先週、京都弁護士会の死刑制度調査検討プロジェクトチームのみんなで、岡山刑務所に視察に行ってきました。
視察の目的は、無期懲役受刑者の処遇の状況を知ること。
刑務所は、場所によって、収容されている受刑者の分類が異なっています。
岡山刑務所は、刑期が長期で、犯罪傾向が進んでいない人が収容される刑務所になっています。
岡山刑務所は、収容者のうち約半数が無期懲役の受刑者です。
無期懲役の人が犯した罪名は、殺人、強盗殺人など、生命に関する犯罪の人たちばかりです。
ただ、そういう重大犯罪を犯した人であっても、みんなが犯罪傾向が進んでいるわけではなく、初犯という人もいます。
そういう人たちが、岡山刑務所に収容されています。
現在、無期懲役では、現在、仮釈放が認められることは極めてまれなケースになっています。
仮釈放が認められたケースも、30年以上服役して初めて仮釈放が認められています。
そうしたことから、日本の無期懲役は、事実上、終身刑化しているといわれています。
誰も身元引受人になってくれなかったり、服役中に家族がみんな死んでしまって身元引受人がいなくなったりして、仮釈放で出所しても生活の目途が立たないため、結局、仮釈放がほとんど認められていないのが実情です。
仮釈放ではなく、獄死してはじめて出所していく人の方が圧倒的に多くなっています。
いつまでも収容されているため、次第に高齢化が進んでおり、岡山刑務所でも60歳以上の高齢者が約3割、50歳以上になると約5割となり、最高齢の方は88歳だそうです。
一般社会と一緒で、高齢化すると当然、病気もいろいろ出てきたり、寝たきりになったり、認知症になったりします。
刑務所でも、そういう人の介護が行われているようです。
視察した時に、収容者の食事を見せてもらいましたが、半分くらいの人は通常職だけれども、半分くらいの人は減塩食、糖尿食、やわらか食(おかゆなど)になっていました。
日本の刑務所は高齢者・障がい者のための施設になっているといわれますが、まさにそのとおりの印象です。
死刑を廃止した時の最高刑として、終身刑を導入すべきか否かということが一つの論点になるのですが、
この点については、死刑を廃止すべきという意見の人の中にも、仮釈放がない絶対的終身刑は人から希望を奪う残虐な刑罰なので許されないという意見が強くあります。
仮釈放のない終身刑は本当に残虐なのか?
事実上、終身刑化している無期懲役囚の処遇実態を見れば、何か考えるヒントになるのではないかと調査に行ったのです。
刑務所の職員の方の話を聞いているところでは、事実上終身刑化しているとは分かっていても、たとえわずかでも仮釈放という希望があることで、収容者はモチベーションを維持できているのではないかということです。
グラウンドで何人もの方が運動されていたのですが、いつの日か仮釈放になって社会の戻った時に、体力がなくなって、よぼよぼになっていたのではダメだと、熱心に体を鍛えておられました。
刑務所では、懲役囚には刑務作業が課されるのですが、長期の受刑者が多い岡山刑務所では、その技術がとても熟練したものになっています。
熟練工になると作業報奨金(作業したことに対する報酬)の金額も増え、そのお金を積み立てて被害者や遺族に送金している人もいるそうです。
岡山では「備前焼」がブランドですが、何と岡山刑務所でも「備前焼」が作られていて、受刑者の中に備前焼職人がおられます。
視察の記念に、徳利を買いました。
とても素敵な徳利ですよね。
値段は1200円、普通の備前焼だと、この3倍くらいの値段がするそうです。
もう一つお土産で買ったのがこれ!
造り酒屋さんがしてそうな、しっかりした生地で出来た、おしゃれな前掛けです。
これは岡山刑務所の作品ではなく、函館少年刑務所と旭川刑務所で作られたもの。
元々は函館少年刑務所で作っていたようですが、人気商品で生産が間に合わず、増産のために旭川刑務所でも作っているそうです。
以前から目を付けていて、いつか欲しいと思っていました。
こういうのを買うと、料理をしてみたくなります。
さっそく、パン作りに挑戦してみました。(残念ながら失敗したので、もう一度チャレンジします。)
岡山刑務所では、10月17日(土)、18日(日)に、「矯正展」というのが開催されて、こうした作品の販売やイベントが行われるそうです。
全国の刑務所でも「矯正展」があります。
誰でも参加できるイベントです。
普通なら行くことのない刑務所、一度くらいは、ぜひ行ってみて下さい。
刑務作業で作られた商品の販売は、全国の刑務所でやっていますよ。