弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
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京都府警で講義をしてきました。2021.2.15

2021-02-15 15:00:53 | 社会・経済

京都府警で、「弁護士から見た警察捜査について」という演題で講義をしてきました。

新任刑事及び刑事として登用を控えた若手の警察官の皆さんの前で話をさせていただきました。

内容としては、

被疑者国選弁護制度、裁判員制度によって、刑事裁判委にどのような変化が生じ、その変化が警察捜査にどのような影響を及ぼしているかという視点から、

被疑者国選、可視化、証拠開示によって警察捜査が弁護士に見えるようになってきたこと、

取調べでつい言ってしまう不用意な一言が、自白の任意性に疑問を生じさせないかねないこと、

適正手続を遵守して、客観的証拠の証拠能力、信用性、証明力を失わせないようにすべきこと、

などについて話をしてきました。

具体例をたくさん入れて話をしたからか、皆さん熱心に聞き入ってくれました。

例えば、

「皆さんは、利益誘導で自白させてはいけないということはよくわかっておられます。

でも、そんなつもりはないのに、利益誘導したと言われてしまうことがあります。

被疑者の立場にあると、一番気になるのは自分がこれからどうなるかということです。毎日、そのことを考えてます。

そんな被疑者の前に、皆さんが、取調べにやってきます。

被疑者からみれば、皆さんは、経験豊富な刑事手続の専門家、頼りになる存在で、おまけにとても親切そうです。

思わず、「執行猶予付きますか?」と聞いてみたくなります。

皆さんは、親切で、優しい刑事、しかも経験も豊富です。

そう聞かれたら、思わず、正直に「たぶん執行猶予付くんちゃうか」と教えてあげたくなります。

「だったら、正直に、全部認めます。」被疑者が自白を始めます。

もし、こんなやり取りがあったら・・・・

後に、弁護士から、利益誘導(執行猶予にしてやるから自白しろと誘導)されたと主張されてしまうかもしれません。

気を付けてください。こういう時は弁護人に聞きなさいと答えた方がいいですよ。」

といった感じです。

 

今日の講義は、昨年、新しく竣工した京都府警察本部で行いました。

開放的で、明るい、とても気持ちのいい建物です。

食堂もあるようなのですが、府民にも開放してくれないかなあ。


逮捕と勾留、ゴーン氏再逮捕 2019.4.4

2019-04-04 15:15:56 | 社会・経済

「カルロス・ゴーン被告、再逮捕」

今朝のニュース速報で流れてきました。

せっかく保釈で出たのに、いまさら再逮捕なんて…

昨日から、「再逮捕へ」という報道があって、本当に裁判官は逮捕状出すのか??と思っていたのですが出してしまいました。

 

一旦釈放されたのに、再び、拘置所に連れ戻されると、保釈が認められずに勾留が継続していた以上に、被告人の心は大きく折れてしまいます。

ゴーン氏のショックはかなり大きなものではないかと推測されます。

その隙を狙って一気に自白させる!というのが捜査機関側の考えでしょう。

 

 

 

保釈許可をする際、弁護人から様々な厳しい保釈条件を提案しました。

それを受けて、裁判所は逃亡や罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がないと判断して勾留中のゴーン氏の保釈を許可しました。

それなのに、なぜ、また今回、裁判官は逮捕状を出してしまったのでしょう?

 

刑事訴訟法199条は「罪を犯したことを疑うに足りる相当のある理由があると認めるとき」は裁判官の発する令状により「逮捕」できるとしています。

捜査機関は、有罪立証できるほどの証拠がなくても、嫌疑を伺わせる程度の資料があれば「逮捕」することができてしまいます。

「疑わしきは被告人の利益に」ではなく、「疑わしい時は逮捕」できてしまうのです。

しかし、それではあまりに簡単に身体拘束ができてしまうので、「逮捕」できる期間は最大72時間に制限されています。

さらに、身体拘束を継続するためには「勾留」という手続きをとって、再度裁判官のチェックを受けなければなりません。

 

