイロンをかける」とすると、綿は強いから高温、絹は弱いから中温…とよく書いてあります。

たしかにそうではあるのですが、じゃあ絹は中温ならせっせせっせとかけていいかというと…

実は絹の「特性」はほかに「摩擦に弱い」「紫外線を吸収する」という性質もあります。

摩擦に弱いので、こすると毛羽立ってしまいます。肉眼では見えないほどの毛羽立ちでも、

光の反射が減りますから、絹特有の「ツヤ」がなくなります。

厄介でしょう…。これを30本のネクタイと格闘しようというのですから…ムボーともいえますかね。

とりあえず…一般的に筋消しのお話も交えながらで言ってみましょう。

 

あまりきつくない筋なら、生地の裏に霧を吹いて当て布をしてアイロン…これで消えてくれます。

絹の場合は、温度に注意することと、スチームアイロンは使わないこと。

昔ながらの「霧吹き」が一番です。この霧吹きというものも、

最近の方はアイロンにスチームがついているから家にはない…という方もいるかもしれません。

使い方もコツがあって、あの「お肉に塩をふる要領」と同じで…あれは高いところからふると、

全体にまんべんなく塩がふりかかりますね。一個ずつ近くで低い位置からふると、

一か所に固まってかかってしまいます。

それと同じで霧吹きも、少し離してまんべんなく細かい霧を吹きあてる…というのは慣れです。

それで水滴のボタ落ちを防ぎます。

水のボタ落ちは、絹の着物にとっては大敵で、乾くと輪ジミになりますから。

 

これでは取れない「筋」、先にお見せしますと…糸を濡らす方法です。

これできれいに取れる場合は、ここまで消えます。

これが元の筋。へこんでいるのではなく、山になっています。

 

     

消えると

     

 

いつもこうだといいんですけどねぇ。

この方法は、糸を濡らして置く方法です。糸はしろも糸、または白の木綿糸。

これを3~4本まとめて水に浸します。最初は水をはじきますのでしっかりしみこませてください。

小さなボウルなどに水を入れて、糸が乾いたらまたすぐ濡らせるようにしておくと作業が早いです。

この方法で気を付けることは、糸から水がぼたぼた垂れるようではいけないということ。

水をしっかり含ませたら、タオルなどに挟んで水気を取ります。

さわって「あ、濡れてる」とわかるくらい。なので、タオルも置いておくこと。

その糸を布の裏側から、筋の真上にのせます。筋のきついものは表の出っ張りに糸をのせるのが

一番「効き目」がありますが、筋からはずれやすかったり、モノによっては表側にテカリが出ます。

 

     

 

当て布をして…アイロンです。アイロンは中か低温でぐりぐりと回さず「おさえるように」です。

糸が動いてしまいますから。

当て布は胴裏のハギレなど羽二重や薄いものがいいです。半紙や和紙を使う方もいます。

 

     

 

これで消えたかというと…消えたんですけどね、これが地が白くて、写真とってもよくわからなくて…。

それで上の赤い地のものでやり直したというわけです。

 

できれば生地は裏側からの方がいいけど、自己判断で…。

もうひとつは、糸を筋の上にピンとまっすぐ張ること。なので、あまり糸を長くしないで、少しずつです。

地道にシコシコ…ですね。

 

なぜ糸に水を含ませて…なのかというと、「水ジミ」…。

つまり、筋を消すためには、やはり水につけるのが一番手っ取り早い…けど、

部分的に水につけたり濡らしたりすると、水ジミが残る…それと、縮緬の場合には縮んでしまいます。

なので、ごく細く、筋のついてるほんの幅何ミリかだけ、水を与えてあげる…というわけです。

それが糸を使うメリット、というわけですね。

ただし、この方法でも、消えないガンコさんもいます。

シミ抜きや汚れ落とし、この筋消しも、私たちがやるときは、やってみなくちゃわからない、

なので自己責任…ということになります。

今手にしているこの生地が、もしダメになったとしても、まぁしかたないか、それでも普段に着ればいいか…

そんなランクのものにとどめておく方が、今の時代はいいと思います。

難しいことは「プロ」に…。着物のメンテはお金がかかる…それが今の着物事情ですから、

それをどうしていくか…が、今の課題ですね。


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4 コメント

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補正士ですね (otyukun)
2014-11-15 06:57:06
ご無沙汰しています。
糸を濡らしてアイロン、凄く良いアイディアですね。
プロはここまで手間のかかる事はしませんが、これだけ手間をかければ安全に筋消しができます。
本職は持っている道具も半端ではないので,粗くても手際よくやってくれます。
仕立て上がりが楽しみです。
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Unknown (とんぼ)
2014-11-15 14:47:38
otyukun様

こちらこそ、いつも読み逃げさせていただいてます。
母におそわったことやらなんやら
「家庭のこわざ」みたいなものですが、
昔の人はマメだったんだなぁと思います。
どうしようかと思うような難物に合うと、
プロはすごいなぁといつも思いますわ。
これでどんな帯ができますかねぇ。
返信する
Unknown (ラル)
2014-11-16 10:24:22
こんにちは
筋消しに糸を置く、と聞いたことはありました。
3~4本まとめて水に濡らし…とは知りませんでした。
洋服の直しにも使えますね。やって見ます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2014-11-16 19:43:19
ラル様

昔の人の知恵なのかどうなのか、
手間をかければなんとか…です。
洋服にも使えますね。
アイロンの温度だけ注意してください。
アイロンで押さえている状態なので、
焦がさないように…。
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