
3年生の先生が出張になった。
助勤に入ることになったので、急遽「ちいちゃんのかげおくり」の授業をやらせていただいた。
子どもたちに聞くと、すでに全て学習は終わっているとのことだが、四の場面を用意した。
この場面で子どもたちに考えさせたいことはいっぱいある。
朝の光がさすとき、ちいちゃんはどこにいたのか?(かげおくりができる場所にいたのか)
太陽は見えるのか。
干し飯さえ食べられない体力・気力のちいちゃんが立ち上がれたのか。
かげおくりの家族の声は聞こえたのか。(ふってきたとは、どんなことか。)
ちいちゃんのかげは1つなのに、4つのかげはおかしくないか。
体が透き通るのはおかしくないか。
空の上を歩けるのはおかしくないか。
しかし、突然、それもすでに終わったそれらの学習内容を蒸し返して問うのは無理がある。
何か、子どもたちが興味をもって話し合ってくれる課題はないだろうかと考えた。
この場面は、ちいちゃんが天国に召されてしまう場面である。
天国に召される感じのする箇所が数カ所ある。
1 四段落の初め
2 空に吸い込まれる
3 小さな女の子の命が、空に消えました
このどこで亡くなったのか、ピンポイントに答えなさいと問えば、既習事項を生かして、一生懸命話し出すだろう。
しかも、選択肢ができ、議論になるだろうと考えた。
T:四の場面は、どんなお話ですか?
※私は、「ちいちゃんが亡くなった話」がでてくると思っていた。 では、どこで亡くなったの?と聞こうと思っていた。
しかし、多くの子どもたちが
「ちいちゃんが、かげおくりをして 空に吸い込まれた話。」と答えた。
どうやら、死んだのか死んでないのかあやふやになっているようだった。
私のプランが、始業すぐに狂ってしまった。
困った。
困ったときは、選択肢を作って考えさせることがよい。
T:四の場面は、ちいちゃんが死んだ場面ではないの?
S:いや、死んでないよ。
S:そうだよ。死んだら家族で話せないじゃない。
S:死んだら、歩いたり走ったりできないじゃない。
S:それに先生、死んだって言う表現はよくないよ。亡くなったと言うべきだよ。
T:分かりました。
T:では四の場面は次のうちのどれだと思いますか?
亡くなったが一番多いが、これでは決定とするわけにはいかない。
そこで、一番多い亡くなったという意見の子どもたちに、その根拠を探させた。
T:この根拠をさがしましょう。
T:どこをさがすと、その根拠が見つかると思いますか?
S:そのとき、体がすうっとすきとおり・・・・
T:この部分ですね。
T:切ってみましょう。
T:そのとき/からだが/すうっと/すきとおって/そらにすいこまれて/いくのが/わかりました。
S:すいこまれて。
S:吸い込まれるを辞書で引くと、「吸って その中に入れられる。」と載っているよ。
T:例文を作ってみて。
S:ジュースが吸い込まれた。
S:僕が、ジュースをすったということ。
S:ゴミが掃除機に吸い込まれた。
S:煙が僕にすわれた。
S:すわれて、中に入ってしまうことだね。
T:何が、何をすったの。
S:空がすったんだよ。
S:ちいちゃんをすったんだよ。
S:ちいちゃんが、空に吸われて、そらに入ったんだよ。
S:吸われたのはちいちゃんだよ。
S:でも、それだけでは、死んだのか死んでないのかは分からないよ。
そこで、図を書いて考えることにした。
T:すいこまれたとき、空には誰がいましたか?
S:ちいちゃん
S:おにいちゃん
S:お父さんとお母さん
T:では地上には誰がいましたか?
S:ちいちゃん
T:では、この図でいいですか?
S:いいで~す。
T:何か変だと思いませんか?
S:あれっ。
S:そういえばおかしいよ。
S:あのね、ちいちゃん一人でかげ送りしているのに、家族四人かげがうつるのはおかしいよ。
S:そうだね。空にうつるのは、ちいちゃんひとりのかげのはずだよ。
S:それから、上にも下にもちいちゃんがいるよ。
S:ちいしゃんが二人になっちゃった。
T:すばらしい。皆さんが見つけたおかしな点はこの2つですね。
S:うん。この2つはおかしいよ。
すると子どもたちが話し合いを始めた。
S:最初、ちいちゃんは、空にはいないんじゃないの?
S:そうだよ。だってかげおくりをしているんだから、空にいるはずがないよ。
S:空に映ったのはかげなのだから、空にちいちゃんがいるわけではないよ。
T:では、こういうことですか?
S:そうです。
S:それでね、「すい込まれて」でちいちゃんは、空に吸われたんだと思います。
S:そうです。下にいたちいちゃんが、空にすわれたんです。
T:では、こういうことですか?
S:そうです。
S:あのね、このときちいちゃんが死んだのだと思うの。
S:えっ、どうしてそう言えるの?
S:あのね、その前に「すきとおって」ってあるでしょ。
S:透き通るって色がなくなることだから、見えなくなるのだから死んだって言うことだと思うよ。
S:そう言われると、そうかもしれない。
S:透き通るってことは、なくなるって事だから、生きていたら透き通らないね。
ここで、45分が迫ってきた。
そこで、1つだけ確認して終わろうと思った。
T:もう一度、最初の質問にもどります。
T:ちいちゃんは、この段落でなくなったのですか?
全員一致で「1 なくなった」に挙手した。
とても中途半端な授業だったけれど、1つだけ解決できてほっとした。
安易に授業を考えていた。
もう少し、しっかり計画してから授業を行わないといけないな。
第35回 | 2013年10月12日 | 土 | 9:00 | 12:00 | 天竜壬生ホール | 第2会議室 |
第36回 | 2013年11月9日 | 土 | 9:00 | 12:00 | 天竜壬生ホール |
第2会議室 |
宮坂先生が介入授業ができるのは、それだけ膨大な知識を持っているからなのだろうなと、つくづく思います。