裁判官が「勾留」を認めるための要件は、刑事訴訟法60条で定められていますが、

①「定まった住居を有しない時」

②「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」

③「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」

のいずれかの場合にのみ勾留することが認められます。

 

特捜部は、ゴーン氏が罪を犯したと疑う程度の証拠(有罪が証明できるほどの証拠である必要はありません。)は持っていたのでしょう。

それを資料として出されたら、一応、犯罪の嫌疑はあるということになるので、裁判官としても逮捕状は出さざるを得なかったのではないかと推測されます。

 

今回の再逮捕で一番争いになるのは、次の段階で「勾留」が認められるかどうかです。

ゴーン氏は、保釈が許可されたのですから、

①定まった住居(保釈の際の制限住居)は有しています。

②「罪証隠滅」③「逃亡」のおそれについても、保釈条件を定めたことで消滅しています。

 

今回新たに逮捕された特別背任罪に特有の新たな証拠というものも想定し難く、保釈後、特段証拠隠滅や逃亡を疑わせる行為を行っていないことからすれば、

今回の特別背任事件独自の「罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由」は考え難いと思います。

とすれば、普通に考えたら「勾留」が認められることはないでしょう。

これで、裁判官が勾留を認めたり、勾留決定に対する弁護人の準抗告を裁判所が棄却するようなことをしたら、本当に日本の刑事司法は終わってます。

 

しかし、そもそも、勾留が認められる可能性の乏しい今回のケースで、逮捕状を出したのが間違っているというべきです。

刑事訴訟法199条2項はたとえ嫌疑があっても「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」は、裁判官は逮捕状を出さないことを認めています。

厳しい保釈条件が付されて罪証隠滅や逃亡のおそれを想定できないのだから、「明らかに逮捕の必要がない」として裁判官が逮捕状を出すべきではありませんでした。

 

 

これからの焦点は、裁判官がきちんと「勾留」請求を却下するかどうかです。

今朝の逮捕から48時間以内に検察官は裁判官に勾留請求します。

となると、土曜日の朝が期限になりますが真夜中には請求しないでしょうから、明日夕方までには勾留請求しなければなりません。

となると、明日、担当裁判官が勾留を認めるか?

担当裁判官が勾留を認めた場合、明後日以降、弁護人の準抗告を裁判所が認めるか?

というところが大きな山になります。

そこで勾留請求が却下されたら、特捜部にはあまりにも大きな痛手でしょう。

 

それにしても、そこまでのリスクを冒しても、特捜部としては心の折れたゴーン氏を自白させられると踏んだのですかね?

弘中先生、高野先生、河津先生という本当の刑事弁護人がついているのに、心を折って自白させようなんて...特捜部の戦略ミスというほかありません。

 

 

 

 

 

 

 


「元刑務官が語る刑務所の実態~更生教育から死刑まで」 2019.3.17

2019-03-29 15:00:57 | 社会・経済

作家の寮美千子さんが中心として開催されている「奈良少年刑務所の心をつなぐ」会に参加してきました。

今回のゲストは、元刑務官の坂本敏夫さん。

2011年に京都弁護士会でも講演していただいたことがあり、今回、奈良にお越しになるということを聞き、ぜひとも再会したいとお邪魔してきました。

 

坂本さんからは、奈良少年刑務所の歴史、矯正教育として極めて先端的な実践を行い、それが成功していた。

それなのに、刑務所が廃止され、行われていた矯正教育がどこにも引き継がれなかった。

成功しすぎていたことから、出る杭が打たれちゃったんじゃないか。

奈良県は、刑務所が存在しない唯一の都道府県になってしまった。

とても残念...というお話から始まり、

日本の刑務所や死刑の実情、オウム事件の真相、えん罪が生まれる構造などなど、盛りだくさんのお話をしていただきました。

 

 

講演終了後は、寮さん手作りのお料理で懇親会!

