
夏休みにはいるとすぐに、天竜龍山地区の水泳大会が行われる。その「選手を励ます会」があった。6年生が全員選手になるので、5年生中心に下級生が心を込めてエールを送るのだ。
6年生のIさんは、困ってしまいます。こんなに、精一杯の声で、応援されたことなんか今までにありません。5年生たち、いつ練習したんだろう?5年生ってこんなに大きな声がでるんだっけ?それに、こんなに暑いのに、1年生も、2年生も、大きな口で必死に声を出してくれてる。
でもなあ、私、水泳、自信がないもんなあ。正選手になれなかったし、寒くてすぐに練習できなくなったし、それに、いろいろ失敗して先生達にしかられたし............こんなに、応援してもらってもなあ....困ったなあ..........顔を上げて、胸を張らなければという思いは少しあるのです。でも、顔が上げられません。
次に、各パートごとに、選手紹介を兼ね、代表が今まで努力したことと、大会への決意を表明します。一緒に立つものの、やっぱり、Iさんは困ってしまいます。みんなは、いいよなあ。水泳得意だから。...........私は、みんなみたいには泳げないからなあ..........そんなに、頑張りますなんて人前で言えるほど、多分頑張らないしなあ.............顔を上げて、胸を張らなければという思いは胸にあるのです。でも、胸をはることができません。
次は、リレーメンバーによる、模範泳法の紹介です。
Iさんは、思います。私も、あんなふうにかっこよく泳げたらなあ。いいなあ、あんなに速く泳げて。どうせ私は、何にもできない....
そんなことを考えます。でも、そんなことを考えている自分自身にも、淋しさを感じます。こんな私じゃだめだよなあ...顔を上げて、胸を張らなければという思いは胸にわいてきています。
最後に、6年生の代表が、「励ます会へのお礼」を述べます。顔を上げて、胸を張らなければという思いは胸にたくさんわいてきています。でも、どうしても顔をあげることができません。
周りの、晴れ晴れしい顔を見ながら、この思いは、当日の泳ぎで晴らすしかない、そう思うのです。
「励ます会」が終わり、順々に全校が退場していきます。5年生の応援リーダーたちは、それを最後の一人がでていくまで、こうして、堂々と胸を張って送ります。
それを見ながら、いつの日にかIさんが、自分の力で何かを乗り越えて、こうして胸を堂々と張り、上を見て歩けるようにしてあげたいものだと思います。
全て退場し終わった後、5年の担任が「君たちは、すごいね。すてきな会になったよ。ご苦労様。」とねぎらっています。
Iさんも、いつか、「君は、すごいね。すてきな会になったよ。ご苦労様。」とねぎらわれるように、してあげたいものだと思います。