トップ写真は、解いたら「あらら」だった1本。まぁ見事に汚れていて、シミまであって…。
お気に入りだったのでしょうねぇきっと。これは裏まで汚れが通っていたので不採用にしました。
まず「筋消し」、ついてる筋を消す…ですが、私はいつもわかりやすいかと思って「折ったところの線」
折れ跡、折れ線…なんて書いてます。気を遣ってるつもりが、かえってわからなくなったりして…。
つまりは「生地が折り返されたりしていたところの、山にもりあがってしまっている線」です。
この「折ってあったためについてしまった線」、つまり「筋」を無くして、生地を平らに戻すことですね。
この「筋消し」、けっこうやっかいなものなのです。
ごく簡単に消えてしまうものもあれば、こんなにやっているのにぃ…と泣きたくなるくらい消えないものもあります。
素材や、筋のつき方、どこの筋かの場所などによっていろいろ違いがあります。
綸子やちりめんは、人間でいえばまぁ「おっとり型」で、
「あらぁ消すんですか、ま、そんならしゃーないね」なんて感じ。比較的消えてくれることが多いです。
もっとも古くて、もうプレスされっぱなしだったりすると「消えたくないんだけどねぇ」なんてこともあります。
どうにもガンコなのは「紬系」と「ポリ」。
紬は「私はここでいいのよっ、消すなんてきいてないわよっ」…ポリは「消されないことになってるんで、ムリよ」。
こんな感じでしょうか。
なので、手間暇かけて消えなかったり、その処置でかえって生地が傷んだりしそうなものは、
プロに任せた方が無難です。筋消しだけでもしてくれますから。
筋消しにしてもシミ抜きにしても…とにかく「生地」を何とかしようという場合、
「特性」というものを知ることが大事です。
例えば「アイロンをかける」とすると、綿は強いから高温、絹は弱いから中温…とよく書いてあります。
たしかにそうではあるのですが、じゃあ絹は中温ならせっせせっせとかけていいかというと…
実は絹の「特性」はほかに「摩擦に弱い」「紫外線を吸収する」という性質もあります。
摩擦に弱いので、こすると毛羽立ってしまいます。肉眼では見えないほどの毛羽立ちでも、
光の反射が減りますから、絹特有の「ツヤ」がなくなります。
厄介でしょう…。これを30本のネクタイと格闘しようというのですから…ムボーともいえますかね。
とりあえず…一般的に筋消しのお話も交えながらで言ってみましょう。
あまりきつくない筋なら、生地の裏に霧を吹いて当て布をしてアイロン…これで消えてくれます。
絹の場合は、温度に注意することと、スチームアイロンは使わないこと。
昔ながらの「霧吹き」が一番です。この霧吹きというものも、
最近の方はアイロンにスチームがついているから家にはない…という方もいるかもしれません。
使い方もコツがあって、あの「お肉に塩をふる要領」と同じで…あれは高いところからふると、
全体にまんべんなく塩がふりかかりますね。一個ずつ近くで低い位置からふると、
一か所に固まってかかってしまいます。
それと同じで霧吹きも、少し離してまんべんなく細かい霧を吹きあてる…というのは慣れです。
それで水滴のボタ落ちを防ぎます。
水のボタ落ちは、絹の着物にとっては大敵で、乾くと輪ジミになりますから。
これでは取れない「筋」、先にお見せしますと…糸を濡らす方法です。
これできれいに取れる場合は、ここまで消えます。
これが元の筋。へこんでいるのではなく、山になっています。
消えると
いつもこうだといいんですけどねぇ。
この方法は、糸を濡らして置く方法です。糸はしろも糸、または白の木綿糸。
これを3~4本まとめて水に浸します。最初は水をはじきますのでしっかりしみこませてください。
小さなボウルなどに水を入れて、糸が乾いたらまたすぐ濡らせるようにしておくと作業が早いです。
この方法で気を付けることは、糸から水がぼたぼた垂れるようではいけないということ。
水をしっかり含ませたら、タオルなどに挟んで水気を取ります。
さわって「あ、濡れてる」とわかるくらい。なので、タオルも置いておくこと。
その糸を布の裏側から、筋の真上にのせます。筋のきついものは表の出っ張りに糸をのせるのが
一番「効き目」がありますが、筋からはずれやすかったり、モノによっては表側にテカリが出ます。
当て布をして…アイロンです。アイロンは中か低温でぐりぐりと回さず「おさえるように」です。
糸が動いてしまいますから。
当て布は胴裏のハギレなど羽二重や薄いものがいいです。半紙や和紙を使う方もいます。
これで消えたかというと…消えたんですけどね、これが地が白くて、写真とってもよくわからなくて…。
それで上の赤い地のものでやり直したというわけです。
できれば生地は裏側からの方がいいけど、自己判断で…。
もうひとつは、糸を筋の上にピンとまっすぐ張ること。なので、あまり糸を長くしないで、少しずつです。
地道にシコシコ…ですね。
なぜ糸に水を含ませて…なのかというと、「水ジミ」…。
つまり、筋を消すためには、やはり水につけるのが一番手っ取り早い…けど、
部分的に水につけたり濡らしたりすると、水ジミが残る…それと、縮緬の場合には縮んでしまいます。
なので、ごく細く、筋のついてるほんの幅何ミリかだけ、水を与えてあげる…というわけです。
それが糸を使うメリット、というわけですね。
ただし、この方法でも、消えないガンコさんもいます。
シミ抜きや汚れ落とし、この筋消しも、私たちがやるときは、やってみなくちゃわからない、
なので自己責任…ということになります。
今手にしているこの生地が、もしダメになったとしても、まぁしかたないか、それでも普段に着ればいいか…
そんなランクのものにとどめておく方が、今の時代はいいと思います。
難しいことは「プロ」に…。着物のメンテはお金がかかる…それが今の着物事情ですから、
それをどうしていくか…が、今の課題ですね。
糸を濡らしてアイロン、凄く良いアイディアですね。
プロはここまで手間のかかる事はしませんが、これだけ手間をかければ安全に筋消しができます。
本職は持っている道具も半端ではないので,粗くても手際よくやってくれます。
仕立て上がりが楽しみです。
こちらこそ、いつも読み逃げさせていただいてます。
母におそわったことやらなんやら
「家庭のこわざ」みたいなものですが、
昔の人はマメだったんだなぁと思います。
どうしようかと思うような難物に合うと、
プロはすごいなぁといつも思いますわ。
これでどんな帯ができますかねぇ。
筋消しに糸を置く、と聞いたことはありました。
3~4本まとめて水に濡らし…とは知りませんでした。
洋服の直しにも使えますね。やって見ます。
昔の人の知恵なのかどうなのか、
手間をかければなんとか…です。
洋服にも使えますね。
アイロンの温度だけ注意してください。
アイロンで押さえている状態なので、
焦がさないように…。