なんと素晴らしい!どれもおいしすぎます。

多彩な参加者との交流はとても楽しい時間でした。

 

 

寮さんの最新刊「あふれ出たのはやさしさだった」は、あちこちで話題になっているようです。

寮さんが奈良刑務所で行われていた社会性涵養プログラムで起こった数々の出来事を描いたノンフィクションです。

読まなくっちゃ!

 

 

寮さん、坂本さんはぜひ京都弁護士会にお招きして講演していただきたいと思います。

 

 

 


「死刑、いま命にどう向き合うか」2019.3.2

2019-03-29 14:36:03 | 社会・経済

京都弁護士会・日弁連主催、シンポジウム「死刑、いま命にどう向き合うか~京都コングレス2020に向けて~」に参加しました。

 

★映画上映

第1部(午前)は「三度目の殺人」(是枝裕和監督)の上映です。

仮釈放中の殺人事件で裁判を受けている被告人(役所広司)と弁護人(福山雅治)の接見場面を通じて、裁判、真実とは何かを問いかけてきます。

必ずしも真実が明らかにならない裁判で、命を奪う死刑は正しいのかを考えさせられました。

 

★基調報告

第2部(午後)は、基調報告「京都コングレス2020~日弁連がめざすもの」で始まりました。

京都コングレスのテーマは「SDGsの達成に向けた犯罪防止・刑事司法及び法の支配の推進」です。

SDGsは国際的なレベルでの法の支配の促進を目標としており、ホスト国、日本には死刑廃止議定書や自由権規約委員会からの勧告を真摯に検討することが求められていると報告されました。

 

★ゲストスピーチ

シンポには、昨年12月に発足した「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」幹事長の遠山清彦衆議院議員、藤野保史衆議院議員、ローマ・カトリック教会の前田万葉枢機卿、アリスター・カーマイケル英国国会議員という多彩なゲストのスピーチがありました。

カーマイケル議員は、家族や愛する人を失い苦しんでいる被害者遺族との関係では死刑廃止は殺人犯を許すことになるとの根強い意見があることも忘れてはならない、犯罪被害者への共感を表さない死刑廃止は成功しない、そして、死刑廃止は決して簡単ではないが正しい道である、実現したとき、日本はもっと良い国になるだろうと語られていました。

 

★対談「対テロ戦争における命」

  

特別ゲストは、昨年シリアで解放されたジャーナリストの安田純平氏でした。

「死刑の基準-『永山裁判』が遺したもの」「教誨師」などのノンフィクションで知られる堀川惠子氏を聞き手に、シリアでの拘束経験を話されました。

物音を立てるなと言われ、音がしてしまうので身動きもできなかった、拷問を見せつけられ、死んだほうがましと思うこともあったなど過酷な経験が語られました。

安田氏と同じく死の恐怖に曝され長期間拘束された袴田巖さんを思い出すとの堀川氏のコメントに多くの人が共感しました。

 

★講演「国家が人を殺すとき,死刑を廃止する理由」

  

ドイツ人ジャーナリストのヘルムート・オルトナー氏の講演です。

誤判は決して稀ではなく無実の人が死刑になるおそれがある、

ヨーロッパでは最高刑が終身刑であることを多くの人が受けて入れている、

コングレスが開催される2020年には死刑廃止への国際的圧力も強まる、

人権活動家や刑法学者がイニシアティブを発揮すべきとのことでした。

ご著書「国家が人を殺すとき~死刑を廃止すべき理由」の日本版(日本評論社)では死刑執行の実情が書かれており、ぜひ勉強したいと思います。

(写真は、シンポ前日に龍谷大学で開催されたオルトナー氏の研究会の様子です。)

 

★パネルディスカッション「死刑,いま命にどう向き合うか」

 

パネルは、安田氏、堀川氏に加えて、龍谷大学浜井浩一教授も加わって行われました。

浜井教授から、日本の死刑にはリアリティがないため社会の反応が薄いとの問題提起がありました。

堀川氏からも死刑を取材してもどこからも情報が洩れてこない、メディアもタブー視しているとの指摘がありました。

死刑についてリアルに考えてもらいたいと、

戦場で見た「テロリスト」(安田氏)、永山則夫氏(堀川氏)、長期受刑者(浜井教授)の実像についてそれぞれ話がありました。

さらに、堀川氏から、取材で出会った犯罪被害者遺族の多くが孤立し、絶望的な状況にいることが話されました。

浜井教授からは、ノルウェーでは死刑もないが、他方で犯罪被害者のための官庁があり国が被害者・遺族を支援し、福祉国家として被害者・遺族の生活も守っている、だからこそテロ事件が起きても死刑を求める声が上がらないとの話がありました。

 

京都コングレスまであと1年です。

日本の刑事司法が国際水準に達しているとのかが問われます。


カルロス・ゴーン氏に見る弁護戦略 2018.12.11 

2018-12-11 09:38:47 | 社会・経済

日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏と側近の者代表取締役グレゴリー・ケリー氏が、金融商品取引法違反で起訴されさらに同法違反で再逮捕されました。

報道によれば、起訴された事実は2015年までの5年間の報酬不記載であり、再逮捕の事実は2016年~2018年までの3年間の報酬不記載ということです。

 

この状況は、ゴーン氏らにとって最悪です。

再逮捕されたことで「40日間も勾留されることになる!」と報道されていますが、日本の刑事司法はそんなに甘くありません。

今後もさらに再逮捕が繰り返される可能性があります。

再逮捕されなくても、起訴後の勾留で身体拘束が続きます。

保釈請求をしても、否認事件だからということで、検察側立証が終わるか、あるいは公判前整理手続きに付されて弁護側の証拠意見・予定主張が出るまで保釈は認められないでしょう。

そうなると、森友事件と同様に一年程度は身体拘束されたままになるという可能性が大です。

裁判で有罪になるか、無罪になるかはわかりませんが、なにせ99.9%有罪の刑事裁判です。

特捜部がぶち上げて、起訴してきた事件を無罪にするのは裁判官としてはとてつもない勇気がいるでしょう。

 

しかし、実は、ゴーン氏らにとってこの最悪の状況を避けるチャンスはありました。

それは、特捜部が8年間にわたる報酬不記載の事実を二つに分けて再逮捕するという姑息な手段を使った点です。

一部報道にあるようにこの再逮捕は不当だと考えますが、しかし、実はゴーン氏にとっては最大のチャンスでした。

なぜチャンスだったのか?

次のような弁護戦略を描くことができたからです。

一度目の勾留の被疑事実について処分保留(釈放)にさせて、再逮捕、再勾留させる。

一度目の勾留の被疑事実と二度目の勾留の被疑事実は、包括一罪あるいは少なくとも実質的に一罪であるとして、勾留に対する準抗告を認めさせる。

そうすると、特捜部は無理やり慌てて起訴して裁判官に起訴後勾留を請求するか、起訴するかどうかの判断を先送りしていったん釈放するかのどちらかしかなくなります。

後者が弁護側のベストシナリオで、いったん釈放させてしまえばそのまま不起訴になる可能性も十分にあります。

完全に不起訴にはならないにしても、ケリー氏だけは不起訴になったり、ゴーン氏についても背任罪など本丸と言われる事件への発展を阻止することができるでしょう。

前者の場合でも、その段階でケリー氏だけは処分保留で釈放したり、ゴーン氏についても、取調べをストップさせることができますし、証拠構造を固められないままの起訴という形に持ち込めます。

いずれにしても、検察が当初に描いた絵は完全に崩れてしまい、この事件はとてもしょぼい事件になってしまうでしょう。

私自身、こういうシナリオで不起訴に持ち込んだ経験が2回あります。

この弁護戦略の最大のポイントは、一度目の被疑事実について起訴させずに「処分保留」に持ち込むところにあります。

 

そして、ケリー氏だけでも不起訴で釈放されれば、ゴーン氏の裁判や生活を支援するためにケリー氏に動いてもらうことができるようになります。

ゴーン氏が仮に有罪になったとしても金融商品取引法違反だけなら、海外企業、あるいはルノーでCEOに返り咲き、日産自動車に復讐することもできるかもしれません。

 

ところが、ゴーン氏らの弁護団は、このチャンスを潰してしまった。

その原因は「黙秘」させなかったからです。

逮捕後、報道でゴーン氏の言い分がたくさん報道されているところを見ると、二人とも黙秘することなく、取調べで自分の言い分、正当性を訴えているようです。

しかし、捜査機関に対して被疑者が自分の言い分をいくら主張したところで、捜査官が「なるほど!そうだったんですね!」と了解してくれることなどありえない。

ゴーン氏が弁解すればするほど、特捜部はゴーン氏・弁護側の主張を潰すためには、どこを捜査すればいいのか知恵を付けていくばかりです。

特捜部は、初めから被疑事実を二つに分断して再逮捕し、40日間の勾留をするつもりだったようです。

つまり、20日間の勾留だけでは、ゴーン氏から十分な供述が引き出せずに起訴するところまで持っていけないかもしれないと考えていたのです。

確実に起訴できるだけの自信はなかったのでしょう。

 

ゴーン氏とケリー氏が「黙秘」を貫いていれば、特捜部にとっては捜査に逮捕時から進展がありません。

一回目の逮捕勾留で20日間取り調べた後、とりあえず処分保留(釈放)しておいて、再逮捕してさらに20日間取調べるということにせざるを得なかったでしょう。

そして、弁護人は準抗告を通して、ゴーン氏とケリー氏を釈放させてしまうのです。

「黙秘」させていれば、弁護人のベストシナリオに持ち込めた可能性は十分にあります。

 

では、なぜ、弁護団は黙秘させなかったのか?

ゴーン氏の性格によるところもあるかもしれませんが、ここで、弁護人が「大物ヤメ検弁護士」というところが引っ掛かります。

「大物ヤメ検弁護士」と言われる人と一緒に仕事をしたことがありますが、こういう弁護士は決して「黙秘」させようとはしません。

元大物検事としては「黙秘」など卑怯だ!真実を話すべきだ!と思っておられるのかもしれません。

しかし、それ以上に、元大物検事である自分が被疑者から話を聞いて、無実だ、嫌疑不十分だと判断したのだから、捜査にあたっている後輩の現役検事(昔の部下たち)も、被疑者からきちんと話を聞けば自分と同じように判断するに違いないと考えておられるのではないか思います。

残念ながら、被疑者が弁護人にすべてを正直に話しているとは限りません。ウソもあれば、勘違い、思い込み、記憶違いなどということはいくらでもあります。

弁護人は、捜査機関が収集した証拠を見ることができていません。

圧倒的に情報量が違うのですから、たとえお世話になった「大物ヤメ検弁護士」から何を言われたとしても、現役検事としては「いやいや、ご存じではない証拠があるのですよ。」と反論されるばかりです。

自分たちが現役の時代には、たとえ先輩の「大物ヤメ検弁護士」から言われても、捜査方針を変えるなどということはしなかったでしょうが、いざ立場が変わると、自分が言えば捜査方針を変えてくれると信じてしまうのはやむを得ないことなのかもしれません。

 

今回の事件で「黙秘」という弁護方針は、ずっと刑事弁護をしてきた弁護士からすれば極めてオーソドックスなものです。

おそらく多くの刑事弁護人は「黙秘」という方針をとり、それを可能とするために、連日、接見を繰り返すことでしょう。

ゴーン氏も、生粋の刑事弁護人に依頼していれば、明日くらいに釈放されていたかもしれません。